エアライン, ボーイング, 機体, 解説・コラム — 2013年2月23日 10:49 JST

日航の787燃料漏れ、バルブに異物の可能性 ボストンと成田のトラブルで 航空局報告後編

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 国土交通省航空局(JCAB)は2月22日、日本航空(JAL、9201)のボーイング787型機(登録番号JA824J)で1月に米ボストンと成田で発生した計2件の燃料漏れについて、推定原因と再発防止策を発表した。左主翼内にある燃料タンクのバルブに異物がはさまっていたり、本来塗るべきではない絶縁コーティングが付着していたことが原因とみられ、再発防止策を航空会社に通達した。

787の燃料タンク概要(JCABの資料から)

ボストンで起きたトラブル時の燃料量変化(JCABの資料から)

 ボストンでのトラブルは、ローガン国際空港で現地時間1月8日午後0時半(日本時間9日午前2時半)すぎに発生。離陸に向けて誘導路を走行していた当該機で、機体中央タンクの燃料が左主翼側メインタンクに流れ込み、メインタンクからあふれた燃料が流れ込むサージタンク(余積タンク)も満杯になり、オーバーフローした燃料を外へ排出するノズル「ベントスクープ」から機外へ燃料が漏れた。乗客乗員192人にけがはなかった。

 飛行データや燃料ポンプの性能、配管仕様などに基づいて調べた結果、バルブに異物がはさまったことで、左翼タンク内の逆流防止バルブが一時的に開いていた可能性が高いという。この結果、中央タンクから左翼タンクへの意図しない燃料の流入が発生し、燃料漏れにつながったとみられる。また、ボーイングが初期に製造した787で燃料タンク内に破片やテープなどの異物が発見されたことがあり、当該機も異物が完全には除去されていなかった可能性もあるという。

 JCABではもう一つの推定原因として、中央タンクと左翼タンクを結ぶ配管にある燃料バルブが一時的に開いていた可能性も挙げているが、ボーイングと米国連邦航空局(FAA)の見解では可能性は低いという。

 また、左翼タンクの燃料供給バルブの作動がコマンドに従っていないことを示すメッセージ表示は誤表示と考えられ、同様の一時的な誤表示がほかの787でも発生していることから、ボーイングでは長胴型の787-9の開発に合わせて関連ソフトウェアを変更する見込み。

 再発防止策は、整備士が中央燃料ポンプを作動させて点検し、燃料の移動が起きていないかを確認するなどとした。

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ボストンで起きたトラブルの原因と対策(JCABの資料から)

 当該機は1月13日にも成田空港で整備中に燃料漏れが発生。燃料の抜き取りを行うために燃料ポンプを作動させたところ、左主翼の燃料放出ノズルから燃料が漏れた。原因を調査したところ、コックピットでは燃料放出バルブの状態表示が閉状態となっていたが、実際には同バルブは閉じていなかった。

 同バルブの駆動装置を分解して検査を行った結果、バルブの開閉状態を感知するマイクロスイッチに通常は塗られない絶縁コーティングが行われていたり、異物が付着していることが判明。閉状態を感知するマイクロスイッチが押された状態で固着していた。これにより、コックピットでは閉状態を表示しながらも、実際にはバルブが開いていたため、燃料漏れが生じた可能性があるという。

 成田で起きた燃料漏れの再発防止策としては、燃料放出バルブの開閉を行った場合は目視で閉状態を確認するとした。また、ボーイングでは絶縁コーティングが誤って塗られないよう組立工程をすでに一部変更しているが、燃料バルブの駆動装置も2013年内を目途に改良型の開発を進めている。

 JCABでは、全日本空輸(ANA、9202)の787でも1月にブレーキの不具合など、トラブルが3件発生したことについて、部品の品質不良などが原因で発生した可能性があるとの調査結果をまとめた。(全日空機の調査報告はこちら

成田で起きたトラブルの原因と対策(JCABの資料から)

燃料バルブの駆動装置(左)とマイクロスイッチの概要(JCABの資料から)

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