エアライン, 企業, 官公庁 — 2024年3月12日 19:40 JST

JAL、企業・自治体を「ワーケーション」でつなぐ 研究会設立2年、“働き方”も変化

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 日本航空(JAL/JL、9201)は3月12日、企業と自治体をつなぐ共創型コミュニティ「ワークスタイル研究会」の活動報告会を東京・天王洲のJAL本社で開催した。同研究会は休暇中に一部の時間を仕事に充てる「ワーケーション」を軸とし、新しい働き方の普及・推進により企業価値の向上や地域活性化を目指すもので、JALが運営事務局を担う。設立から2年が経過しワーケーションの中身も変化しつつあることから、3年目となる2024年度は議論をさらに活発化させ、ワーケーションのひな型(テンプレート)となるようなツアーを検討していきたい考えだ。

「ワークスタイル研究会」の活動を報告するJAL社員=24年3月12日 PHOTO: Yusuke KOHASE/Aviation Wire

—記事の概要—
JALが事務局、企業・自治体つなぐ
変化するワーケーションの中身
自治体が都内でプレゼン「逆ワーケーション」

JALが事務局、企業・自治体つなぐ

 政府は2019年4月1日に「働き方改革関連法」を施行し、企業に対し時間外労働の上限規制や有給休暇の取得義務化などを定めている。JALは2015年度からワークスタイル変革を開始。ワーケーションは2017年度から導入した。

 ワークスタイル研究会は2022年2月に発足。社会へのワーケーションの浸透を目的として設立し、JALが事務局となり参加企業と自治体をつないでいる。企業側は制度導入や働き方への意識改革が進んでいないこと、自治体は環境整備やプロモーションなどに限界があるなどの課題があったことから、ワーケーションの社会浸透のほか、状況の打破も目指す目的で設立した。

 設立当初は企業への制度導入と受け入れ自治体の環境整備を目的としていたが、テレワークの普及により現在は働き方が多様化。同研究会によると、現在は働き手が身体的・精神的・社会的に健康な「ウェルビーイング」への追求や、企業の人的資本投資など、「働くこと」の価値への再認識を議論する場面も多くなっているという。

 同研究会の会員は、今年2月1日時点で企業22社と57自治体の計79団体。専用のウェブサイトを通じ、参加企業と自治体が双方向でコミュニケーションできる仕組みを構築し、ワーケーションをはじめとした働き方への議論を活発化させている。

JALが事務局を務める「ワークスタイル研究会」の「逆ワーケーション」で地元を紹介する自治体担当者=24年3月12日 PHOTO: Yusuke KOHASE/Aviation Wire

変化するワーケーションの中身

 ワーケーションには、有給休暇などを活用し費用を個人で負担する「休暇型」と、企業が負担する「業務型」に大きく分類される。設立当初は休暇型が多かったものの、現在は業務型が増えてきている。業務型は地域関係者との交流を通じ、地域課題の解決策を考える「地域課題解決型」、場所を変えて職場の同僚と議論を交わす「合宿型」、訪問先のシェアオフィスなどで勤務する「サテライトオフィス型」に分類される。また、出張先で滞在を延長し、余暇を過ごす「ブレジャー」なども浸透してきている。

 このうち、企業と地方自治体が組む「地域課題解決型」は、企業側には「地域とのつながり」「新規ビジネスの創出」など相乗的な効果が期待できる一方、地域が抱える本当の課題の把握には時間がかかり、企業として継続的に関わるための体制・スキームの構築などが課題となる。自治体にとっては課題解決には継続性が必要なことから再訪につながる一方、企業に継続的に関わってもらうための仕組みの構築が必要となるなど、課題も多い。

 これらの課題に対し、ワークスタイル研究会では対処法の案を議論。企業は、自治体が抱える課題の把握に時間がかかることを課題点としているが、同研究会ではワーケーション導入段階で議論を進めることで課題の本質を把握しやすくることを提案する。自治体側が課題とする、企業に関わってもらうための仕組み構築については、地域を体験できるコンテンツの用意や、地元と地域外の人々の交流、定期的な情報発信などを提案する。

 ワークスタイル研究会は設立から2年が経過。3年目となる2024年度は、会員枠の拡大やコミュニティサイトを誰でも閲覧できるようにするなど、全国的なネットワークの拡大を図る。また障壁原因の徹底究明などにより、「課題解決型ワーケーション」を強化する。

自治体が都内でプレゼン「逆ワーケーション」

 今回の発表会では「逆ワーケーション」として地方自治体を東京へ招き、各自治体が地元の名所や名産品をプレゼン。地域が抱える悩みなども発表した。今回のカンファレンスには研究会の会員を中心に、会場とオンラインで160人以上が参加した。

 参加したのは秋田県美郷町、青森県弘前市、北海道富良野市、新潟県妙高市の各自治体の担当者。東北の2自治体は人口減少が進行していることから、定住・交流人口の増加が不可欠と訴えた。

 観光資源が多い富良野市は、観光教育プログラムなどを用意。「企業研修などに使って」とPRする。米やフルーツなどの生産が盛んな妙高市は、生産年齢人口の減少による担い手不足に直面しており、外部人材の活用などにより農業課題を解決してきたい考えだ。

 今回参加した美郷町とJALは連携協力協定を締結しており、人材交流も盛んに行われている。同町から参加した職員はJALからの出向者で、ワークスタイル研究会の事務局には、美郷町から出向しているJAL社員も参加している。

JALが事務局を務める「ワークスタイル研究会」の「逆ワーケーション」で自治体担当者と議論を交わす参加者=24年3月12日 PHOTO: Yusuke KOHASE/Aviation Wire

JALが事務局を務める「ワークスタイル研究会」の活動報告会で観光アピールする参加各自治体=24年3月12日 PHOTO: Yusuke KOHASE/Aviation Wire

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