エアライン, 解説・コラム — 2018年3月22日 21:27 JST

ANA、ピーチへバニラ統合 本社一部を東京へ、中距離LCC進出

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 ANAホールディングス(ANAHD、9202)は3月22日、傘下のLCCであるピーチ・アビエーション(APJ/MM)にバニラエア(VNL/JW)を統合すると発表した。2019年度末をめどに、ピーチへ吸収する。

 アジア諸国の中距離国際線LCCが成功するなど、競争環境が激化していることから、競争力のあるピーチを軸に一本化する。また、ピーチの本社機能のうち一部を首都圏に移し、採用競争力やマーケティングを強化する。

ピーチへのバニラ統合を発表し握手を交わすANAホールディングスの片野坂社長(中央)とピーチの井上CEO(左)、バニラの五島社長=18年3月22日 PHOTO: Tadayuki YOSHIKAWA/Aviation Wire

—記事の概要—
中距離LCC進出
競争環境変化に対応
井上CEO「大阪から離れない」

中距離LCC進出

多くの報道陣が集まったピーチへのバニラ統合会見=18年3月22日 PHOTO: Tadayuki YOSHIKAWA/Aviation Wire

 ピーチは国内初のLCCで、関西空港を拠点に2012年3月1日就航。22日現在、20機のエアバスA320型機(1クラス180席)で、国内線15路線と国際線14路線の29路線を運航している。ANAHDは当初の出資比率38.7%を67.0%に引き上げ、2017年4月13日に連結子会社化した。

 子会社化後、ピーチの株主構成はANAHDが77.9%、ファーストイースタンアビエーションホールディングス(FE)が7.0%、産業革新機構(INCJ)が15.1%(現状から変更なし)となった。

 ピーチは就航3年で黒字化し、2016年3月期決算で累積損失を解消。2017年3月期通期決算は、純利益が前期(16年3月期)比80.1%増の49億4400万円で、4期連続で黒字を達成した。売上高は7.9%増の517億900万円、営業利益が2.0%増の63億200万円、経常利益が13.2%増の53億8700万円となった。4期連続黒字により、繰延税金資産の計上可能額が大幅に増え、純利益を大きく押し上げた。

 4月26日には、那覇-高雄線を1日1往復で開設。8月1日には関西-釧路線を1日1往復で新設する。

 一方のバニラは、マレーシアのエアアジアとANAHDが出資した旧エアアジア・ジャパンが前身。ANAHDが100%出資するLCCとして、成田を拠点として2013年12月20日に就航した。現在は15機のA320で、国内線6路線と国際線7路線を運航している。

 6月15日を最後に成田-関西線を運休し、7月1日から成田-石垣線と那覇-石垣線を開設する。石垣路線は、成田線が1日1往復、那覇線が同2往復となる。

 22日現在の両社合わせて39路線のうち、重複するのは成田-関西線と関西-台北線、那覇-台北線の3路線。統合後の2020年以降、新生ピーチは50機以上の機材と、国内と国際線合わせて50路線以上の規模を目指す。

 ANAHDが中期経営計画で掲げる中距離LCC事業にも進出することで、2020年度は売上高1500億円、営業利益150億円規模を目標に掲げる。社員数は現在のピーチ1000人、バニラ700人と合わせ、約1700人となる。

競争環境変化に対応

ピーチにバニラを統合すると発表するANAホールディングスの片野坂社長=18年3月22日 PHOTO: Tadayuki YOSHIKAWA/Aviation Wire

 ANAHDの片野坂真哉社長は、「両社とも業績が堅調なことと、海外のLCCがどんどん日本市場に入ってくることから、統合はベストのタイミングと判断した」と述べた。ピーチの井上慎一CEO(最高経営責任者)は、「ピーチとして、これまでは2025年ごろに中距離LCCをやろうと考えてきたが、競争環境の変化が早く、早晩やらないとまずいと考えた」と、統合に合意した経緯を説明した。

 ANAHDは、統合後も両社の独自性を尊重するとしている。片野坂社長は「両社にはANAから転籍した社員が役員も含め働いているが、むしろANAに戻りたくないという人もいるくらいだ。ANAの経験者が両社に行くことで悪影響が出るというのは、逆ではないかと思う」との見方を示した。

 また、ピーチに統合するバニラが失敗だったかについて、片野坂社長は「成功だったと思う。主力の台湾路線が苦しくなった際、海外で2社ほど破綻したが生き延びた。主戦場で生き残った経験が大きいのと、(独自路線の)奄美大島では地元が評価している」と語った。

 新生ピーチが進出する中距離LCCで使用する機材について、井上CEOは「機材は決めていないが、将来的にワイドボディー機でできればいいなと思う。何よりも大事なのは事業性だ。事業性をいかに担保するかに軸足を置いて検討を進めたい。No profit, No businessだ」と、将来的なワイドボディー機導入に含みを持たせた。

井上CEO「大阪から離れない」

バニラと統合後の事業展開を説明するピーチの井上CEO=18年3月22日 PHOTO: Tadayuki YOSHIKAWA/Aviation Wire

 今後の首都圏展開について、井上CEOは「バニラの成田拠点は、大事な首都圏機能として引き継ぎたい。路線については、利用者の利便性や機材の稼働効率、就航地との協力関係などを総合的に勘案して決めていきたい」と述べ、ピーチの拠点である関空と第2拠点の那覇、第3拠点の仙台、2018年度に第4拠点化する新千歳に続き、成田も拠点として活用していく考えを示した。

 また、本社機能を関西から移す可能性について、井上CEOは「大阪から離れないが、首都圏でのビジネス展開によっては、本社機能の一部を東京へ移す可能性はある」と述べた。

 ピーチはこれまで、関西が拠点ということが人材を確保する際に懸念材料となることがあった。本社機能の一部を首都圏に移すことで、採用競争力を強化する狙いがある。

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