エアライン, 官公庁 — 2018年8月20日 09:49 JST

NCA、747-8Fに機種統一へ 国交省に改善措置提出

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 機体の整備不良や整備記録の改ざんにより、7月20日に国土交通省から事業改善命令と業務改善命令を受けた日本貨物航空(NCA/KZ)は、改善措置を8月17日に国交省へ提出した。現在ボーイング747-8F型と747-400Fの貨物機2機種を運航しているが、1機種に絞るなどの改善措置を講じる。大鹿仁史社長と佐髙圭太専務は、9月から3カ月間30%の減給処分となった。

—記事の概要—
整備記録を改ざん
機材増えるも人手不足

整備記録を改ざん

国交省に改善措置を提出したNCA=18年7月 PHOTO: Tadayuki YOSHIKAWA/Aviation Wire

 今年4月3日に、NCAの整備士が成田空港で747-8F(登録番号JA14KZ)の整備をしていた際、フラップを駆動する装置への潤滑油の補給量が点検・交換が必要な値だと確認したが、措置を講じずに改ざんした値を整備記録に記載していた。国交省航空局(JCAB)によると、NCAや委託先による不適切な整備が8件発覚したという。

 JCABは5月22日から24日と、同月29日から31日、6月4日と6日の計8日間立ち入り検査を実施。不適切な整備と整備記録の改ざんが判明した。事業改善命令を出し、安全意識の再徹底や適切な整備など、7項目を指示。取得していた連続式耐空証明を剥奪し、耐空証明(AC=Airworthiness Certificates)の期間を1年間にした。

 NCAは、社内調査委員会による調査と、第三者の立場から監査を依頼した全日本空輸(ANA/NH)による検証などを実施した。

 主な問題点と要因として、整備部門の人手不足や、これによる管理部門に対する現場からの信頼低下、経験者への意見が言えない組織風土が生まれていたこと、2016年10月にも、エンジン整備の記録不備で国交省から厳重注意を受けたにもかかわらず、問題点の具体的な事例共有や、全社員への情報共有、意見聴収が行われなかったことなどを挙げた。

機材増えるも人手不足

 NCAが、自社整備体制を確立したのは2007年7月。当時は747-400Fのみを運航していたが、2012年から747-8Fを導入したことで、整備部門の業務量が増加した。機材数も、2011年度に比べて2016年度は約1.6倍に増えたが、整備部門の人数は微増にとどまり、人手不足が起きていた。これに対し、整備部門のマネジメント層やスタッフ部門が現場を十分サポートできず、独自判断や解釈が横行するようになっていったという。

 改善措置については、保有する11機の貨物機のうち8機が747-8F、残り3機が747-400Fだが、人員規模に合わせて747-8Fに絞る。現在は2機が運航を再開しており、残り9機も耐空検査を受けた後に復帰させる。

 NCAは、3月にANAと戦略的業務提携を締結しており、4月からANA社員を5人受け入れているが、9月1日からさらに3人が加わり、人的支援を受ける。これまでは整備スタッフ部門と整備現業部門の強化を図ったが、品質保証部門と技術部門、現業部門のマネジメントを強化する。

 また、整備の間接部門の担当者を現業部門に常駐させたり、今回起きた不適切整備や記録改ざん、隠ぺい内容を全社で共有し、グループディスカッションを実施。連続式耐空証明を剥奪されたことへの対応や、整備体制を再構築するまで香港の整備会社「HAECO」や台湾の「EGAT」へ委託するなどの対応を進める。

 役員の処分は大鹿社長と佐髙専務に対する減給のほか、整備担当執行役員の松田喜代治氏が8月31日付で退任。対象社員も懲戒規程に基づいた対応をするという。

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国土交通省
日本貨物航空

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