エアライン, 空港, 解説・コラム — 2016年2月1日 07:00 JST

積雪量日本一の青森空港支える「ホワイトインパルス」

By
  • 共有する:
  • Print This Post

 1月に入り、大雪に見舞われる地域が相次いだ。都内では18日、鉄道などの交通機関が大幅に乱れ、長崎県では24日に積雪記録を更新。奄美大島では115年ぶりの雪を観測している。空の便も欠航などの影響が生じた。

 日本の空港の中で、もっとも積雪量が多いのは青森空港。2013年4月から2014年3月までの累計降雪量は、3年連続で10メートルを超えたほど。滑走路は3000メートルのものが1本で、ILS(計器着陸装置)はカテゴリーIIIB(CAT IIIB)での運用となっている。青森以外でCAT IIIB運用の空港は、新千歳と成田、中部(セントレア)、広島、熊本、釧路の7空港で、着陸時にパイロットが滑走路中心線灯などを視認できる最大距離「RVR(滑走路視距離)」が100メートル以上であれば着陸できる。

 しかし、ILSの性能が高くても、肝心の滑走路や誘導路、駐機場が雪に埋もれていては、飛行機を運航できない。青森県の青森空港管理事務所では降雪に備え、除雪隊「ホワイトインパルス」を配備。40分で除雪を終えるスピードで、欠航や遅延を最小限に抑えるべく活躍している。

マーシャラーの誘導で青森空港に到着するJALの737-800=16年1月21日 PHOTO: Tadayuki YOSHIKAWA/Aviation Wire

 青森空港で便数がもっとも多い日本航空(JAL/JL、9201)グループは、羽田線と伊丹線、札幌線の3路線。羽田線が1日6往復、伊丹線と札幌線が1日3往復ずつで、機材は羽田線がボーイング737-800型機(165席)、伊丹線はエンブラエル170型機(76席)とボンバルディアCRJ200型機(50席)、札幌線はCRJ200が投入されている。

 ホワイトインパルスが短時間で除雪しても、到着便が駐機場へ入る際の誘導線や、機体そのものは航空会社が除雪しなければならない。

 悪天候でも欠航が少ないと言われる青森空港で、どのような除雪作業が行われているのだろうか。

—記事の概要—
青森は重い雪
除雪から離陸まで短く
APU付きディアイシングカー
記録的に遅かった初雪
除雪作業の様子(写真37枚)

青森は重い雪

 滑走路を除雪する際は、滑走路を閉鎖するため離着陸は出来なくなる。この間に、ホワイトインパルスが35台の除雪車ですばやく除雪していく。11月には結団式が行われ、約120人の隊員は建設関連の会社や近隣の農家などから集まる。空港には毎朝80人が出勤し、天候を見て夕方から徐々に待機人数を減らしていく。

青森空港を除雪するホワイトインパルスの除雪車=16年1月21日 PHOTO: Tadayuki YOSHIKAWA/Aviation Wire

青森空港に並ぶホワイトインパルスの除雪車=16年1月21日 PHOTO: Tadayuki YOSHIKAWA/Aviation Wire

 滑走路が閉鎖されると、除雪車が雪をかき分けながら縦横無尽に走り回り、路面が顔を出していく。隊長を務める鹿内組の福士真人さんによると、新人が入ってきた際は、「ぶっつけ本番」で除雪を教えていくという。作業中は無線で連絡を取り合い、ある時は1台で、ある時は2台、3台と連携し、決められたフォーメーションを組み合わせて除雪を進めていく。

 「青森の雪は湿った重い雪。小さい車両を並べて雪を流していきます」と、青森空港管理事務所の早坂雅美さんは説明する。1日の出動回数は多い時で9回だが、雪が少ない今シーズンは、8回だという。「最多は1日13回でしたが、ちょっと休憩するとすぐ出動。2005年はこんな感じでした。こういう時は除雪しててもすぐ積もります」と、福士さんは話す。

