官公庁 — 2025年12月24日 18:10 JST

24年度、航空事故6件 重大インシデント3件=国交省

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 国土交通省航空局(JCAB)が発表した、2024年度の航空事故や重大インシデントの発生状況をまとめた「航空輸送の安全にかかわる情報」によると、航空事故は6件、航空事故につながりかねない「重大インシデント」は3件、安全上のトラブルは898件だった。

—記事の概要—
航空事故
重大インシデント
安全上のトラブル
事業者別報告件数
機種別報告件数

航空事故

24年度に航空事故が3件発生したJAL。写真はシアトルでデルタ航空機と接触事故を起こした787-9 JA868J(資料写真)=25年1月 PHOTO: Tadayuki YOSHIKAWA/Aviation Wire

 6件発生した航空事故は、2024年4月に成田空港まで南東約150キロの上空で、5月に熊本・阿蘇市で、7月に対馬空港で、9月にソウルの東約200キロ地点の上空で、今年1月にロサンゼルスの北西約100キロ地点の上空で、2月にシアトル・タコマ国際空港で、それぞれ1件ずつ起きた。

 成田付近の事故は4月1日に発生。日本航空(JAL/JL、9201)のメルボルン発成田行きJL774便(ボーイング787-8型機、登録記号JA843J)が午後3時30分ごろ、成田空港まで南東約150キロの上空を飛行中に突然大きな揺れに遭遇した。乗客146人(幼児1人含む)と乗員11人(パイロット3人、客室乗務員8人)の計157人のうち客室乗務員4人が負傷し、うち1人の骨折、残り3人は捻挫(ねんざ)と診断された。

 阿蘇市の事故は5月13日に発生。阿蘇市内の場外離着陸場を出発した匠航空のヘリコプター、ロビンソンR44Ⅱ型機(JA718W)が午前11時58分ごろ、同離着陸場への着陸への進入中に後方から異音が発生した。エンジンの回転数が低下したため空き地に着陸し、その際に強めの接地となったことから搭乗者3人全員が負傷した。

 対馬空港での事故は7月20日に発生。オリエンタルエアブリッジ(ORC/OC)の福岡発対馬行きOC79便(デ・ハビランド・カナダDash 8-400型機、JA858A)が午前8時11分ごろ、対馬空港で着陸滑走中にと衝突し、機体が損傷した。

 ソウル付近の事故は9月4日に発生。JALの北京発羽田行きJL22便(787-9、JA863J)が午後6時57分ごろ、ソウルの東約200キロ地点の上空を飛行中に大きな横揺れに遭遇した。乗客121人(幼児1人含む)と乗員11人(パイロット2人、客室乗務員9人)の計132人のうち客室乗務員1人が右の肋骨(ろっこつ)を骨折した。

 ロサンゼルス付近の事故は、今年1月8日に発生。全日本空輸(ANA/NH)の羽田発ロサンゼルス行きNH106便(787-9、JA892A)がロサンゼルス空港から北西約100キロの高度約1万4000フィート(4267.2メートル)上空を飛行中に予期せぬ揺れに遭遇し、乗客185人(幼児1人含む)と乗員11人(パイロット3人、客室乗務員8人)の計196人のうち、客室乗務員5人が負傷。このうち1人が尾骨を骨折した。

 シアトルでの事故は、現地時間2月5日に発生。JALの成田発シアトル行きJL68便(787-9、JA868J)が着陸後、誘導路を走行中に駐機中のデルタ航空(DAL/DL)機の垂直尾翼と接触した。デルタ機が重大な損傷を受けたことから、NTSB(米国家運輸安全委員会)は航空事故に認定。JL68便の乗客172人(幼児ゼロ)と乗員13人(パイロット3人、客室乗務員10人)の計185人にけがはなかった。

重大インシデント

 3件発生した重大インシデントは、4月に米子空港進入中に、6月に和歌山上空で、11月に新千歳空港で、それぞれ起きた。

 米子での重大インシデントは4月7日に発生。ANAの羽田発米子行きNH389便(737-800、JA69AN)が着陸のため進入態勢に入っていた際、機体が低高度になりGPWS(対地接近警報装置)が作動し、着陸をやり直した。同便はANAグループで地方路線を担うANAウイングス(AKX/EH)の運航便だった。

