国土交通省は6月20日、今年3月に起きた飲酒逸脱検査に関与したスプリング・ジャパン(旧春秋航空日本、SJO/IJ)の元機長(解雇処分済み)に対し、航空法に基づく行政処分を行った。当該便の元機長「操縦士A」を90日間の航空業務停止とした。

国交省が飲酒逸脱検査に関与したスプリング・ジャパンの元機長に行政処分(資料写真)=PHOTO: Tadayuki YOSHIKAWA/Aviation Wire
元機長による飲酒逸脱検査は、3月18日の北九州発羽田行き貨物便IJ444便(エアバスA321ceo P2F型貨物機、登録記号JA82YA)で発生。元機長は北九州空港へ出勤時にアルコールが残っていたことからアルコール検査を直ちに受けず、同じ便に乗務する副操縦士を含む周囲には「栄養ドリンクの影響でアルコールが検出されている」と主張し、アルコールが検知されなくなるまで自主検査を繰り返した。また、副操縦士らは繰り返す自主検査に疑念を持たず、栄養ドリンクの影響とする自己申告を信じてしまったという。
その後当該便は、機長のアルコール量が検知されなくなったことを確認後に出発。北九州を定刻より2分早い18日午前1時38分に出発し、羽田には15分早い午前3時に到着した。
同社の規定では乗務12時間以内の飲酒を禁じているが、元機長はのちの調査で、出社約5時間前時点で体内にアルコールが残っていたことが判明。12時間前に体内に残るアルコール量を純アルコール換算で40グラム相当の「4ドリンク」以下にすることを定め、出社後すぐのアルコール検査を求めているが、元機長は従っていなかった。
スプリング・ジャパンが飲酒逸脱検査を国交省へ報告したのは、当該便を運航した3月18日。その後に社内での調査で、12時間以内の飲酒禁止や「4ドリンク」の規定に抵触していたことが分かり、4月22日に追加で報告した。国交省航空局(JCAB)は同社に対し5月9日付で厳重注意。スプリング・ジャパンは同月30日に、飲酒対策を含む安全意識の再徹底など、3項目を盛り込んだ再発防止策を提出した。
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国内の航空会社では、昨年2024年12月に日本航空(JAL/JL)でもパイロットの飲酒問題が発生。メルボルン発成田行きJL774便(ボーイング787-8型機、JA840J)の出発前に、機長と副機長が乗務前日に過度な飲酒を行い、同便の出発が3時間以上遅れた。JALは2人を懲戒解雇し、国交省はJALに業務改善勧告したほか、元機長2人に対しても180日間(機長)・210日間(副機長)の航空業務停止処分を科した。
また、ピーチ・アビエーション(APJ/MM)でも今年1月に飲酒トラブルが発生。現地時間7日のシンガポール発定刻午前2時15分発の関西行きMM774便(A321LR、JA902P)の機長が虚偽の飲酒時間を説明し、飛行勤務開始12時間以内の飲酒の隠ぺいを図ったもので、国交省はピーチに対し厳重注意し、当該便の機長を航空法に基づき、30日間の航空業務停止とする行政処分を行った。
関連リンク
国土交通省
スプリング・ジャパン
国交省からの厳重注意
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