エアライン, 官公庁, 空港, 解説・コラム — 2026年5月22日 20:05 JST

中堅航空4社への出資規制廃止 20%超で羽田発着枠回収=国交省有識者会議

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 国土交通省航空局(JCAB)は5月22日、最終回となる6回目の「国内航空のあり方に関する有識者会議」を第3回「羽田発着枠配分基準検討小委員会」との合同会議として開き、国内線ネットワーク維持に向けた報告書案を示した。約1年にわたる議論を経た報告書案の内容に対し、有識者の委員から大きな変更を求める声はなく、1週間程度をめどに公表される見通し。

 スカイマーク(SKY/BC、9204)など、規制緩和により1990年代以降誕生した「特定既存航空会社(旧・新規航空会社)」と呼ばれる中堅4社に対する大手航空会社の出資規制は廃止が適当とし、出資比率が20%を超える場合などは、羽田発着枠を一定範囲で回収・再配分する方向を盛り込んだ。

中堅4社への出資規制廃止が盛り込まれた国交省「国内航空のあり方に関する有識者会議」の報告書案=PHOTO: Tadayuki YOSHIKAWA/Aviation Wire

 報告書案は、国内線の厳しい事業環境を踏まえ、航空会社間の競争を原則としつつ、路線特性に応じた協調を容認する考え方を示した。2024年度には国内線事業の収支が実質的に赤字に転落したとし、航空会社間のダイヤ調整や、曜日運航などの供給量調整、系列を超えた航空会社間の協業、過度な安売りなどの運賃監視、国内線利用が2.5%にとどまるインバウンド(訪日)旅客の取り込み、地域航空維持などを柱に据えた。

 国内線は、新型コロナの影響とその後の需要構造変化で厳しい状況にある。オンライン会議の普及で高単価の出張需要が減少する一方、機材や部品調達、海外重整備などの外貨建て費用に加え、燃油費、整備費、人件費も上昇しているとした。

—記事の概要—
出資規制廃止と羽田発着枠回収
供給調整と運賃監視
ATR機の運航品質改善が課題

出資規制廃止と羽田発着枠回収

 国内の中堅航空会社を指す「特定既存航空会社」は、スカイマーク(SKY/BC、9204)、スターフライヤー(SFJ/7G、9206)、エア・ドゥ(ADO/HD)、ソラシドエア(SNJ/6J)の4社。規制緩和により1990年代以降に参入した旧・新規航空会社を指す。全日本空輸(ANA/NH)を傘下に持つANAホールディングス(ANAHD、9202)は、直接出資や共同持株会社を通じ、4社すべてと実質的な資本関係がある。

特定既存航空会社のエア・ドゥ(手前)とソラシドエア=PHOTO: Yusuke KOHASE/Aviation Wire

 特定4社への出資規制は、大手航空会社からの出資を実質20%までに制限してきた。新規参入航空会社の育成過程で、羽田発着枠を優先配分してきた政策趣旨を損なわないための措置だったが、優先配分終了から約15年が経過した。

 報告書案は、この規制が航空会社間の協業やM&Aを含む経営判断の自由度を制限し、経営上の選択肢を狭めていると指摘した。特定社を独立した航空会社と認め、会社間の協業やM&Aの自由度を高めるため、出資等規制の廃止が適当だとした。

 出資規制廃止後、大手による特定社への出資比率が20%を超える場合などは、競争環境維持の観点から羽田発着枠を一定程度回収する。回収規模は必要最小限とし、大手から出資拡大などを受ける特定社の保有枠の10%を超えない範囲とした。回収した発着枠は、出資比率拡大などに関わらない特定社のみに再配分する。

 発着枠の区分として設けられてきた「特定既存優遇枠」も廃止が適当とした。特定4社すべてが大手航空会社の傘下となるなど、経営統合で競争性が過度に阻害される状況が生じた場合は、発着枠の回収・再配分の考え方を再検討する。次回の「混雑空港使用許可」の更新は2029年だが、それまでの間も競争環境を定期的に確認し、必要な措置を講じるべきだとした。