 和歌山上空での重大インシデントは6月22日に発生。ANAの長崎発中部行きNH372便(737-800、JA88AN)が午前10時30分ごろ、和歌山県みなべ町上空を飛行中に客室の気圧が低下するトラブルが発生し、警報が作動した。乗客98人(幼児なし)と乗員6人(パイロット2人、客室乗務員4人)の計104人のうち、乗客7人と客室乗務員4人の計11人が耳の違和感や倦怠(けんたい)感を訴えた。同便はANAウイングスの運航便だった。

 新千歳空港の重大インシデントは11月28日に発生。スプリング・ジャパン(旧春秋航空日本、SJO/IJ)が運航するヤマト運輸のエアバスA321ceo P2F型貨物機(JA82YA、成田発新千歳行きIJ407便)が午前0時ごろ、同空港のB滑走路(RWY01R)へ着陸する際に、滑走路に工事用車両1台が進入するトラブルが発生した。車両は誘導路の改良工事のため作業箇所へ走行しており、管制官の許可を受けずに滑走路へ進入した。

安全上のトラブル

 898件報告があった「安全上のトラブル」は、「機器からの指示による急な操作等」が184件で最多。「航行中の構造損傷」が3件、「航行中のシステム不具合」が176件、「航行中の非常用機器等の不具合」が22件、「運用限界の超過、経路・高度の逸脱」が91件、「運航規程関連」が62件、「整備規程関連」が90件、「その他」が270件だった。

 安全上のトラブルを内容別で分類すると、「機材不具合」は268件、「ヒューマンファクター事案」は281件、「回避操作」は159件、「発動機の異物吸引による損傷」は27件、「部品脱落」は6件、「危険物の誤輸送等」は109件、「アルコール事案」は27件、「その他」は21件だった。

 281件あったヒューマンファクター事案の内訳は、運航乗務員が95件、客室乗務員が20件、整備従事者が102件、地上作業員が53件、製造が11件、その他はゼロだった。

 159件あった回避操作の内訳は、TCAS(航空機衝突防止装置)によるRA(回避指示)は140件、GPWSによる回避操作は19件だった。

 27件あったアルコール事案の内訳は、運航乗務員が15件、客室乗務員が1件、運航管理者等が1件、整備従事者が10件だった。

事業者別報告件数

 事業者別の報告件数は運航便数の多さに比例し、大手2社の件数が目立つ。JALグループが300件、ANAグループが241件だった。

 このほか、日本貨物航空(NCA/KZ)が39件、スカイマーク(SKY/BC、9204)が37件、エア・ドゥ(ADO/HD)が20件、ソラシドエア(SNJ/6J)が26件、スターフライヤー(SFJ/7G、9206)が25件、ピーチ・アビエーション(APJ/MM)が48件、ジェットスター・ジャパン(JJP/GK)が26件、スプリング・ジャパンが18件、アイベックスエアラインズ(IBEX、IBX/FW)が41件、フジドリームエアラインズ(FDA/JH)が24件、ORCが11件、天草エアライン(AHX/MZ)が4件、トキエア(TOK/BV)が17件、新中央航空(CUK)が3件、東邦航空が1件、「その他航空運送事業者」が26件、「航空機使用事業者」が52件だった。

機種別報告件数

 機種別では、737-700/-800が204件、747が39件、767が60件、777が38件、787が162件、A320が129件、A350が27件、A380が26件、DHC-8-200が4件、DHC-8-400が38件、E170/E175‏/E190が57件、CRJ700が41件、ATR42/72が36件、Do228が3件、「その他航空運送事業機」が43件、「航空機使用事業機」が52件だった。

 JCABは今年7月14日に、第37回航空安全情報分析委員会(委員長・河内啓二東京大学名誉教授)を開き、2024年度の安全情報について審議。12月に開かれる次回の委員会では、2025年度上期に報告された安全情報について評価・分析などを行う。

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国土交通省

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