エアバス, エアライン, 機体, 空港, 解説・コラム — 2026年4月20日 11:55 JST

なぜANA A380は羽田へ降りず中部に? 特集・超大型機阻む日本最大空港の現実

By
  • 共有する:
  • Print This Post

 全日本空輸(ANA/NH)のエアバスA380型機「FLYING HONU(フライング・ホヌ)」が、成田空港の滑走路閉鎖の影響で4月16日、中部空港(セントレア)へダイバート(目的地変更)した。羽田空港へダイバートした便もある中、飛行時間で40分ほどの距離にある中部へ向かったのは、当然ながら理由がある。

羽田空港に着陸するエアバスのA380の飛行試験機=10年10月15日 PHOTO: Tadayuki YOSHIKAWA/Aviation Wire

 羽田は第3ターミナル(旧称国際線ターミナル)にA380を駐機できるスポット(駐機場)とPBB(搭乗橋)があり、乗り入れ自体は不可能ではないものの、2010年10月の開業以来、商業運航便が就航したことはない。

 まずは構造上の問題だ。走行可能な誘導路の制約があり、4本ある滑走路のうち、沖合にあるD滑走路は「連絡誘導路橋梁部」と呼ばれる橋を渡る構造上、乗客や貨物を載せていない状態でないと事実上通れない。そして、後続機に影響を及ぼす「後方乱気流」も、A380による羽田発着の定期便が実現していない理由の一つだ。

 ANAのA380が就航する前の2017年7月に、当紙は「なぜA380は羽田に就航できないのか 特集・訪日4000万人達成を考える」という特集記事を掲載した。2週にわたり当紙の週間ランキング1位となり、注目度の高い話題だったが、今回のダイバートをきっかけに、改めてなぜA380が羽田へ就航できないのかを整理したい。

—記事の概要—
制約多い羽田
条件そろう中部
後継はA350-2000や777-10?

制約多い羽田

 羽田空港へA380が乗り入れできないのか、と問われれば乗り入れは可能だ。しかし、定期便を運航できることと、ダイバート先として一時的に受け入れること、緊急時に着陸できることは、大きく意味が異なる。A380を日常的に運航するのは難しいのが羽田だ。

羽田空港に初飛来したA380の飛行試験機=10年10月 PHOTO: Tadayuki YOSHIKAWA/Aviation Wire

 A380の全幅は79.8メートルと、航空各社が長距離国際線の主力としてきたボーイング777-300ER型機と比べて15メートル広い。この機体の大きさが、空港でのさまざまな制約につながっている。

 前述のように、A380は走行できる誘導路が限られている。第3ターミナル周辺はほぼ制約がないものの、第1・第2ターミナルにもっとも近い誘導路(W-TWY、E-TWY)や、エンジン試運転エリア付近の誘導路(R-TWY)など、「ジャンボ」の愛称で親しまれる747-8であれば走行できるところもA380は走行できず、誘導路も混雑する羽田で定期便を運航するのは厳しい。

羽田空港D滑走路桟橋部の橋脚=PHOTO: Tadayuki YOSHIKAWA/Aviation Wire

 使用できる滑走路も限定される。D滑走路(RWY05/23)へ向かう連絡誘導路橋梁部は、最大400トンまでの総重量制限がある。乗客を乗せていないフェリーフライトであればA380も走行できるが、仮に商業運航となると、現状はC滑走路(RWY16L/34R)による離着陸にほぼ制約される。第3ターミナルがオープンする前の2010年10月に、エアバスの試験機が飛来した際は、離着陸ともにC滑走路(RWY34R)を使った。

 後方乱気流の問題は、前回2017年に記事を掲載した時点では、国連の専門機関であるICAO(国際民間航空機関)の取り決めは、777のような大型機は後続機との間隔を3海里(約5.6キロ)以上取るよう求めているのに対し、より大型のA380は2倍の6海里となっていた。

 現在は見直しが行われ、後続機の機種に応じて5海里、7海里、8海里と異なり、A380の真後ろが大型機であれば1海里詰めることが可能になった。一方で、日本の国内線は機材の小型化が進んでおり、羽田空港への定期便乗り入れとなると、依然として課題になるテーマだと言える。

