日揮ホールディングス(1963)と日本航空(JAL/JL、9201)、関西エアポート(KAP)は5月1日、国産の代替航空燃料「SAF(Sustainable Aviation Fuel:持続可能な航空燃料)」を旅客便に初めて供給したと発表した。大阪・関西万博(2025年日本国際博覧会)の公式キャラクター「ミャクミャク」を描いた特別塗装機「JALミャクミャクJET」の2号機(ボーイング787-8型機、登録記号JA823J)による関西発上海行きJL891便が初便となった。

関空で国産SAFの本格運用初便となった上海行きJL891便の前で記念撮影に応じるFry to Fly Project参加各社の出席者=25年5月1日 PHOTO: Tadayuki YOSHIKAWA/Aviation Wire
使用されたSAFは、日揮HDとコスモ石油、レボインターナショナル(京都市)3社が設立したSAFFAIRE SKY ENERGY(サファイアスカイエナジー、横浜市)が、大阪府堺市のコスモ石油堺製油所構内で製造。日本のSAF製造事業者として初めて「ISCC CORSIA」認証を取得したもので、家庭や店舗などから排出された廃食用油を原料としている。4月からこのSAFの安定供給が開始できたといい、今回のJAL便への供給から本格運用へ移行した。

関空で挨拶するFry to Fly Project事務局の秋鹿正敬・日揮HD専務執行役員TCO=25年5月1日 PHOTO: Tadayuki YOSHIKAWA/Aviation Wire
関空で開かれた記念式典で、Fry to Fly Project事務局を務める日揮HDの秋鹿正敬専務執行役員TCOは「2019年に製造事業に着手し、2021年からNEDO(国立研究開発法人新エネルギー・産業技術総合開発機構)の支援を受け、関空に近い堺工場に大規模製造設備を建設した。3月8日に無事竣工し、今日ようやく国産初の実用化を達成した」とあいさつした。
秋鹿氏は「このサプライチェーンは、家庭やレストラン、スーパー、学校などから油が集まり、製造所へ届くという、今までにない地域密着型の新しいサプライチェーンだ」と説明し、「今後も安定供給を続けていきたい」と語った。

関空で国産SAFの本格運用初便となった上海行きJL891便を見送るFry to Fly Project参加各社の出席者=25年5月1日 PHOTO: Tadayuki YOSHIKAWA/Aviation Wire

関空で国産SAFの本格運用初便となった上海行きJL891便の乗客にステッカーを手渡すJALの地上係員=25年5月1日 PHOTO: Tadayuki YOSHIKAWA/Aviation Wire
JALは2050年のCO2(二酸化炭素)総排出量実質ゼロに向け、2030年に使用燃料の10%をSAFに置き換える。調達本部長の小川宣子執行役員は「2030年の10%は世界中でかなり難しいと言われている。そのためにも、小さなことから少しずつ、できることを積み重ねていきたい。スタートアップの支援なども含め、あらゆる可能性を追求したい」と述べた。

国産SAFの本格運用初便となったJALの関西発上海行きJL891便の乗客に手渡したステッカー=25年5月1日 PHOTO: Tadayuki YOSHIKAWA/Aviation Wire
サファイアの西村勇毅COO(最高執行責任者)は、原料となる廃食用油の回収が課題だと説明。「まだ多くが輸出されているのが現状。JALさんも取り組んでいるが、自治体が制度として回収する例も出てきた。こうした取り組みを全国規模に展開していきたい」いう。
また、秋鹿氏は原料調達の現状について「目標にはまだ届いていないが、おおよそ6-7割程度まで来た」と述べた。今年度はプラントの定期修繕が予定されており、フル稼働ではないものの、「今年度分の必要量を確保できる見通し」だと見通しを示した。
Fry to Fly Projectは、日揮HDが2023年4月に立ち上げたプロジェクトで、家庭や店舗などから排出される廃食用油をSAFへ再生し、国内資源の循環を促す全員参加型の取り組み。設立時は29の企業・自治体・団体が参画し、現在では200を超えている。航空分野ではJALや全日本空輸(ANA/NH)、KAP、ボーイング・ジャパンなどが参画している。
国産SAFの分野では、2022年3月2日に日揮HD、レボ、JAL、ANAが共同で有志団体「ACT FOR SKY(アクトフォースカイ)」を設立。国産SAFの商用化や普及、拡大に取り組んでいる。

関空で国産SAFをPRするFry to Fly Project参加各社の出席者=25年5月1日 PHOTO: Tadayuki YOSHIKAWA/Aviation Wire

関空を出発する国産SAFの本格運用初便となったJALの上海行きJL891便=25年5月1日 PHOTO: Tadayuki YOSHIKAWA/Aviation Wire

関空を出発する国産SAFの本格運用初便となったJALの上海行きJL891便=25年5月1日 PHOTO: Tadayuki YOSHIKAWA/Aviation Wire

関空を出発する国産SAFの本格運用初便となったJALの上海行きJL891便=25年5月1日 PHOTO: Tadayuki YOSHIKAWA/Aviation Wire
関連リンク
FRY to FLY Project(日揮ホールディングス)
日本航空
関西エアポート
国産SAF
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・JALと横浜市、食用油回収し国産SAF原料に 3月から実証実験(24年2月28日)
・廃食用油から国産SAF、JAL・ANAら29者参画 日揮が“全員参加”Fry to Flyプロジェクト(23年4月18日)
・ANAやJALら、国産SAF実用化へ「ACT FOR SKY」設立 代替燃料で脱炭素社会へ(22年3月2日)
IATA
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