エアライン, 解説・コラム — 2018年11月20日 23:22 JST

ANA客室乗務員初の65歳定年迎えた大宅さん、普段通りにラストフライト 45年で3万時間超

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 全日本空輸(ANA/NH)の客室乗務員として、初めて定年の65歳まで勤め上げた客室乗務員の大宅邦子さん(65)が11月20日、ロンドン発羽田行きNH212便(ボーイング777-300ER型機、登録番号JA786A)で最後の乗務を終えた。羽田空港のオフィスに到着した大宅さんを後輩たちが出迎え、3万時間を超える45年間の乗務終了を祝った。

定年を迎え最終乗務を終えたANA客室乗務員の大宅さん=18年11月20日 PHOTO: Tadayuki YOSHIKAWA/Aviation Wire

—記事の概要—
国際線進出準備も担当
ギャレーをきれいに。飛行機の神様が守ってくれる

国際線進出準備も担当

 大宅さんは1974年2月5日入社。同年4月から乗務を開始し、1986年3月にANAが国際線へ進出する際は、プロジェクトメンバーとして海外の航空会社で訓練を受けるなど準備を進め、教官として客室乗務員を育成しながら乗務を続けた。

定年を迎え最終乗務となったロンドン発羽田行きNH212便のデブリーフィングであいさつするANA客室乗務員の大宅さん=18年11月20日 PHOTO: Tadayuki YOSHIKAWA/Aviation Wire

第1回OMOTENASHIの達人コンテスト個人部門に挑む大宅さん(左)=13年12月2日 PHOTO: Tadayuki YOSHIKAWA/Aviation Wire

 チーフパーサーの資格を1975年2月、ファーストクラス資格をANAが国際線3クラス制をスタートさせた1986年5月に取得。アナウンスリーダーやインフライトインストラクターも務め、2013年に初めて開催された客室乗務員の接遇スキルを競う「OMOTENASHIの達人コンテスト」では、個人部門のファイナリストに選ばれた。

 子供のころから客室乗務員になりたいと思っていた大宅さんは、教員養成課程のある大学へ進学。しかし、2年生の夏休みに欧州旅行をした際、気持ちが変わった。「教員として一カ所にとどまりたくないと思って退学し、ANAの試験を受けました」と、大学を中退して客室乗務員の道へ進んだ。

 大宅さんの最終乗務となったNH212便は、ロンドンを現地時間19日午後7時2分に出発し、羽田には日本時間20日午後3時56分に110番スポット(駐機場)へ到着。ラストフライトは11時間54分だった。

 左最前方ドアを担当する一人である「L1ダッシュ」ポジションを受け持ち、大宅さんは8席が満席となったファーストクラスの責任者として、乗客の長旅をサポートした。また、羽田からロンドンへ向かうNH211便と、最終乗務のNH212便いずれも、機内アナウンスを担当した。

 フライト後の機内で同僚と話す大宅さんは、うっすらと涙を浮かべていた。

ギャレーをきれいに。飛行機の神様が守ってくれる

 ラストフライトを終え、羽田にある客室乗務員のオフィスへ戻った大宅さんは、NH212便の客室乗務員がフライトの課題などを確認する「デブリーフィング」で、「独りよがりのサービスは、お客様が望んでいるものではないかもしれません。お客様がどうして欲しいのかを、観察することから始めないといけません」と、自分がしたいサービスではなく、乗客の側に立って考えるようアドバイスした。

最終乗務を終え777を降りるANA客室乗務員の大宅さん=18年11月20日 PHOTO: Tadayuki YOSHIKAWA/Aviation Wire

最終乗務を終えたANA客室乗務員の大宅さん=18年11月20日 PHOTO: Tadayuki YOSHIKAWA/Aviation Wire

 大宅さんにラストフライトの感想を尋ねた。「普通に終えたいと思って(往路の)東京を出発しました。(一緒に乗務する)みんなには、お客様に私が最後の乗務だと言わないでと頼みました。アナウンスも必要ありません。お客様には関係のないことですからね」と、普段通りのフライトに専念。最後となった自らの機内アナウンスも、いつもと同じ内容を読み上げたという。

 「ギャレー(厨房設備)をピカピカに磨いて降りました。信心深いわけではないのですが、私たちだけが使う場所なので、きれいにしていれば機内のどこかにいるかもしれない、飛行機の神様が私たちを守ってくれるかもと思い、いつもきれいにしてから降りていました」と、機内食やドリンクを準備するギャレーを大切に扱った。

 後輩たちには、ステイ先で美術館巡りや音楽鑑賞など、自らの成長につながる経験を大事にするよう伝えてきたという大宅さん。今回のフライトでも、ロンドンの美術館を後輩たちと巡った。「経験するものや、体験するものは自分の中に残ります」と、自己研さんの大切さを説く。

 大宅さんは美術館巡りのほか、フラワーアレンジメントや、2年前に始めた書道が楽しみ。「書道は先生が厳しいので、本格的にやります」と、退職後は趣味や家族のために時間を使いたいという。

 「120歳まで生きると言ってるんです。勤め始めた時は30歳定年だったので、別の会社に移ろうかと考えていたら、定年が延びていきました」と話す大宅さん。もし定年が70歳や75歳に延長されていたらと尋ねると、「もちろん働きますよ」と即答だった。

 インタビューが終わると、大宅さんは再び多くの後輩たちに囲まれ、記念写真に収まっていた。

羽田の110番駐機場へ向かう大宅さんの最終乗務便ロンドン発NH212便=18年11月20日 PHOTO: Tadayuki YOSHIKAWA/Aviation Wire

羽田の110番駐機場へ到着した大宅さんの最終乗務便ロンドン発NH212便=18年11月20日 PHOTO: Tadayuki YOSHIKAWA/Aviation Wire

最終乗務を終えキャリーバッグを引いて搭乗橋を渡るANA客室乗務員の大宅さん=18年11月20日 PHOTO: Tadayuki YOSHIKAWA/Aviation Wire

最終乗務を終えキャリーバッグを引いて搭乗橋を渡るANA客室乗務員の大宅さん=18年11月20日 PHOTO: Tadayuki YOSHIKAWA/Aviation Wire

羽田のオフィスで最終乗務を終えた大宅さんを迎えたメッセージボード=18年11月20日 PHOTO: Tadayuki YOSHIKAWA/Aviation Wire

羽田のオフィスで後輩たちに45年間の乗務完了を祝われるANA客室乗務員の大宅さん=18年11月20日 PHOTO: Tadayuki YOSHIKAWA/Aviation Wire

羽田のオフィスで後輩たちからのメッセージなどが寄せられた冊子を贈られるANA客室乗務員の大宅さん=18年11月20日 PHOTO: Tadayuki YOSHIKAWA/Aviation Wire

定年を迎え最終乗務となったロンドン発羽田行きNH212便のデブリーフィングであいさつするANA客室乗務員の大宅さん=18年11月20日 PHOTO: Tadayuki YOSHIKAWA/Aviation Wire

定年を迎え最終乗務となったロンドン発羽田行きNH212便のデブリーフィングで涙をぬぐうANA客室乗務員の大宅さん=18年11月20日 PHOTO: Tadayuki YOSHIKAWA/Aviation Wire

定年を迎え最終乗務となったロンドン発羽田行きNH212便のデブリーフィングであいさつするANA客室乗務員の大宅さん=18年11月20日 PHOTO: Tadayuki YOSHIKAWA/Aviation Wire

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【お知らせ】
大宅さんのファーストクラス資格取得時期について、ANAより訂正連絡を受けたため、本文に反映しました。(18年11月22日 21:01 JST)

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