条件そろう中部

 このように、A380は超大型機ゆえに走行できる誘導路をはじめ、多くの制約がある。空港の混雑状況を見ても、制約の多い羽田で“珍客”をダイバート先として安易に受け入れることは現実的ではない。

遊覧飛行を終えて中部空港に着陸するANAのA380 2号機=22年4月(読者提供)

 首都圏に近く国際線を受け入れ可能な空港で、新幹線など代替の地上交通機関の確保が比較的容易であるといった条件を重ねていくと、中部はもっとも現実的な選択肢だ。

 実際、4月16日にANAのA380が中部へダイバートした際、乗客379人(幼児6人含む)と乗員22人(パイロット2人、客室乗務員20人)の計401人が乗ったNH183便(A380、JA381A)は、中部で乗客に降りてもらい、地上交通機関に振り替えた。乗客225人(幼児3人含む)と乗員21人(パイロット2人、客室乗務員19人)の計246人が乗ったNH181便(A380、JA382A)は、成田へ再出発した。

後継はA350-2000?

 今回のように、成田へ向かっていたA380が中部へダイバートしたことが、羽田へのA380乗り入れの議論再燃につながるかというと疑問だ。A380は製造が終了しており、2021年12月に最大顧客であるエミレーツ航空(UAE/EK)へ最終号機(MSN272、登録記号A6-EVS)が引き渡された。日系のA380はANAの3機のみで、路線も成田-ホノルル線に限定している。

ホノルルのダニエル・K・イノウエ空港の滑走路に着陸したANAのA380=19年7月 PHOTO: Tadayuki YOSHIKAWA/Aviation Wire

 かつては日本に就航する海外の航空会社で、成田などへA380による定期便を運航していた航空会社も、コロナを境に保有機材や運航計画の見直しで数が減っている。つまり、今後日本を発着するA380が大幅に増えることはない。

 このところの中東情勢悪化で燃料確保も課題になる中、エンジンが4基ある「4発機」は退役がニュースだ。ルフトハンザ ドイツ航空(DLH/LH)は延命を重ねてきたA340-600を10月で全機退役、747-400も2027年に退役させる方針を打ち出している。

 エミレーツはドバイ航空ショーが開かれた2025年11月に、ボーイングが開発中の次世代大型機777-9(777X)を65機追加受注したと発表するとともに、777Xファミリーの未発表機「777-10」の導入を視野に入れていることも明かした。

 A380を世界最多の123機発注したエミレーツにとって、500席クラスの後継機探しは大きなテーマ。400席クラスの777-9はまだ小さく、さらなる大型機を求めている。エアバスも、かつてはA350-1000の胴体をストレッチした「A350-2000」とも呼ばれる機体を航空会社に提案していることを認めており、エミレーツによる777-10の言及により、双発の超大型機が注目を浴びている。

 一時は水面下で政治的な問題にもなっていたA380の羽田就航問題。4発機時代の終焉とともに、現状のまま着地しそうだ。

関連リンク
Airbus

2017年の特集
なぜA380は羽田に就航できないのか 特集・訪日4000万人達成を考える(17年7月20日)

A380後継問題
777-10・A350-2000はどんな新機種? 特集・A380真の後継機現れるか(25年11月24日)

エミレーツ航空のA380
エミレーツ、A380を2040年代まで延命 ロールス・ロイスとエンジン整備契約(25年11月26日)
A380最終号機、エミレーツ航空に納入 14年で完納(21年12月17日)

ANAのA380
ANA、A380就航 空飛ぶウミガメ、成田からハワイへ(19年5月24日)
ANAのA380、ホノルルからも初便出発(19年5月25日)
ホノルルにA380到着 ANA「空飛ぶウミガメ」ハワイ初飛来、地上施設確認(19年4月18日)
ANA、A380「フライング・ホヌ」成田到着 片野坂社長「乗った瞬間ハワイ感じられる」(19年3月21日)
ANA、A380初受領 総2階建て、5月から成田-ホノルル線(19年3月21日)

  • 共有する:
  • Facebook
  • Twitter
  • Print This Post