 22日の委員会で、委員のひとりである東京科学大学(旧東京工業大学)の花岡伸也教授は、出資規制と羽田発着枠の回収に踏み込んだ点を、構造的変化に対応する大きな見直しと評価した。羽田発着枠の扱いは航空政策上の大きな論点だったとし、各社が経営判断しやすくなるとの見方を示した。

供給調整と運賃監視

 ネットワーク(路線網)維持策では、複数社が同じ時間帯に集中するダイヤの調整も取り上げた。利用者利便向上や需要掘り起こしの観点から、各社が過度に重複しないダイヤ設定が望ましいとした。一定の要件を満たせば、事業者間のダイヤ調整は原則として独占禁止法上問題とはならず、実施余地があるとの考え方を示した。

コロナで状況が大きく変わった国内線。写真は政府が初の緊急事態宣言を発令して一夜明けた羽田空港(空撮)=20年4月8日 PHOTO: Tadayuki YOSHIKAWA/Aviation Wire

 便数調整や運航社集約など、供給量を含めた調整も選択肢に挙げた。供給量は事業者にとって重要な競争手段で、原則として独占禁止法上問題となるが、航空法第110条第1号は国内線に関する独占禁止法の適用除外を規定している。将来の見通しを含めて赤字で、事業継続が困難と見込まれる重要路線での活用を検討する。

 対象は、航空路があることで2地点間の同日往来が可能になる路線であることや、幹線のような高需要路線ではないことも条件に挙げた。個別路線で実施する場合は、航空法に基づく認可と、公正取引委員会への協議が必要になる。

 航空会社間の機材融通では、航空法第113条の2に基づく「運航業務の管理の受委託」の活用を促す。国内路線で活用例のない「ウェットリース」についても、委託者と受託者の責任を明確にし、受託者の運航・整備規程や業務体制について、必ずしも委託者と同一のものを求めない考え方を示した。

 運賃面では、頻繁なセール販売を中長期的には適当とは言えないとした。現行のセール販売自体はルール上問題はなく、新規需要を掘り起こすものであれば有効だとした。一方で、頻繁に実施すると利用者の期待運賃を下げ、コストが上昇局面にある国内航空では持続可能性の観点から好ましくないとした。

 運賃の下限監視では、略奪的運賃の判断基準も見直す。現行基準は、航空会社が恒常的に販売する運賃が変動費を下回るかどうかをみている。報告書案は、運航に連動する費用について、固定費に含まれるものであっても基準に含めるべきではないかとの議論があったとした。

 また、22日の委員会では、運賃のモニタリングを6月から始める方針も航空局が示した。

ATR機の運航品質改善が課題

 需要獲得策では、インバウンド旅客の国内線利用促進を挙げた。訪日客は増加しているが、国内移動手段として航空が十分活用されていないとし、地方分散の観点から国内線利用を促す。航空局によると、2024年推計で国内線を利用するインバウンド旅客は2.5%にとどまるという。

地域路線を支えるATR製ターボプロップ機。運航品質改善が課題だ=PHOTO: Tadayuki YOSHIKAWA/Aviation Wire

 地域航空では、海外への販路確保や直接的なマーケティングを自力で行うのは難しいとして、国や地域による伴走支援の必要性を示した。2026年度から国際観光旅客税を活用した補助事業の対象が国内線へ拡充され、地方空港間連携プロモーション経費などへの支援も新設された。

 委員を務める慶應義塾大学の加藤一誠教授は、国内線がなくなれば、地方空港で国際線を受け入れるためのグランドハンドリング体制の維持も難しくなると指摘。地域航空についても、市場任せでは維持が難しいとの認識を示した。

 需要に応じた供給量の調整では、曜日運航や期間減便も選択肢に挙げた。航空会社からも国内線で曜日運航を積極的に活用したいとの声があり、空港の発着枠の有効活用にも留意しながら対応を検討すべきだとした。

 報告書案はこのほか、リージョナル機やターボプロップ(プロペラ)機の積極活用、地域航空を担う仏ATR製ターボプロップ機の運航品質改善、地域航空への乗継需要喚起、長距離国内路線の就航に制限がある空港ルールの見直し、定時性向上なども盛り込んだ。

 航空局は、最終報告書を1週間後をめどに公表する方針を示した。有識者会議の枠組みを活用し、1年後をめどに施策の進捗を確認する会議を開く。

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国土交通省

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