日本航空(JAL/JL、9201)は、羽田空港の敷地内にある教育訓練施設「第1・第2テクニカルセンター(テクセン)」の再編を進めている。同施設では空港・運航・客室・整備の現場系4本部の教育訓練を進めており、このうち地上係員(グランドスタッフ)を教育する空港本部の訓練施設を刷新し、10月1日から運用を始めた。残り3本部も順次再編を進め、2027年度以降に再編を完了する見通し。グランドスタッフは施設再編に伴い、教育内容も大きく変更し、システム操作を学ぶこれまでの「テクニカルスキル」から対人・対応の「ソフトスキル」を学ぶものに変更し、人間力を育む。

リニューアルした教育施設「NEST Park」で訓練を進めるJALのグランドスタッフ=25年11月6日 PHOTO: Yusuke KOHASE/Aviation Wire
—記事の概要—
・リニューアル後は「対人・対応力の向上」
・双方向性重視の「アクティブラーニング」
リニューアル後は「対人・対応力の向上」
刷新したグランドスタッフの教育施設は、「NATURAL(自然体)」「EMPOWERMENT(権限を与える)」「SELF DRIVEN(自ら考える)」「TRY(挑戦)」の頭文字を取り「NEST Park」と命名した。これまで第1テクセンにあった650平方メートルの施設を、同一ビル内の第2テクセンへ移し、700平方メートルに拡大した。
既存施設にあった訓練用のチェックインカウンターやゲートは、一部を移設したものの規模を縮小した。一方でリニューアル後は車いす利用客の訓練を充実させた。床に緩やかな坂を設け、搭乗橋(PBB)のスロープを再現するほか、段も設け、機内に入るときの段差も再現する。
第1テクセンにあったこれまでの教育訓練施設は、2012年2月14日から13年半以上使用。カウンターを模したモックアップで、実際の業務環境に沿った教育や訓練を進めてきた。現在はチェックインが不要な「タッチ&ゴー」を利用する場合が多いことから教育内容を見直し、対人・対応力の向上を図る。

リニューアルした教育施設「NEST Park」で訓練を進めるJALのグランドスタッフ=25年11月6日 PHOTO: Yusuke KOHASE/Aviation Wire

リニューアルした教育施設「NEST Park」で訓練を進めるJALのグランドスタッフ=25年11月6日 PHOTO: Yusuke KOHASE/Aviation Wire
双方向性重視の「アクティブラーニング」

JALのグランドスタッフ教育施設「NEST Park」を担当した松本グループ長=25年11月6日 PHOTO: Yusuke KOHASE/Aviation Wire
リニューアルした教育施設「NEST Park」は物理的な壁を極力廃し、仕切りのないエリアを採用。ほかの人が訓練している様子を目にすることで、さらなる成長を促す。これまでの教育は大学の講義のように全員が同じ方向を向いていたため、ほかの受講者の顔色見えない問題点があったが、リニューアル後は車座で対話できる仕組みに変更。双方向性を重視した「アクティブラーニング」で、講師や受講者同士のやりとりを通じ理解を深めてもらう。
受講者は円形の「ホームルーム」に集まり、基礎的な知識を学ぶ。リニューアルを担当したJAL空港オペレーション教育訓練部企画・運営グループの松本邦弘グループ長は、ホームルーム内は小さな声でも行き届くよう反響する仕組みを採用したと説明。縦に細長い窓を設けることで、完全密閉ではない作りにしたという。
その後は「ディスカッションエリア」で意見交換し、互いの思考を深める。同エリアにはイス35脚と壁型のホワイトボードを設置。天井には円形の間接照明を採用することで、車座での対話を促す作りにした。
訓練用のチェックインカウンターやゲートで空港を再現した「アクティビティエリア」は、学んだ知識を実践する場所で、「分かる」と「できる」の違いを実感してもらうことを狙う。
訓練を振り返る「フィードバックエリア」は、ロビーソファーを置くことで「教室のような作りにはせず、自然と話しができる雰囲気」(松本グループ長)を狙う。
受講者は国内外から参加する場合も多いことから、待ち合わせや予習・復習に活用できる「ラウンジ」も備える。このほか、教育を担当する講師の控え室も設ける。

リニューアルした教育施設「NEST Park」を体験したインストラクターの下舘さん(右)と受講者の成澤さん=25年11月6日 PHOTO: Yusuke KOHASE/Aviation Wire
JAL空港オペレーション教育訓練部教育訓練グループでグランドスタッフ教育のインストラクターを務める下舘麻美さんは、NEST Parkの使い心地について、「従来の訓練施設は緊張感のある作り。リニューアル後は明るく柔らかい印象になった」とし、受講者だけでなくインストラクターにも安心感を与えてくれる、との認識を示した。
NEST Parkで訓練を受けた、JALスカイ羽田事業所空港オペレーション国際部の成澤彩花さんは「空港に近い環境で実践型の訓練ができる。部屋に仕切りがないので教官と受講者の距離縮まる」と振り返った。

JALのグランドスタッフ教育施設「NEST Park」に設けるホームルーム=25年11月6日 PHOTO: Yusuke KOHASE/Aviation Wire

JALのグランドスタッフ教育施設「NEST Park」に設けるディスカッションエリア=25年11月6日 PHOTO: Yusuke KOHASE/Aviation Wire

JALのグランドスタッフ教育施設「NEST Park」に設けるアクティビティエリア=25年11月6日 PHOTO: Yusuke KOHASE/Aviation Wire

JALのグランドスタッフ教育施設「NEST Park」に設けるアクティビティエリア=25年11月6日 PHOTO: Yusuke KOHASE/Aviation Wire

JALのグランドスタッフ教育施設「NEST Park」に設けるフィードバックエリア=25年11月6日 PHOTO: Yusuke KOHASE/Aviation Wire

JALのグランドスタッフ教育施設「NEST Park」に設けるラウンジ=25年11月6日 PHOTO: Yusuke KOHASE/Aviation Wire

JALのグランドスタッフ教育施設「NEST Park」に設けるラウンジ=25年11月6日 PHOTO: Yusuke KOHASE/Aviation Wire

JALのグランドスタッフ教育施設「NEST Park」に設けるラウンジ=25年11月6日 PHOTO: Yusuke KOHASE/Aviation Wire

JALのグランドスタッフ教育施設「NEST Park」に設けるインストラクタールーム=25年11月6日 PHOTO: Yusuke KOHASE/Aviation Wire

JALのグランドスタッフ教育施設「NEST Park」のエントランス=25年11月6日 PHOTO: Yusuke KOHASE/Aviation Wire
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