那覇空港を拠点とする整備会社MRO Japan(MROジャパン)は4月22日、エアバスの旅客機を貨物機に改修する「P2F(Passenger-to-Freighter)」について、改修事業の中核を担う独エルベ・フルクツォイヴェルケ(EFW)社と基本合意書(MoU)を締結と発表した。今回の基本合意により、MROジャパンはエアバスの旅客機を貨物機に改修する日本で初めての事業者となる。
改修するのはA320型機とA321の2機種。大型貨物ドアの取り付けや床面の補強などにより、旅客機を貨物専用機へ改修する。A320を改修する「A320P2F」は、1機あたり21トンの貨物を搭載できる。A321を改修する「A321P2F」の貨物搭載量は28トンとなる。
EFWはエアバスとSTエンジニアリング(シンガポール)の合弁会社で、ヤマトホールディングス(9064)が4月11日から運用しているA321P2Fの改修作業も手掛けた。ヤマトのA321P2Fは日本航空(JAL/JL、9201)グループが運航・整備し、整備やランプハンドリングなどはJALが、運航などはグループLCCのスプリング・ジャパン(旧春秋航空日本、SJO/IJ)が担っている。
MROジャパンは、全日本空輸(ANA/NH)を傘下に持つANAホールディングス(ANAHD、9202)が全額出資して2015年6月に設立し、2019年1月の那覇での事業開始前に実施した増資後は株主が8社となった。格納庫は沖縄県が建設したもので、県は航空機整備事業を中心とした航空関連産業の集積を目指しており、MROジャパンは前身の全日空整備時代から使用してきた伊丹空港の格納庫から那覇へ全面移転した。
ANAグループの機体を中心に日常の整備やCチェック(重整備)のほか、同社が得意とする塗装作業などを手掛けている。国内各社のほか、2022年には台湾新興のスターラックス航空(星宇航空、SJX/JX)から整備業務の受託も開始。VIP向けチャーターサービス会社コムラックス(本社・スイス)から整備委託先に認定され、同社が保有するエアバス製ビジネスジェット機「エアバス・コーポレート・ジェット(ACJ)」のACJ318型機のCチェックも受託した。
このほか、リース機返却事業でスターフライヤー(SFJ/7G、9206)と確認書を締結。これまでは海外で進められていた返却前に必要なMRO(整備・修理・分解点検)作業を、EASA(欧州航空安全庁)がMROジャパンを整備事業場として認定したことで、国内での返却前整備が可能となった。
各社の機体を整備
・MROジャパン、スターフライヤー機のリース返却整備 EASA認定で新事業(24年2月26日)
・ANA、Q400「鬼滅の刃 ぷろっぷ」那覇で公開 全席にデカール(23年7月8日)
・ソラシド、ナッシージェット就航 初の全面塗装機、1日6便で宮崎PR(23年3月2日)
・MROジャパン、初のBJ整備受託 コムラックスのACJ318、欧州基準で整備(22年11月9日)
・MROジャパン、海外からも整備受託 スターラックス航空から(22年10月28日)
・スカイマーク、ANA系MROジャパンで重整備 海外社も継続(22年10月21日)
・「柱」9人の剣士描く 写真特集・ANA鬼滅の刃じぇっと -弐-(22年3月25日)
MRO Japan
・MROジャパン、ウェアラブルカメラと5Gで整備品質向上 整備士の作業映像2年分活用(23年6月1日)
・元ゆめジェットでフィットチェック 写真特集・MROジャパン那覇格納庫(18年12月6日)
・MROジャパン、那覇空港へ11月以降移転 ANAやジャムコなど第三者割当増資引き受け(18年9月28日)
・三菱航空機、MRJ整備3社と基本合意 北米・アジア、ANA系も(16年7月14日)
・ANA、沖縄にMRJ整備会社 ジャムコや三菱重工とMRO参入(15年6月2日)
見学ツアー
・ANA系MROジャパン、那覇の格納庫で夏休み体験企画 9月は飛行機好き向け(23年7月11日)
・MROジャパン、那覇で格納庫見学ツアー(22年4月14日)
ヤマトとJALの貨物事業
・ヤマトHD、“クロネコ貨物機”増機検討 A321P2F、需要見極め新就航地も(24年4月11日)
・ヤマトとJAL、クロネコ貨物機A321P2F就航 長距離トラック補完(24年4月11日)
・ヤマトとJALのクロネコ貨物機A321P2F、成田でお披露目 4/11就航へ(23年11月20日)
・JALはなぜ”禁じ手”貨物機を解禁するのか 特集・ヤマトと組むコロナ後の貨物戦略(23年5月4日)
・JALとヤマトのA321貨物機、なぜスプリング・ジャパンが飛ばすのか(22年11月22日)