空港 — 2024年5月14日 19:45 JST

成田空港、地域共生「エアポートシティ」目指す 訪日客増でタクシー利用に変化も=構想検討会

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 成田空港を運営する成田国際空港会社(NAA)は5月14日、空港の将来像を検討する「『新しい成田空港』構想検討会」(委員長・山内弘隆 武蔵野大学経営学部 特任教授、一橋大学 名誉教授)の第8回会合を都内で開いた。今回の会合では、バス・タクシーを活用した空港アクセスや、地域共生や空港を中心としたまちづくりなどを話し合った。

『新しい成田空港』構想検討会の第8回会合の冒頭であいさつするNAAの田村社長(右)=24年5月14日 PHOTO: Yusuke KOHASE/Aviation Wire

—記事の概要—
バス停運用「従量制」に
海外5空港参考に「エアポートシティ」議論

バス停運用「従量制」に

 バス・タクシーを活用した空港アクセスは、コロナ前後での利用状況を比較し、現状の課題をあぶり出した。

 空港全体の利用客の割合は、コロナ前は日本人と訪日客が概ね半々だったが、コロナ後は訪日客の割合が大幅に増加。外国人客が全体の7割を占め、日本人の出入国者が減少するなど、コロナ前後で空港利用客の属性が変化している。

 空港への高速バスは、都心部への復便が進む一方、地方からの出国者利用が中心の郊外路線は復便が大幅に遅れている。将来的に日本人客の需要が回復した場合には、郊外路線の復便も必要だ。

 バスはコロナ前の2019年時点で、バス停の処理能力が限界に達することが予想されたため、効率運用の検討を進めた。これまではバス会社と行き先を固定し、バス停ごとに契約する運用としていたが、今年4月1日からは発着ごとの「従量制」契約に変更。ターミナル出入口近くのバス停には利用客が多い路線を優先的に割り当て、バス会社や方面にとらわれない運用に変更した。

 成田空港に乗り入れるタクシーは、加盟する11社180台に限られている。鉄道やバスの発達によりコロナ前のタクシー利用率は鈍化していたが、訪日客の回復によりタクシー需要が増加。今年2月と3月はコロナ前を上回る実績だったという。

 訪日客の急拡大を受け、スマートフォンを活用したタクシーの配車サービス「GO」利用時に空港から乗車できるようにした。タクシーは大型車両を23台導入。手荷物が多い旅客やグループ移動などの需要に対応した。また海外の旅行代理店での高速バスの乗車券販売も開始。eチケットを提示して乗車できるようにし、コロナ前に発生していたバスチケットカウンターの行列解消につながった。

 会合後に取材に応じた検討会の山内弘隆委員長は、「バス・タクシーは空港と都心だけでなく、地域の交通とも関係してくる。重要なポイントを議論できた」と振り返った。

 NAAの田村明比古社長は「訪日客のニーズに応えられているかが課題だった」とし、大型車両やアプリ、キャッシュレス化の導入などが重要だと述べた。

多くの訪日客らでごった返す成田空港第1ターミナルの到着ロビー=23年12月 PHOTO: Yusuke KOHASE/Aviation Wire

海外5空港参考に「エアポートシティ」議論

 まちづくりでは、地域や空港従業員に住みやすい地域づくりと、空港を中心とした産業を誘致する「エアポートシティ」の実現が重要だとし、海外5空港の事例を参考に方向性を議論した。

 エアポートシティは、空港を中心とした5キロ圏内の「空港近接地型」と、20キロ圏内の「広域型」の2種類に大きく分類。空港近接地型はフィンランドのヘルシンキ ヴァンター空港と、英ロンドンのルートン空港を、広域型はオランダ・アムステルダムのスキポール空港、アイスランド・レイキャビクのケフラヴィーク空港、ソウルの仁川国際空港を例に紹介した。

 各空港は中心地からは10-50キロ程度離れており、空港機能と地政学的な立地特性を活かしてヒト・モノ・投資を空港周辺へ呼び込み、住環境や教育・訓練環境、オフィス環境を整備。自然・地域との調和のほか、企業誘致・産業形成を図っている。開発体制は空港により異なるが、自治体と空港会社との連携や、空港会社と国・自治体で地域開発会社を設立するなどのケースがあると説明した。

 空港周辺ではMRO(整備・修理・分解点検)の拠点のほか、航空教育や訓練施設などの航空関連産業が盛んだという。また、航空の速達性やグローバルなネットワーク、空港周辺の広大な土地を活かし、医薬品やヘルスケアなどのライフサイエンス産業、ICT(情報通信技術)やロボット技術を用いて農作物を育てる「アグリテック」産業などの集積を図る事例を紹介した。このほか、空港周辺にビジネス地区を形成し、グローバル企業の営業拠点、ホテル、会議場などを設置する事例もあると説明した。

 海外5空港の事例から、成田空港でのエアポートシティ実現には▽グローバルな視点とローカルな視点でヒト・モノ・投資を地域へ呼び込むこと▽行政と空港が一体となった推進体制▽無秩序な地域の開発をさけるための『ゾーニング』▽人材確保のための『生活環境』『教育環境』『就労環境』の整備▽周辺環境に溶け込み自然と調和したエアポートシティの形成、の5項目が重要であるとし、関係者と具体化を図る必要があるとした。

『新しい成田空港』構想検討会の第8回会合終了後に取材に応じる検討会の山内委員長(右)とNAAの田村社長=24年5月14日 PHOTO: Yusuke KOHASE/Aviation Wire

 会合後に取材に応じた山内委員長は、空港と周辺地域は密接に関係しながらまちづくりを進めていくとした上で、「成田空港の場合にはいろいろな事情があり、うまくできなかった。空港だけ、地域だけではできないし、県と国と一体で進めて」と述べた。

 NAAの田村社長は「空港にとって結構切実な問題。従業員の方々は地域に住んでいただかなければならず、良好な住環境を提供できないと空港の運営そのものに影響を与える」との認識を示した。

  ◇

 NAAはエアポートシティの実現や、空港従業員と家族が安心して暮らすことができる「住みたくなるまちづくり」を進めるにあたり、県や空港周辺自治体との連携を強化。成田市や富里市など空港周辺の11市町と千葉・茨城の2県を構成員とする「『新しい成田空港』構想検討における地域連絡会」を立ち上げる。

 地域連絡会には各者の課長級が参加する実務者会議で、3カ月に1回の頻度で話し合いを進めていく。初回の会合は7月を予定する。

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