エアライン, 企業, 解説・コラム — 2020年2月18日 14:00 JST

休暇の合間に働くワーケーション、JALがハワイ実証実験 特集・MINDSの働き方改革(前編)

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 祝日が3連休となるケースが増えたが、年末年始やゴールデンウィーク、お盆休みといった時期を除くと、長期の休暇を取得するのはなかなか現実的ではない人が多いのではないか。一方で、テレワーク(在宅勤務)や、休暇時に業務を認める「ワーク(仕事)」とバケーション(休暇)」を合わせた「ワーケーション」、出張時に休暇を付けられる「ブリージャー」といった制度を取り入れ、新しい働き方を模索する企業も出てきた。

ハワイ島でワーケーションの実証実験をするMINDSのメンバー=PHOTO: Tadayuki YOSHIKAWA/Aviation Wire

 日本航空(JAL/JL、9201)は、異業種連携によるミレニアル世代を中心とした働き方改革推進コミュニティ「MINDS(Millennial Innovation for the Next Diverse Society)」に参画。2019年1月1日に発足した組織で、日本マイクロソフトやJALなど10社で1年間活動してきたが、昨日2月17日に今年4月から新たに3社が加わることが発表され、2020年度も活動が続くことになった。

 2025年までに、世界の労働人口の75%を35歳以下の人が占めるようになると言われている。MINDSは多様性のある働き方をどのように実現するかを考えていく中、JALは「時間・場所の制約から解放するためには!?」というテーマのプロジェクトリーダーとして活動。仕事と家庭の両立や、働く場所を制限なく選べるようにする解決策を、ほかの企業と共に模索してきた。

 具体的な取り組みとして、和歌山県白浜町でMINDSとして第1回のワーケーションを8月21日から3日間開催。家族とともに旅に出掛け、時間を区切って仕事もこなすことで、これまでよりも長期の休暇を取得したり、休暇そのものを取りやすくする狙いがあるものだ。和歌山県も、ワーケーションの場として南紀白浜の情報を発信している。

 MINDSがまとめた第1回参加者の声をみると、「家族の時間が設けられた」「気分転換になりモチベーションが上がる」といったプラスの評価があった一方で、「休暇の要素がある以上、会社や上司の理解が得られない」という現実的な課題もみられ、普及にはまだ時間が掛かりそうな状況だ。

MINDSがワーケーションの実証実験を実施したハワイ島=PHOTO: Tadayuki YOSHIKAWA/Aviation Wire

 そうした中、MINDSは2019年12月にハワイでワーケーションを実施。仕事に影響を与えず、より長い休暇を取得するためにどういった課題があるかを、海外旅行の定番であるハワイで検証してみようという取り組みだ。そして、ワーケーションが働く人にどういう影響を与えたかを2月17日の活動報告会で発表した。旅先で働くことは、人々にどういう影響があるのだろうか。

—記事の概要—
日本時間に合わせやすいハワイ
ハワイ島でワーケーション
休んだことがない人が反対
休暇中の仕事を会社が認める

日本時間に合わせやすいハワイ

 ワーケーションを制度として導入する理由のひとつが、休暇中の仕事時間を会社として認めることだ。長期休暇中、ホテルやコワーケーションスペースで数時間仕事ができれば、仕事に支障がないという人もいるだろう。一方で、休暇中の仕事時間が勤務として認められない限り、「ただ働き」になってしまう。

コナ空港で出発を待つJALの767=PHOTO: Tadayuki YOSHIKAWA/Aviation Wire

 日本の労働力人口が減少していく中、多様な働き方を企業が認めることが、短時間であれば働ける人が担える仕事や、家庭と仕事を両立できれば退職せずに済む人に働いてもらえるといった解決策につながる。

 業種により導入できるか否かという課題はあるが、働く側も企業側も、場所や時間を問わずに勤務時間を認められる仕組みがあれば、普段のテレワークを含め、働き方の選択肢が増える。中国から拡散した新型コロナウイルスの影響でテレワークを活用する企業もあるように、オフィスに出社することだけが働き方とは言えなくなってきた。また、育児や介護といった家庭の課題を解決する上でも、出社しない働き方をどう定義していくかは重要だ。

