空港, 解説・コラム — 2025年8月1日 09:44 JST

中部空港、代替滑走路の工事公開 27年度供用開始

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 中部空港(セントレア)を運営する中部国際空港会社(CJIAC)は7月31日夜から8月1日深夜にかけて、代替滑走路の整備工事を報道関係者に公開した。2005年の開港から20年が経過した現在の滑走路を大規模補修する際、24時間運用を維持して実施できるよう、並走する誘導路を改修して代替滑走路にする工事で、2027年度中の早期に供用開始を目指す。

代替滑走路工事が進む中部空港を出発するJALの上海行き貨物便JL6783便=25年8月1日 PHOTO: Tadayuki YOSHIKAWA/Aviation Wire

 代替滑走路は今年4月1日に着工。現在の滑走路の東側にある誘導路を転用するもので、長さ3290メートル、幅45メートルとなる。航空機の離着陸が少ない夜間を中心に工区を分けて工事を進め、誘導路の本体部分を活用しながら滑走路として運用できるよう補強し、航空灯火などを整備していく。事業費は226億円で、今年度から2026年度までの工事期間を経て国土交通省航空局(JCAB)が飛行検査などを半年ほどかけて実施し、2027年度内に供用開始して運用を完全24時間化する。

 工事期間中は、3本ある高速離脱誘導路のうち2本は運用を続けるなど、航空機の運航に支障が生じないよう工事を進めていく。夜間は大型のダンプカーなどの工事車両が出入りするが、離着陸が多い昼間は、夜のうちに運び込んだ資材を使って工事を進めるなど工夫することで、工期を極力短縮する。

LED警告灯が設置され代替滑走路工事が進む中部空港に着陸するカリッタ航空が運航するDHLのソウル発K4217便=25年7月31日 PHOTO: Tadayuki YOSHIKAWA/Aviation Wire

代替滑走路を整備する中部空港(国交省の資料から)

 航空機が工事エリアに誤進入しないよう、夜間は1カ所につき赤色の点滅灯が付いたラバーコーンを4個、LED警告灯を2個設置し、禁止標識や禁止区域灯と合わせた安全対策を講じた。また、工事車両の誤進入対策としては、前後に先導車と後尾警戒車を配置し、GPSで車両の位置を把握できる運行支援システムを導入する。

 31日は午後11時から工事が始まり、誘導路周辺の緑地帯で表土を除去する作業が進められ、大型ダンプカーで運び出した。

中部空港で進められている代替滑走路の工事=25年7月31日 PHOTO: Tadayuki YOSHIKAWA/Aviation Wire

中部空港で進められている代替滑走路の工事で先導車と後尾警戒車に挟まれて出発を待つ大型ダンプカー=25年7月31日 PHOTO: Tadayuki YOSHIKAWA/Aviation Wire

中部空港で進められている代替滑走路の工事で先導車と後尾警戒車に挟まれて出発する大型ダンプカー=25年7月31日 PHOTO: Tadayuki YOSHIKAWA/Aviation Wire

 中部空港の施設管理を担うCJIACの100%子会社である中部国際空港テクニカルコネクトの伊藤真弘執行役員によると、今後工事が進むと工事車両が増えるが、先導車と後尾警戒車による誘導はすべての車両の出入りに対して実施し、現場監視員による誘導や運行支援システムと合わせて誤進入対策を徹底し、24時間運用を維持しながら工事を進めていくという。

 現在の滑走路と代替滑走路は210メートルしか離れていないことから、土などが飛散しないよう、工事箇所をローラーで固めたり、タイヤの洗浄などの飛散対策を実施している。

 中部空港は2005年2月17日に開港。滑走路は1本で、クラック(ひび割れ)などが発生した場合、大規模修繕を実施するとなると滑走路を長時間閉鎖することになることから、代替滑走路を設けて、普段は代替滑走路を離陸、現行を着陸と分けて運用し、工事が生じた際は片方の滑走路で24時間運用できるようにする。伊藤氏によると、現在も週10時間程度は整備に充てているといい、代替滑走路の運用が始まれば完全24時間化できるという。

 また、中部空港は羽田や成田、関西といった大規模空港が悪天候などで閉鎖された際、ダイバート(目的地変更)先のひとつになっている。滑走路が1本の現状では、閉鎖中はダイバートする便を受け入れられないこともあり、現行の滑走路が老朽化する中、代替滑走路を早期に運用できるようにする必要がある。伊藤氏は「今回の代替滑走路は処理能力を上げるものではなく、なるべく早く滑走路を直すためのもの」と説明した。

 CJIACによると、滑走路を24時間運用しながら隣接する場所で大規模工事するのは、国内では初の事例だという。報道関係者に公開した時間帯のうち、31日午後11時30分から1日午前1時30分に間では、貨物便3便の離着陸があり、米国のカリッタ航空(CKS/K4)が運航するDHLの貨物便ソウル(仁川)発K4217便(ボーイング777F貨物機、登録記号N775CK)と、日本航空(JAL/JL、9201)の台北(桃園)発JL6718便(767-300BCF、JA621J)が到着し、上海(浦東)行きJL6783便(767-300BCF、JA654J)が出発した。

中部空港で進められている代替滑走路の工事=25年8月1日 PHOTO: Tadayuki YOSHIKAWA/Aviation Wire

中部空港で進められている代替滑走路の工事=25年7月31日 PHOTO: Tadayuki YOSHIKAWA/Aviation Wire

代替滑走路工事が進む中部空港に着陸するカリッタ航空が運航するDHLのソウル発K4217便=25年7月31日 PHOTO: Tadayuki YOSHIKAWA/Aviation Wire

代替滑走路工事が進む中部空港に到着するカリッタ航空が運航するDHLのソウル発K4217便=25年7月31日 PHOTO: Tadayuki YOSHIKAWA/Aviation Wire

代替滑走路工事が進む中部空港に到着したカリッタ航空が運航するDHLのソウル発K4217便=25年8月1日 PHOTO: Tadayuki YOSHIKAWA/Aviation Wire

代替滑走路工事が進む中部空港を出発するJALの上海行き貨物便JL6783便=25年8月1日 PHOTO: Tadayuki YOSHIKAWA/Aviation Wire

代替滑走路工事が進む中部空港に着陸するJALの台北発貨物便JL6718便=25年8月1日 PHOTO: Tadayuki YOSHIKAWA/Aviation Wire

代替滑走路工事が進む中部空港に到着するJALの台北発貨物便JL6718便=25年8月1日 PHOTO: Tadayuki YOSHIKAWA/Aviation Wire

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中部国際空港代替滑走路プロジェクト
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