エアライン, 企業, 空港 — 2017年4月11日 14:55 JST

ヴァイサラの冬季気象観測技術、エミレーツ航空が評価開始

By
  • 共有する:
  • Print This Post

 気象観測機器などを手掛けるフィンランドのヴァイサラは、エミレーツ航空(UAE/EK)と冬季気象観測の意思決定新システム「CheckTime(チェックタイム)」の導入試験を進めている。除雪や除氷が必要な気象条件下で運航する際、一定時間しか機体を保護できない防除雪氷液を、効率よく散布するための判断材料をパイロットに提供する。

ヴァイサラの冬季気象観測システムを評価するエミレーツ航空=13年8月 PHOTO: Tadayuki YOSHIKAWA/Aviation Wire

 エミレーツは、米シカゴ・オヘア空港と、デンマークのコペンハーゲン空港で2016年の冬から導入試験を開始。CheckTimeが空港の気象条件を観測し、パイロットに航空機の主翼の除氷や除雪の意思決定に必要な情報を提供する。

 両空港は、冬季の気象条件の影響を受けやすく、エミレーツの主力機材であるエアバスA380型機とボーイング777型機をともに運航していることから、実証実験の場に選ばれた。これにより、CheckTimeがパイロットに必要な情報を提供するパフォーマンスを、複数の機材で検証していく。

 空港で機体に使用する防除雪氷液は、気象現象に対して「ホールドオーバータイム(有効時間)」と呼ばれる一定時間しか機体を保護できない。このため、有効時間を過ぎると、再び散布処理を行わなければならないことから、融氷効果が消える前に離陸しなければならない。

 CheckTimeは、パイロットが防除雪氷液の散布量や散布時間を算出していたものを、ヴァイサラが保有する高精度の気象センサーなどを使い、自動化するシステム。これまでホールドオーバータイムテーブルやグラフ、気象条件の観測など、人間が計算していた作業を置き換えられる。

 パイロットには、航空会社のACARS用コンピューターやコックピットのモバイル機器を通じ、毎分ごとにアップデートされた情報を提供することで、重要な意思決定をサポートする。

 ヴァイサラでは、こうした自動化による業務改善により、パイロットは安全性や運航といったより重要な項目に集中出来るようになり、効率性向上や環境への影響抑制につなげられるとしている。

 試験の初期段階では、エミレーツは従来の人手による寒冷気象運用手順と、CheckTimeによる運用を並行して実施。結果の比較分析や検証を行った。

 ヴァイサラは40年以上にわたり、世界の主要空港に航空気象観測装置を提供。日本国内でも雲低高度や気圧、湿度、視程などの計測センサーや、滑走路面監視と路面状態予測のシステムなどの納入実績がある。

関連リンク
ヴァイサラ

積雪量日本一の青森空港支える「ホワイトインパルス」(16年2月1日)
ANAの新千歳オーバーラン、重大インシデント認定 運輸安全委、調査官派遣(17年1月19日)
16年度上期、航空事故1件と重大インシデント3件 国交省(17年1月25日)
アシアナ機の広島事故、経路より低い進入原因 韓国当局に勧告(16年11月24日)

  • 共有する:
  • Facebook
  • Twitter
  • Print This Post