 JALが今回ハワイをワーケーションの場に選んだ理由の一つは時差だ。日本との時差は19時間で、日本時間午前9時はハワイでは前日の午後2時。ちょうど日本時間で午前中がハワイの夕方前で、半日程度は日本のオフィスアワーと合わせられる。

 実証実験でハワイ島を選んだのは、ホノルルがあるオアフ島よりも自然に親しむアクティビティーが豊富で、静かな点だ。MINDSのメンバーが宿泊するのはホテルではなく民泊を選んだ。エクスペディアグループでリゾート地に強い民泊サイト「HomeAway(ホームアウェイ)」が実証実験に協力した。

ハワイ島でワーケーション

 今回JALでMINDSのプロジェクトを統括する、人財戦略部ワークスタイル変革推進グループの東原祥匡(よしまさ)アシスタントマネジャーは、「1日や2日だと休んだほうがいいですが、1週間くらいならワーケーションも良いのでは」と話す。JALではすでにワーケーションを働き方改革の一環で導入しており、昨年度は176人が制度を利用したという。

ハワイ島でワーケーションについて説明するJALの東原さん=PHOTO: Tadayuki YOSHIKAWA/Aviation Wire

 「仕事の時間管理が難しくなったり、自己管理が大切になりますが、社内では理解が進んでいます」(東原さん)と、どの職種をターゲットにするかといった課題も整理されつつある。一方で、自己管理の面については、さぼる人は会社でもさぼっている傾向があるので、ワーケーション導入とは切り離して考えているようだ。

 同じくJALでワーケーションに携わる国際路線事業部リゾート路線グループの阿部元久アシスタントマネジャーは、「ハワイは一般的に4泊6日で過ごす方が多いのですが、米国人だと最低でも1週間。ワーケーションのサポートとして、長期滞在する特典を考えました」と話す。働いている間に家族はアクティビティを楽しむといった過ごし方を想定しており、家族の中でも別行動ができる時間帯をワーケーションの「ワーク」に充ててもらおうというものだ。

 ジャルパックの旅行商品として、ハワイ5泊以上の長期滞在を支援するダイナミックパッケージを用意。この一環で、BoxJelly x The Companyと提携し、同社が所有するホノルルのコワーキングスペースをJALのマイルで利用できるようにした。ホテルで同室では仕事がしにくかったり、リゾート地のホテルは仕事に不向きな家具しかないこともあるためだ。

 「ワーケーションならば、滞在中に日本との打ち合わせもできるので、長期の休みでも仕事に影響が出にくいです」(阿部さん)と、ゆっくり家族と過ごしながら仕事も進める休暇を提案する。

 今回の実証実験は12月3日から9日までの間に実施。3泊5日を基準として、3日から5日まで3パターンの出発日を設定し、期間内にメンバーが集合できる日を1日設けた。マウナケアビーチやコーヒー園など、観光スポットもまわった。

ハワイでのワーケーションについて説明するJALの阿部さん=PHOTO: Tadayuki YOSHIKAWA/Aviation Wire

休んだことがない人が反対

 メンバーが集まる日には、ディスカッションが行われた。平日は広告代理店で働き、週末は世界各地を旅するリーマントラベラー、東松寛文さんと、BoxJellyを手掛けるレオ・ロジャースさんがゲストとしてディスカッションに参加した。

ハワイ島でのMINDSのディスカッションで講演するリーマントラベラーの東松さん=PHOTO: Tadayuki YOSHIKAWA/Aviation Wire

 東松さんはもともと旅行に興味がなかったが、社会人3年目にロサンゼルスへ行ったことが転機になった。東松さんは「ロスではみんな人生を楽しんでました。短い休みでも海外に行けるとわかり、金曜夜に出発して月曜朝はそのまま会社に行けばいいと考えています」と、リーマントラベラーになった経緯を話した。