青森空港管理事務所の早坂さん(左)とホワイトインパルス隊長を務める鹿内組の福士さん=16年1月21日 PHOTO: Tadayuki YOSHIKAWA/Aviation Wire

 ここ数年では、「2012年と2013年もすごくて、1日10回以上でした」と振り返る早坂さんは、「10年に1回くらいは降雪量が少ない年があって、今年はすごく少ないですね。10年を平均すると年間の累計降雪量は7メートルで、10メートルを超えると豪雪になります」と説明する。

 除雪が終わり、滑走路閉鎖が解除されても、飛行機が降り立つまでには10分以上かかる。吹雪いている日などは、この間にも雪が積もってしまう。滑走路に着陸した飛行機が駐機場に入る際、通常は路面の誘導線を頼りに進んでいくが、冬の青森空港では、除雪後もあっという間に雪が積もっていく。

 そこで、JALは貨物用カートをけん引するトーイング・トラクター(TT車)の前部に排雪板を付け、駐機場付近の除雪を実施している。窓ガラスのないオープンタイプのTT車を使用しているのは、ガラスに雪が付着することで視界が悪くなるのを防ぐためだ。

 しかし、到着便が駐機場へ進入する段階でも、吹雪で視界が悪いままの時もある。こうした時は駐機場先端でも到着機を誘導し、マーシャラーも飛行機に近づいて、後ろに歩きながら導いていく。

 こうして駐機場に到着した機体は、乗客や荷物を降ろすと同時に、機体の雪を下ろしたり、ディアイシング(除雪・除氷作業)やアンチアイシング(防雪・防氷作業)が始まる。

除雪から離陸まで短く

 羽田-青森線の場合、到着後35分から50分ほどで羽田へ戻っていく。雪が降り続けば、当然機体に雪が積もり、着氷していく。このため、出発前にディアイシングカーを使ったディアイシングとアンチアイシングが必要になってくる。

機体を除雪・除氷するJALのデアイシングカー=16年1月21日 PHOTO: Tadayuki YOSHIKAWA/Aviation Wire

青森空港に勤務するJALの中村整備士=16年1月21日 PHOTO: Tadayuki YOSHIKAWA/Aviation Wire

 主翼に雪が付着すると、主翼の断面形状が変わり、揚力が発生しなくなることがある。これを防ぐために必要になるのが、除雪と除氷を実施するディアイシング、雪や氷が付着しないようにするのがアンチアイシングだ。これらを実施しても、離陸前に主翼の上面を確認した機長の判断で、駐機場へ引き返して再び除雪作業を行うこともあるという。

 また、通常は出発前に実施する除雪作業を、降雪状況によっては


これより先は会員の方のみご覧いただけます。

無料会員は、有料記事を月あたり3記事まで無料でご覧いただけます。
有料会員は、すべての有料記事をご覧いただけます。

会員の方はログインしてご覧ください。
ご登録のない方は、無料会員登録すると続きをお読みいただけます。

無料会員として登録後、有料会員登録も希望する方は、会員用ページよりログイン後、有料会員登録をお願い致します。

会員としてログイン
 ログイン状態を保存する  

* 会員には、無料個人会員および有料個人会員、有料法人会員の3種類ございます。
 これらの会員になるには、最初に無料会員としての登録が必要です。
 購読料はこちらをご覧ください。

* 有料会員と無料会員、非会員の違いは下記の通りです。
・有料会員:会員限定記事を含む全記事を閲覧可能
・無料会員:会員限定記事は月3本まで閲覧可能
・非会員:会員限定記事以外を閲覧可能

* 法人会員登録は、こちらからお問い合わせください。
* 法人の会員登録は有料のみです。

無料会員登録
* 利用規約 に同意する。
*必須項目新聞社や通信社のニュースサイトに掲載された航空業界に関する記事をピックアップした無料メールニュース。土日祝日を除き毎日配信しています。サンプルはこちら
登録内容が反映されるまでにお時間をいただくことがございます。あらかじめご了承ください。
  • 共有する:
  • Facebook
  • Twitter
  • Print This Post