モバイルバッテリーの機内持ち込み方法が、7月8日から変わる。海外で乗客が持ち込んだモバイルバッテリーが火元となった火災が発生していることから、機内では頭上の手荷物収納棚(オーバーヘッドビン)へ収納せず、手元で状態を確認できるよう乗客に求めるもので、国土交通省航空局(JCAB)が航空各社に要請した。

モバイルバッテリーの機内持ち込み方法が変わる航空各社=PHOTO: Tadayuki YOSHIKAWA/Aviation Wire
日本航空(JAL/JL、9201)や全日本空輸(ANA/NH)など国内の航空会社19社が加盟する定期航空協会(定航協)と連携して対応していく。一方、現在のところ法的な禁止ではなく、機内の安全性向上に向けた「お願い」として実施することから、乗客が航空会社の要請に抵抗し、結果として出発が遅れるなどのトラブルに発展する可能性があり、現場からは罰則のない今回の決定を不安視する声も聞かれた。
航空各社では、8日から空港や機内でアナウンスや掲示などを始め、モバイルバッテリーを手荷物収納棚には入れず、状態を常に確認できる場所に置くよう、乗客に呼びかけていく。
国交省によると、モバイルバッテリーの発煙・発熱・膨張が国内線で過去1年間に複数発生していたことを確認。いずれも乗客の手元に置かれていたため、客室乗務員が速やかに対応できたことで、大事故には至らなかったという。
大手2社では、JALは客室乗務員が使う耐熱手袋と耐熱袋を2017年から導入済み。ANAは「Fire Resistant Bag(耐火バッグ)」を2024年4月から導入している。
航空法第86条では、モバイルバッテリーを含むリチウムイオン電池について、貨物室に預ける「受託手荷物」への収納を禁じている。予備のバッテリーは、端子への絶縁措置などショート(短絡)を防ぐ対策を求めており、リチウムイオン電池を危険性の高いものとして扱っている。持ち込み数にも制限があり、100ワット時(Wh)超160Wh以下は2個まで、それ以上のものは持ち込み不可としている。
海外では今年1月に、エアプサン(ABL/BX)の釜山発香港行きBX391便(エアバスA321型機、登録記号HL7763)の機内で、際、乗客のモバイルバッテリーが火元とみられる火災が出発前に発生。天井が焼け落ち、機体は運航不能になった。この事故を受け、海外の一部航空会社では飛行中のバッテリー使用や充電を禁じる動きも出ている。
乗客への「要請」として実施
・モバイルバッテリー、手荷物棚に収納“禁止” 国交省が安全対策強化(25年7月1日)
国内大手2社の扱い
・モバイルバッテリーの機内使用、大手2社は現状維持 耐熱袋などで安全対策(25年3月14日)
モバイルバッテリー
・エアアジア、モバイルバッテリー4/1から禁止 飛行中の使用や充電(25年3月28日)
・タイ国際航空、モバイルバッテリー3/15から禁止(25年3月14日)
・シンガポール航空、モバイルバッテリー使用・充電4/1から禁止(25年3月12日)
・エバー航空とチャイナエア、モバイルバッテリー使用・充電禁止 台湾各社足並み揃う(25年2月28日)
・エアプサン香港行きBX391便、釜山出発前に火災 乗客3人けが(25年1月29日)