 ロジャースさんは横浜生まれハワイ育ちでハワイ在住。テレビ番組や雑誌などのコーディネーター業と並行してコワーキングスペースを運営しており、「テレビの撮影はプロジェクト単位で、休もうと思えば自分で決められます。子供3人の学校行事にも参加しています」と、仕事に縛られない生活を満喫している。

ハワイ島でのMINDSのディスカッションで講演するロジャースさん=PHOTO: Tadayuki YOSHIKAWA/Aviation Wire

 メンバーからは、気持ちの持ち方や周囲の理解に対する質問が出た。東松さんは「働き方は変えていなくて、休み方を変えました。今までは人から言われた締切で仕事をしていましたが、金曜は定時で帰ると決めました。主体性が生まれると、勝手に働き方が変わっていきます。自分を変えられる強い人はいい。変われない人に変わって欲しいです。昔の自分がそうでした」と、自分の中の考え方が大切だという。

 ロジャースさんは「米国では週5日働いていても、途中で寝ていたりする人もいます。仕事一本の人よりは、時間をうまく使える人が信頼されているように感じます」と、時間の長さよりも内容が重要ではと問いかけた。

 「日本では休んだことがない人が休暇を取ることに反対します。そういう人を対象に『おじさんハワイ』をやったらどうでしょう」と、東松さんは休暇を取らない管理職の“おじさん”をターゲットにした活動をすれば、考え方が変わるのではないかと提案した。「その場で思いつきで言ってしまいました」と笑う東松さんだが、やはり休暇を取るメリットの実体験が伴わないと、意識改革は難しいだろう。

休暇中の仕事を会社が認める

 2月17日、都内でMINDSの活動報告会が開かれ、東原さんはワーケーションについて報告した。ハワイでのワーケーションは開始前から5回アンケート調査を実施し、実施前後で意識の変化を調査した。この際、ワーケーションには参加しなかったMINDSのメンバーにもアンケートを実施し、両者でマインドの違いがどのように現れるかを比べた。

MINDSの活動報告会でワーケーションについて説明するJALの東原さん=20年2月17日 PHOTO: Tadayuki YOSHIKAWA/Aviation Wire

 普段と比べて仕事に対してストレスを感じたか、集中力が高まったか、仕事がはかどったかといった設問では、ワーケーションに参加していないメンバーの気持ちが5回の調査で毎回ほぼ同じだったのに対し、ワーケーション参加者はハワイで仕事した際にポジティブな回答をしていた。

 これに対し、ワーケーション実施前のアンケートから差が出たのがプライベートが充実しているかで、非参加者と比べて充実していると答える人が多かった。また、今の会社で働き続けたいかとの設問には、ワーケーション実施後に働き続けたい意向を示す参加者が増えていた。

ハワイ島のマウナケアビーチを散策するMINDSのメンバー=PHOTO: Tadayuki YOSHIKAWA/Aviation Wire

 東原さんは「ハワイに出掛けるということで気持ちがポジティブになったのだと思います。普段の同僚や後輩との関係が良好という回答も特徴的です」と話す。一方で、仕事とプライベートを分けたいかという設問に対する回答傾向は、ワーケーション非参加者の方が分けたいと答えた人の比率が高く、仕事とプライベートの境界線に比較的寛容な人が参加していたとも言えそうだ。

 「新しいことをやるというよりは、これまでも多くの人がやっていた休暇中の仕事を、制度として会社が認めることです」と東原さんは話す。休暇中に一定程度の仕事を認めることで、長期休暇を取りやすくしたり、育児や介護がある社員も退職せずに働き続けられ、結果として会社側は労働力を確保しやすくなるという考え方だ。

 そうは言っても、いまだに時代錯誤なFAXなる通信手段が重用され、コストや効率化に対する改善意識が希薄で保守的な文化の日本企業が多い中で、休暇と仕事を両立する考え方がすぐに浸透するとは思えない。

 後編では、MINDSのコミュニティーリーダーを務める日本マイクロソフトの山本築さんにお話を伺う。山本さんは同社の週休3日制導入の旗振り役だ。「MINDSは、ミレニアル世代だけが幸せになるものではありません」という山本さんは、働き方改革をどう考えているのだろうか。

(つづく)

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MINDS
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