国土交通省航空局(JCAB)が発表した、2025年度上半期(4月1日から9月30日)の航空事故や重大インシデントの発生状況をまとめた「航空輸送の安全にかかわる情報の中間報告」によると、航空事故は2件、航空事故につながりかねない「重大インシデント」は1件、安全上のトラブルは459件だった。
—記事の概要—
・航空事故
・重大インシデント
・安全上のトラブル
・事業者別報告件数
・機種別報告件数
航空事故

壱岐空港近海に不時着水したエス・ジー・シー佐賀航空のヘリ(運輸安全委員会の経過報告書から)
2件発生した航空事故は、2025年4月に壱岐空港の北北東約31キロ付近の海上で、7月に米チャールストン国際空港の誘導路上で、それぞれ1件ずつ起きた。
壱岐空港付近の事故は4月6日に発生。エス・ジー・シー佐賀航空のヘリコプター(ユーロコプターEC135T2+、登録記号JA555H)が午後1時47分ごろ、壱岐空港の北北東約31キロ付近の海上で不時着水し、機体が横転し大破した。同機は対馬空港から福岡和白病院の場外離着陸場へ患者輸送中で、機長と整備士、医師、看護師、患者、付添人の乗客乗員計6人が搭乗。このうち3人が死亡し、2人が重傷、1人が軽傷を負った。
チャールストン国際空港の事故は現地時間7月18日に発生。全日本空輸(ANA/NH)のボーイング787-10型機の新造機(JA986A)がタキシング(地上走行)中、駐機していた米LCCのブリーズ・エアウェイズ(MXY/MX)のラスベガス発ノーフォーク行きMX509便(エアバスA220-300型機、N247BZ)と接触した。ANA機は新造機を羽田空港へ空輸するフェリーフライト(回航便)のNH9397便で、乗客は乗っていなかった。けが人はおらず、ANA機は左主翼(ウイングチップ)が、ブリーズ機は尾翼(ラダーの一部)が損壊した。
重大インシデント
1件発生した重大インシデントは、8月20日に稚内空港の滑走路上で起きた。
ANAホールディングス(ANAHD、9202)傘下のANAウイングス(AKX/EH)が運航するANAの札幌(新千歳)発稚内行きNH4841便(デ・ハビランド・カナダDash 8-400〈旧ボンバルディアQ400〉型機、JA854A)が同日午前11時18分ごろ、鳥防除作業車両が使用中の滑走路へ着陸した。車両は当該機を視認し、滑走路から退避している間に当該機が着陸した。同便には乗客70人と乗員4人(パイロット2人、客室乗務員2人)が乗っていたが、けが人はなかった。
安全上のトラブル
459件報告があった「安全上のトラブル」は、「機器からの指示による急な操作等」が86件で最多。「航行中の構造損傷」が4件、「航行中のシステム不具合」が66件、「航行中の非常用機器等の不具合」が14件、「運用限界の超過、経路・高度の逸脱」が31件、「運航規程関連」が48件、「整備規程関連」が69件、「その他」が141件だった。
安全上のトラブルを内容別で分類すると、「機材不具合」は101件、「ヒューマンファクター事案」は200件、「回避操作」は76件、「発動機の異物吸引による損傷」は8件、「部品脱落」は5件、「危険物の誤輸送等」は53件、「アルコール事案」は11件、「その他」は5件だった。
200件あったヒューマンファクター事案の内訳は、運航乗務員が51件、客室乗務員が3件、整備従事者が87件、地上作業員が45件、製造が9件、その他は5件だった。
76件あった回避操作の内訳は、TCAS(航空機衝突防止装置)によるRA(回避指示)は68件、GPWSによる回避操作は8件だった。
11件あったアルコール事案の内訳は、運航乗務員が4件、客室乗務員が5件、運航管理者等がゼロ、整備従事者が2件だった。
事業者別報告件数
事業者別の報告件数は運航便数の多さに比例し、大手2社の件数が目立つ。日本航空(JAL/JL、9201)グループが170件、ANAグループが129件だった。
このほか、日本貨物航空(NCA/KZ)が20件、スカイマーク(SKY/BC、9204)が10件、エア・ドゥ(ADO/HD)が6件、ソラシドエア(SNJ/6J)が6件、スターフライヤー(SFJ/7G、9206)が16件、ピーチ・アビエーション(APJ/MM)が24件、ジェットスター・ジャパン(JJP/GK)が18件、アイベックスエアラインズ(IBEX、IBX/FW)が21件、フジドリームエアラインズ(FDA/JH)が18件、オリエンタルエアブリッジ(ORC/OC)が4件、天草エアライン(AHX/MZ)が4件、トキエア(TOK/BV)と新中央航空(CUK)。東邦航空(THK)はゼロ、「その他航空運送事業者」が16件、「航空機使用事業者」が25件だった。
機種別報告件数
機種別では、737-700/-800が89件、747が18件、767が31件、777が31件、787が75件、A320が72件、A350が16件、A380が4件、DHC-8-200/-300がゼロ、DHC-8-400が21件、E170/E175/E190が32件、CRJ700が20件、ATR42/72が16件、Do228がゼロ、「その他航空運送事業機」が37件、「航空機使用事業機」が25件だった。
JCABは1月22日に、第38回航空安全情報分析委員会(委員長・河内啓二東京大学名誉教授)を開き、この中間報告について審議。6月ごろに開かれる次回の委員会では、2025年度通期に報告された安全情報について評価・分析などを行う。
関連リンク
国土交通省
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・国交省、壱岐空港沖ヘリ墜落事故で点検指示 国内のEC135全85機(25年5月6日)
・24年度、航空事故6件 重大インシデント3件=国交省(25年12月24日)
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