エアライン, 業績, 需要, 需要予測 — 2019年6月2日 13:03 JST

IATA、航空各社の純利益予想75億ドル下方修正 第75回総会開幕、737MAXにも言及

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 IATA(国際航空運送協会)は現地時間6月2日、世界の航空会社による今年の純利益予想について、280億ドル(約3兆317億円)になるとの見通しを示した。前回2018年12月の発表から75億ドル引き下げた。燃油費の上昇や米中貿易戦争の激化など、世界的な貿易環境の大幅な悪化が、航空会社のビジネスに悪影響を及ぼしている。

ソウルで開幕した年次総会で講演するIATAのジュニアック事務総長=19年6月2日 PHOTO: Tadayuki YOSHIKAWA/Aviation Wire

ソウルで開幕したIATAの第75回年次総会=19年6月2日 PHOTO: Tadayuki YOSHIKAWA/Aviation Wire

 IATAによると、運航コストが前年から7.4%増加して8220億ドルになる一方で、収益は6.5%増の8665億ドルにとどまる見通し。ブレンド原油の年間平均価格は1バレルあたり70ドル、ジェット燃料は87.5ドルを想定。燃油費が営業費用に占める割合は、1.5ポイント上昇して25%に達すると予測している。

 今年の旅客数は、4.6%増の45億7900万人と予想。座席供給量を示すASK(有効座席キロ)は、航空会社が成長率の鈍化に対応するため供給を絞ることから、2.2ポイント低下し4.7%、ロードファクター(座席利用率)は0.2ポイント上昇して82.1%を見込む。

 貨物量は関税引き上げの影響により、前年の6330万トンと比べて横ばいの6310万トンを見込む。

 地域別では、北米とラテンアメリカを除く全地域で、収益性が低下すると予測した。北米の航空会社は、純利益が3.4%増の150億ドルとなる見通しで、1人当たりの純利益は14.77ドル、純利益率は5.5%を見込んでいる。

 第2位は欧州の81億ドル(13.8%減)、第3位がアジア太平洋の60億ドル(22.1%減)となる見通し。損益分岐点となるロードファクターは、北米が59.5%、欧州が70.2%、アジア太平洋が69.5%と予測した。

 航空会社に引き渡される航空機は、経年機の置き換えを含めて1750機以上と予想。金額ベースでは約800億ドルで、墜落事故が相次いだボーイング737 MAXの状況により変化するとの注記を付けた。航空会社が運航する航空機の総数は3万機台に達し、3万697機(1064機増)となる見込み。

 ソウルで予測を発表したIATAのアレクサンドル・ド・ジュニアック事務総長兼CEO(最高経営責任者)は、「旅客需要は堅調だが、貿易戦争と保護主義的措置が貨物事業に悪影響を及ぼしている。燃油費や人件費、インフラストラクチャーのためのコスト上昇が利益を圧迫している」と分析した。

 IATAは3日まで、ソウルで航空各社首脳が集まる第75回AGM(年次総会)を開催している。ジュニアック事務総長は737 MAX問題にも触れ、「規制当局間のいかなる争いも、誰の利益にもならない」と述べ、改修後の737 MAXの安全性を航空当局が評価する際、不毛な主導権争いに陥らないよう、自制を求めた。

 今回のAGMは大韓航空(KAL/KE)がホストを務める。開会式では、今年4月8日に死去した同社の趙亮鎬(チョ・ヤンホ)前会長兼CEO(最高経営責任者)に黙祷が捧げられた。

IATAの第75回年次総会の開会式で4月に亡くなった大韓航空の趙亮鎬前会長に黙祷を捧げる参加者=19年6月2日 PHOTO: Tadayuki YOSHIKAWA/Aviation Wire

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