官公庁, 機体, 解説・コラム — 2013年4月18日 17:34 JST

JAXA、ハイブリッド風洞ダーウィン完成 調布航空宇宙センター

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 宇宙航空研究開発機構(JAXA)は4月17日、東京・調布の調布航空宇宙センターにこのほど完成したデジタル/アナログ・ハイブリッド風洞「DAHWIN(ダーウィン)」を報道関係者に公開した。

ダーウィンを説明するJAXA風洞技術開発センターの渡辺センター長=4月17日 PHOTO: Tadayuki YOSHIKAWA/Aviation Wire

遷音速風洞内の模型=4月17日 PHOTO: Tadayuki YOSHIKAWA/Aviation Wire

 ダーウィンは通常の風洞実験(アナログ風洞)にスーパーコンピューターによるシミュレーション解析を組み合わせたもの。同センターにある「2メートル×2メートル 遷音速風洞」はマッハ1前後の早さ(遷音速)で飛行する航空機の空力特性の把握に使用されている。マッハ0.1から1.4の環境を作り出し、長時間連続で試験が行える。実際に空気を流して行う実験は信頼性が高い反面、風洞で使う模型を作るだけで3カ月かかり、模型1機あたり2500万円から1億円とコストが高くつくのが難点だ。また、風洞の壁や模型を支える支持装置があるため、実際に空を飛ぶ状態とは異なる点も考慮しなければならない。

 コンピューター上で空気の流れをシミュレーションするデジタル風洞は、コストも安い上に得られる情報量も多い。しかし、機体をシミュレーションする物理モデルの違いが結果の細かな差につながるなど、アナログ風洞と比べると信頼性が低い面も見られる。

 JAXAでは既存のアナログ風洞とスパコンを融合したハイブリッド風洞として、2008年から12年までの5年間に6億円をかけてダーウィンを開発。アナログ風洞で得たデータに、壁や支持装置の影響がないデータをデジタル風洞から得て反映することで、航空機の設計の精度を向上できるという。また、インターネット経由で風洞実験に参加できるようになるため、従来1カ月かかっていた修正をリアルタイムに行えるなど、高効率化や利便性の向上につなげられる。

 また、アナログ風洞で用いる模型も、デジタル風洞で事前に形状を試行錯誤できるため、風洞実験の期間短縮にも貢献する。風洞施設のスケジュールは年度頭にはほぼ埋まってしまうため、実験のやり直しを未然に防ぐことも重要だ。JAXA風洞技術開発センターの渡辺重哉センター長は「風洞実験前にシミュレーションが行えるようになり、やり直しが減った」と話す。

 渡辺センター長によると、今後は精度の向上やJAXAの実験用航空機「飛翔」との連携などを行っていくという。

 JAXAでは21日に調布航空宇宙センターの一般公開を行う。ダーウィンも公開するほか、災害監視無人機システムが初公開される予定。時間は午前10時から午後4時までで入場は午後3時半まで。入場無料。

遷音速風洞内の模型は遠隔操作が行える=4月17日 PHOTO: Tadayuki YOSHIKAWA/Aviation Wire

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航空本部(JAXA)

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【お知らせ】
21日の一般公開ではダーウィンも追加されました。(2013年4月19日 9:35 JST)

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