エアライン, 解説・コラム — 2026年6月26日 15:09 JST

ANA、SFC改定とラウンジ混雑「2030年度さらに悪化」国内線システム混乱は7月解消視野=株主総会

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 ANAホールディングス(ANAHD、9202)は6月26日、第81回定時株主総会を都内のグランドプリンスホテル新高輪で開催し、剰余金の処分や取締役選任など会社側が提案した5議案をすべて可決して閉会した。傘下の全日本空輸(ANA/NH)の平澤寿一社長は、5月19日に始めた国内線新システムと新運賃を巡る混乱について、「顧客に寄り添っていないのではないかという思いを抱かせてしまった」と陳謝し、移行時の配慮や事前案内が不足していたことを「重大な課題」と認めた。

東京・高輪で開かれているANAホールディングスの株主総会=26年6月26日 PHOTO: Tadayuki YOSHIKAWA/Aviation Wire

 事前質問が多数寄せられた上級会員向けカード「ANAスーパーフライヤーズカード(SFC)」については、ANAが総会前日の25日に、4月に発表した制度改定の見直しを検討し、9月末までに案内すると発表。平澤社長は総会で、ラウンジ混雑など制度改定に至った背景を説明した。

 国内線システムの問題については、原因を特定しているオンラインチェックイン関連の不具合は、7月末までに解消を目指す。

 また、SFC改定を巡り、芝田浩二ANAHD社長が「一定程度の離反というのは織り込んでの話」と発言したことを複数の株主が批判。芝田社長は「適切な言葉遣いに努める」として陳謝した。

—記事の概要—
SFC改定「ラウンジ混雑悪化」
「離反」発言を陳謝
国内線システム不具合の進捗
シンプル運賃で搭乗断り「絶対ない」

SFC改定「ラウンジ混雑悪化」

 平澤社長は、事前に株主から質問が集中したSFCの制度改定と、国内線新システム・新運賃への対応について説明した。

スーパーフライヤーズカード会員を年間決済額で2つに分けるANA(同社サイトから)

株主総会で事前質問に回答するANAの平澤寿一社長を映し出すモニター=26年6月26日 PHOTO: Tadayuki YOSHIKAWA/Aviation Wire

 4月23日の発表では、2028年4月からANAカードとANA Payの年間決済額に応じて会員区分を設け、300万円以上を「SFC PLUS」、300万円未満を「SFC LITE」に分ける。LITEでは空港の「ANAラウンジ」を利用できず、航空連合「スターアライアンス」の会員資格も従来の最上位「ゴールド」から「シルバー」へ格下げするとしていた。

 SFCは年々会員が増加し、羽田、新千歳、福岡、那覇などの主要空港では、ピーク時間帯にラウンジで座れない、利用できないケースが生じているという。ANAは2030年度に向け、混雑がさらに悪化すると想定している。

 平澤社長は、ラウンジスペースの拡張を重ねてきたものの、空港施設の制約からこれ以上の拡張は非常に難しく、将来にわたってサービスを安定的に維持するため、新たなルールを設けざるを得ないと説明した。

 平澤社長は「1日も早く皆様との信頼関係を取り戻せるよう、誠心誠意取り組む」と述べた。年間決済額300万円の基準を変更するかなど、見直し後の具体的な条件は明らかにしなかった。

 会場では株主から、年間決済額300万円を基準とする制度改定の前提が、今回の見直しで変わるのかとの質問が出た。

 芝田社長は、SFCを通じて利用者全体の利便性を高めることが第一の目的だったと説明。利用者の気持ちに十分応えられなかったことが見直しの理由だとして、寄せられた意見を反映すると回答した。

「離反」発言を陳謝

 複数の株主が、芝田社長がSFC改定を巡って「離反」という言葉を使ったことについて、顧客に対する表現として不適切だと批判した。

株主総会で発言するANAホールディングスの芝田浩二社長を映し出すモニター=26年6月26日 PHOTO: Tadayuki YOSHIKAWA/Aviation Wire

