エアライン, 解説・コラム — 2025年12月2日 20:30 JST

JAL、CAがモバイルバッテリー火災想定し訓練 手元で管理を

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 日本航空(JAL/JL、9201)は12月2日、機内でリチウムイオン電池が発火・発熱した際の、客室乗務員による対応策を報道関係者に公開した。モバイルバッテリーなどリチウムイオン電池を使った製品は、預け荷物として空港で預けられず、機内でも頭上の手荷物収納棚(オーバーヘッドビン)には収納せず、手元で状態を確認できるよう求めており、年末年始の繁忙期を前に改めて利用者へ呼びかけた。

羽田空港の訓練施設で手荷物収納棚のモバイルバッテリーが発火したことを想定しスモークフードを着用して消火にあたるJALの客室乗務員=25年12月2日 PHOTO: Tadayuki YOSHIKAWA/Aviation Wire

 リチウムイオン電池を使ったモバイルバッテリーは、国土交通省航空局(JCAB)の要請で今年7月8日からは頭上の手荷物収納棚にはしまわず、手元で保管するよう求めている。機内で異常な発熱やバッテリーが落下などで衝撃を受けた場合は、客室乗務員に知らせるよう求めている。また、空港で預ける「預け入れ荷物(受託手荷物)」に入れることは法律で禁止している。

 客室乗務員によるデモンストレーションは、同社の羽田空港にある訓練施設にある客室モックアップで実施。手荷物収納棚内での発火や、バッテリーの異常発熱といった緊急時を想定して行われた。発火・発煙時の対応に用いる機内装備品は、火災時に酸素を供給して有害物質や煙の吸入、低酸素状態を防ぐ「スモークフード」をはじめ、ハロン消火器、水消火器、耐熱手袋、耐熱袋の5種類で、JALでは2017年から順次搭載しており、ハロン消火器は今後環境に配慮した消火器に更新していくという。

 発火を想定した実演では、客室乗務員がスモークフードを装着して消火にあたり、火元となったバッテリーの冷却や水没までの流れを再現した。異常発熱を想定した実演では、耐熱手袋と耐熱袋を使用してバッテリーを回収し、客室後方の機内食などを準備するギャレー(厨房設備)で監視する手順を公開した。

 JALによると、客室乗務員は毎年1回受ける訓練時に、機内火災対応の一環としてモバイルバッテリーが発火・発熱した際の対応方法を受講しているという。

羽田空港の訓練施設で手荷物収納棚のモバイルバッテリーが発火したことを想定しスモークフードを着用して消火にあたるJALの客室乗務員=25年12月2日 PHOTO: Tadayuki YOSHIKAWA/Aviation Wire

羽田空港の訓練施設でスモークフードを着用するJALの客室乗務員=25年12月2日 PHOTO: Tadayuki YOSHIKAWA/Aviation Wire

 モバイルバッテリーが入ったスーツケースなどを空港で預けてしまう件数は依然として多く、羽田空港を出発するJALの国内線では、4月から10月末までの期間で1306件発生。1日あたり約6件の割合で起きており、多い日には10件を超えるという。

 空港での対策は、有人カウンターではリチウムイオンバッテリーも記載した危険物の有無を乗客に尋ねるシートを使って確認。自動チェックイン機や自動手荷物預け機(SBD)では、モバイルバッテリーに関する注意喚起を行っている。出発前に乗客が案内を受ける機会を増やし、誤って預け入れ荷物に入れてしまうケースを減らす狙いがある。

 海外では、韓国・金海空港で1月に手荷物収納棚にあったモバイルバッテリーが発火したほか、10月には中国・広州発羽田行きの便でも同様の事案が起きている。また、JALでも今年度はバッテリーの発煙が1件発生し、機内で鎮圧した。

 JALでは年末年始に利用者が増えることから、モバイルバッテリーなどリチウムイオン電池を使った製品が入った手荷物を空港で預けられないことや、手荷物収納棚には収納できないことを改めて周知していく。

*写真は18枚。

羽田空港の訓練施設でモバイルバッテリーが異常発熱したことを想定し耐熱手袋を装着して耐熱袋に回収するJALの客室乗務員=25年12月2日 PHOTO: Tadayuki YOSHIKAWA/Aviation Wire

羽田空港の訓練施設でモバイルバッテリーが異常発熱したことを想定し耐熱手袋を装着して耐熱袋に回収するJALの客室乗務員=25年12月2日 PHOTO: Tadayuki YOSHIKAWA/Aviation Wire

羽田空港の訓練施設で機内に搭載している火災・煙対策装備品の耐熱手袋(左)と耐熱袋を公開するJALの客室乗務員=25年12月2日 PHOTO: Tadayuki YOSHIKAWA/Aviation Wire

羽田空港の訓練施設でスモークフードを着用するJALの客室乗務員=25年12月2日 PHOTO: Tadayuki YOSHIKAWA/Aviation Wire

羽田空港の訓練施設でスモークフードを着用するJALの客室乗務員=25年12月2日 PHOTO: Tadayuki YOSHIKAWA/Aviation Wire

羽田空港の訓練施設でスモークフードを着用したJALの客室乗務員=25年12月2日 PHOTO: Tadayuki YOSHIKAWA/Aviation Wire

羽田空港の訓練施設で手荷物収納棚のモバイルバッテリーが発火したことを想定しスモークフードを着用して火元を確認するJALの客室乗務員=25年12月2日 PHOTO: Tadayuki YOSHIKAWA/Aviation Wire

羽田空港の訓練施設で手荷物収納棚のモバイルバッテリーが発火したことを想定しスモークフードを着用して消火にあたるJALの客室乗務員=25年12月2日 PHOTO: Tadayuki YOSHIKAWA/Aviation Wire

羽田空港の訓練施設で手荷物収納棚のモバイルバッテリーが発火したことを想定し耐熱手袋を装着して回収するJALの客室乗務員=25年12月2日 PHOTO: Tadayuki YOSHIKAWA/Aviation Wire

羽田空港の訓練施設で手荷物収納棚のモバイルバッテリーが発火したことを想定しスモークフードを着用して消火にあたるJALの客室乗務員=25年12月2日 PHOTO: Tadayuki YOSHIKAWA/Aviation Wire

羽田空港の訓練施設で手荷物収納棚のモバイルバッテリーが発火したことを想定し耐熱手袋を装着して回収するJALの客室乗務員=25年12月2日 PHOTO: Tadayuki YOSHIKAWA/Aviation Wire

羽田空港の訓練施設でモバイルバッテリーが発火したことを想定し水没させるJALの客室乗務員=25年12月2日 PHOTO: Tadayuki YOSHIKAWA/Aviation Wire

羽田空港の訓練施設でモバイルバッテリーが発火したことを想定し水没させるJALの客室乗務員=25年12月2日 PHOTO: Tadayuki YOSHIKAWA/Aviation Wire

JALが機内に搭載している火災・煙対策装備品に含まれるスモークフード=25年12月2日 PHOTO: Tadayuki YOSHIKAWA/Aviation Wire

JALが機内に搭載している火災・煙対策装備品=25年12月2日 PHOTO: Tadayuki YOSHIKAWA/Aviation Wire

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