ANAホールディングス(ANAHD、9202)傘下の貨物事業会社ANAカーゴ(ANA Cargo)は、東西に分かれていた羽田空港の国内線貨物施設を、全日本空輸(ANA/NH)が乗り入れる第2ターミナル側の東貨物地区に集約した。一方、羽田空港としては生鮮貨物をトラックと受け渡す動線が非効率的になっており、貨物上屋などを管理する空港施設(8864)も東西の貨物地区再編を課題としていた。

ANAカーゴの羽田東貨物地区の新施設に導入された計量機能を備えた電動フォークリフト=PHOTO: Tadayuki YOSHIKAWA/Aviation Wire
2004年12月1日に第2ターミナルが開業するまでは、ANA便も第1ターミナルに乗り入れていた。このため、ANAカーゴが西貨物地区で使用していた貨物上屋には「マテハン(マテリアルハンドリング)」と呼ばれる物流の作業を効率化する大掛かりな設備が導入され、コロナで旅客便の運航が激減した2020年12月に停止するまで、28年にわたり使用してきたという。2021年3月には社内の基幹システムが刷新され、貨物の搭載プランなどさまざまな業務の集中コントロールが可能になった。
東貨物地区の新施設は2月6日から本格稼働。E-4棟と呼ばれる上屋内に建設した事務所にはカウンターやバックオフィス機能を設けた。これまでは搬入と搬出で分けていた貨物の動線も、3月1日からは貨物代理店ごとに切り替えるなど、東地区への移転に伴う刷新作業が完了した。また、カウンターで受託する際の決済は、2022年10月からキャッシュレス化し、現金決済はやめたという。
また、空港施設が東地区に所有するアークビルの6階を工事し、事務所、会議室、オフィス、休憩スペースを整備した。

ANAカーゴの羽田東貨物地区の新施設=PHOTO: Tadayuki YOSHIKAWA/Aviation Wire

ANAカーゴの羽田東貨物地区の新施設=PHOTO: Tadayuki YOSHIKAWA/Aviation Wire
新施設では電動フォークリフトが貨物を運び、保冷庫や動物保管庫、ロールボックスパレットを備え、需要が増えている動物保管庫は2倍に拡充した。福岡空港ではすでに稼働していた貨物の重さを計量できる5台の計量フォークリフトも、ANAの羽田国内線では初導入となった。計量フォークのデータはオフィス側と連携しており、貨物を運ぶ作業と計量を同時にできるようにしただけでなく、データ管理の効率化も図った。ANAカーゴが羽田で扱う国内貨物量は、1日600-700トン程度だという。

ANAカーゴの末原聖常務=PHOTO: Tadayuki YOSHIKAWA/Aviation Wire
ANAカーゴの末原聖常務は「小口の貨物も東地区に集約し、フォークリフトの動線も短くなった。貨物代理店の上屋に横付けしてANAカーゴの上屋に引き込むようにしたが、近くなったからこそ可能になった」と話す。また、第2ターミナルに隣接する東地区から、一番遠いスポット(駐機場)である69番まで運ぶ場合「実測で2分ぐらい違ったが、肌感覚だと5分くらい差がある」と、貨物上屋から機側まで運ぶ時間も短縮できたという。また、これまで西地区から東地区へ貨物を運ぶ場合、首都高速湾岸線を横断する空港内の橋を渡るため、渋滞が課題になっていたとい、東地区への集約でこうした問題も解決できた。
使用する上屋を圧縮できたことで、賃料も抑えられ、省人化も進んだ。「無理のない範囲でどう効率化するかと、全従業員への周知が難しい」(末原常務)と、社内のSNSを活用した情報発信や、定例ミーティングで移転プロジェクトの進捗などを共有した。
末原常務は「内際接続の時間は90分だが、これを割っても接続できるようにチャレンジしていきたい。便間の接続性、トラックと航空便の接続性を上げていき、顧客の待ち時間も短縮したい」と抱負を語った。
ANAの国内線は、2023年度にはコロナ前の旅客数にほぼ戻る見通し。「貨物も元の状態に戻したいが、コロナ前と一緒ではなく、効率的にしてきたい」(末原常務)という。
*写真は10枚。

ANAカーゴの羽田東貨物地区の新施設=PHOTO: Tadayuki YOSHIKAWA/Aviation Wire

ANAカーゴの羽田東貨物地区の新施設=PHOTO: Tadayuki YOSHIKAWA/Aviation Wire

ANAカーゴの羽田東貨物地区の新施設=PHOTO: Tadayuki YOSHIKAWA/Aviation Wire

ANAカーゴの羽田東貨物地区の新施設に設置された保冷庫=PHOTO: Tadayuki YOSHIKAWA/Aviation Wire

ANAカーゴの羽田東貨物地区の新施設に設置された保冷庫=PHOTO: Tadayuki YOSHIKAWA/Aviation Wire

ANAカーゴの羽田東貨物地区の新施設=PHOTO: Tadayuki YOSHIKAWA/Aviation Wire
西貨物地区の移転跡地には生鮮センター
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