 芝田社長は4月30日に開いた2026年3月期通期決算会見で、当紙の質問に対し、SFC改定について「我々の事業を利する・利さないという観点よりも、お客様全体の利便にどうつながるかを社内で議論した」と説明。制度変更による顧客への影響については「一定程度の離反というのは織り込んでの話」と述べていた。

 芝田社長は株主総会で「今後、適切な言葉遣いに努める。申し訳ございませんでした」と陳謝した。

国内線システム不具合の進捗

 ANAは5月19日に、新システムと新運賃による国内線の運用を始めた。その後、ウェブサイトやアプリの処理速度や使い勝手、オンラインチェックインなどを巡り、利用者から不満が相次いだ。電話窓口がこれまで以上に混雑し、メール返信も最長2カ月かかる状況となり、空港での待ち時間も増加した。

 平澤社長は自ら陣頭指揮を執り、社内にタスクフォースを設置したと説明。電話窓口の混雑やメール返信の遅延に対し、グループ社員延べ2000人以上の支援体制を構築したという。

 システム面では、利用者への影響が大きい予約機能やオンラインチェックイン機能から性能改善を進めている。領収書は利用者自身が宛名を変更できるよう改修済みで、空港のグランドスタッフ(地上旅客係員)が利用者の状況に応じ、柔軟に対応できる体制も整える。

 ANAによると、メールの返信に最大約2カ月かかっている事態については、AI(人工知能)によるメール内容の分析や対応支援などにより、滞留件数は半減。電話件数はピーク時から週当たり約10%ずつ減少し、応答率も改善しているという。

 システム部門を担当するANAHDの加藤恭子上席執行役員は、株主から改善時期を問われ、6月末に一度大きな改修を実施し、7月の夏休み前に再び大きな改修を予定していると説明した。一部の複雑なケースは、対応に時間を要する可能性があるとした。ANAによると、原因を特定しているオンラインチェックイン関連の不具合については、おおむね7月末までに解消する見通し。

シンプル運賃で搭乗断り「絶対ない」

 新運賃のうち、最も安価な「シンプル」の利用者が、満席時に運賃の種類を理由として搭乗を断られるのではないかとの懸念について、平澤社長は「絶対にございません」と否定。システムエラーでチェックインできなかった場合も、空港カウンターで適切に対応するとした。

ANAの国内線新運賃(同社サイトから)

 シンプルは、事前座席指定や預け手荷物などの付帯サービスを最小限にした運賃。座席指定と手荷物などの基本サービスを含む「スタンダード」、すべてのサービスを含む「フレックス」と合わせた3種類を設定している。

 会場では株主から、シンプルでは購入時に座席を指定できず、預け手荷物にも制限がある一方、LCC(低コスト航空会社)のように追加料金を支払い、利用できる仕組みがないとの指摘が出た。

 営業部門を統括するANAの石井智二専務は、利用者から有料でも事前座席指定を追加したいとの要望が寄せられているとして、追加料金で購入時に座席を指定できるサービスの導入に向け、システム対応を始めたと説明。「なるべく早期に開始したい」と述べた。一方、開始時期や料金などは明言を避けた。

 また、平澤社長は寄せられた厳しい意見を「もっと良いANAに、という叱咤激励」と受け止めていると説明。「1日も早く本来の利便性と信頼を取り戻し、やはりANAを選んで良かったと思っていただけるよう全力を尽くす」と述べた。

  ◇ ◇ ◇

 総会には899人の株主が出席。所要時間は1時間33分で、午前11時33分に終了した。会場で発言した株主は13人で、動議は1件だった。

 会社側が提案した剰余金の処分、定款の一部変更、取締役11人の選任、監査役1人の選任、取締役に対する業績連動型株式報酬制度改定の5議案は、すべて原案通り可決された。

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