エアライン, 空港, 解説・コラム — 2018年12月28日 10:56 JST

「成田は中期的に拡大」特集・井上CEOに聞くピーチ/バニラ統合(前編)

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 新千歳空港を12月に拠点化し、2019年4月に札幌-ソウル(仁川)線を開設するピーチ・アビエーション(APJ/MM)。同じくANAホールディングス(ANAHD、9202)傘下のLCC、バニラエア(VNL/JW)との統合を進めており、同年10月27日からはピーチの運航に一本化するなど、2019年はANAグループのLCC再編の年になる。

 統合に向け、今年11月からはピーチの井上慎一CEO(最高経営責任者)がバニラの社長を兼務。訪日需要が旺盛な中、東南アジアを中心に海外のLCCが日本へ攻勢を掛けてきており、迎え撃つピーチもバニラとの統合で体制を早期に強化し、本拠地の関西だけではなく、首都圏でも存在感も高めていく必要がある。

 再編が進む中、バニラの路線では成田-函館線と那覇-石垣線、成田-香港線を順次廃止。一方、バニラ独自路線の象徴的存在でもあった成田-奄美大島線は8月31日に終了するものの、10月1日からはピーチ便として再就航する。2社の路線をゼロベースで見直し、永続的に運航できるネットワークに再編する一環だ。

 ピーチとバニラの統合が本格化する2019年に向けて、井上CEOはどのようなプランを描いているのだろうか。前編では主に路線再編や成田の位置づけ、後編ではエアバスA321LRなど機材計画を中心に聞いた。

インタビューに応じるピーチの井上慎一CEO=PHOTO: Tadayuki YOSHIKAWA/Aviation Wire

—記事の概要—
「ボーナス山分けしよう!」
奄美大島「ピーチとして就航」

「ボーナス山分けしよう!」

── 統合をどのように進めていきたいか。

就航5周年を迎え決意を新たにするバニラの社員と井上社長ら=18年12月20日 PHOTO: Yusuke KOHASE/Aviation Wire

井上CEO:ピーチとバニラで、どういうシナジーが得られるかだ。バニラの社員とは、「もうけてボーナスを山分けしよう!」と話しており、生産性を改善してもうかる仕組みに改めようとしている。

 これまでのバニラは意思決定に無駄があった。ピーチなら4人の承認で済む決済が、5つも6つもハンコが必要なものがあった。バニラの社員たちもそう思っており、「これならもうかる」というものを推進していく。

 もちろん、ピーチのやり方が全部正しいわけではない。いいとこ取りをしようということだ。

 次の体制を見据え、2019年は準備の年。いきなりガーンと行くのではない。ピーチとバニラはA320を使用しているが、コックピットの仕様が異なる。一番重要なのは安全性なので、ピーチ仕様に改修していく。3月をめどに改修を始めるが、最大4機控除する。1機につき4カ月程度かかる。パイロットの移行訓練もあるので、2020年からいくぞ、という状況だ。

── 成田はどういう位置づけになるのか。

井上CEO:中期的に増便し、事業規模を拡大したい。成田は首都圏に近く、人口も関西圏の2倍くらい、GDPも3倍で、そこに対するリーチを得たのは大きい。バニラと統合することで、企業からマーケティングのアプローチも増えてきた。全国規模のLCCになるからだろう。

 しかし、都心から成田へのアクセスは課題だ。上海のリニアではないが、今よりも短時間で結べればイノベーションだ。

 政府のインバウンドに対する期待は大きく、統合後のピーチががんばらないと困ると言われている。しかし、お客様を海外から連れてくるのはいいが、利便性が良くなければ2度目の訪日はない。成田と東京駅、羽田を短時間で結ぶ鉄道があるといい。そういう動きがあれば、羽田と成田をより効果的に使えるようになる。

── 夜間駐機が可能なピーチの拠点は関空と那覇、仙台、新千歳だ。統合後の成田はピーチとして拠点になるのか。

井上CEO:可能性はある。

── 拠点という観点で、海外空港はどのように見ているか。

井上CEO:海外も排除しない。これから増えるのはインバウンドで、アウトバウンドは限界があるからだ。

奄美大島「ピーチとして就航」

── バニラ路線のうち、成田-奄美大島はピーチ便として再出発する。

井上CEO:奄美大島は自然遺産になりそうで、ビッグチャンスだ。しかし、訪日客がまだ来ていない。二次交通の整備も必要だ。

 奄美大島は、われわれが沖縄や石垣に就航する前のにおいがする。例えば、“キャッシュレスの島、奄美”のように、訪日客が来たくなるような仕掛けが必要だ。サステイナブル(持続可能)な路線にしたい。

── 那覇は3月から新ターミナルに移転する。

井上CEO:これまでお客様には連絡バスに乗っていただいていたが、その必要がなくなる。

 しかし、スポット(駐機場)は増えないので、増便など事業拡大に限界がある。この点は沖縄県も認識しており、われわれも県に対応策の検討をお願いしている。

── 北海道に目を向けると新千歳は拠点化し、函館線は廃止。道内路線など北海道はどのように見ているか。

井上CEO:拠点化すると、地元の方が喜ぶ。夜間駐機ができるため、使い勝手のいい路線が増えるからだ。自分たちのために便を張ってくれる、ということで、二次交通の整備など自治体も一緒になって取り組むので、(ピーチが就航する以外に)波及効果が現れる。

 仙台も1月から夜間駐機ができるようになる予定だが、地元の期待が大きい。新千歳も同様だ。

 函館は「みなみ北海道」の玄関だが、廃止する。(同じくバニラ路線の)奄美大島の地元である鹿児島県に説明しているのは、(バニラを引き継ぐのではなく)ピーチとして始める準備をして、ピーチとして就航するということだ。

 道内路線は中長期的なものだ。今後北海道の路線を増やした際に、交流人口がどのくらい増えるかだ。広大な土地を、どう人々が移動するかを見極めたい。

── ピーチにとって、新路線はどのような考えで開設するものなのか。

井上CEO:インバウンドと地方創生だ。訪日客を連れてくることで、交流人口を増やす。その際、自治体と一緒に取り組む。助成金ではなく、インフラを造ることが重要で、ともに栄えようという発想だ。

つづく

関連リンク
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