MRJ, 機体 — 2015年9月2日 22:00 JST

MRJ、初飛行で操縦特性確認 米国試験は16年夏

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 三菱航空機は9月2日、10月後半に実施する国産初のジェット旅客機「MRJ」の初飛行について、基本的な操縦特性の確認を主目的に行うことを明らかにした。初飛行後のスケジュールは見直さず、2017年4-6月期の全日本空輸(ANA/NH)への量産初号機引き渡しを目指す。

小牧空港内で地上試験中のMRJ飛行試験初号機=9月2日 PHOTO: Tadayuki YOSHIKAWA/Aviation Wire

 飛行試験機の初号機(登録番号JA21MJ)による初飛行は、機体を製造する小牧南工場(愛知県)に隣接する県営名古屋空港(小牧空港)周辺で実施。1時間程度飛行する。

 初飛行時には、真っ直ぐに飛ぶかや、左右に曲がれるかなどの基本的な操縦特性を確認し、上空で着陸状態をシミュレーション後に着陸する。

 小牧を離陸後の飛行空域は、静岡県御前崎から愛知県伊良湖岬にかけての遠州灘沖の太平洋上と、石川県能登半島沖の日本海上の2つを検討。天候により、いずれかを選択する。三菱航空機の森本浩通社長は、「初飛行は重要なプロセス。ようやく飛ぶ姿をお示しできる」と語った。

 初飛行前に機体の強度を確認する「静強度試験」について、三菱航空機の岸信夫副社長は、「30ケースある項目のうち、初飛行に必要な7ケースはすべて完了した」と説明。今後は安全性の審査や、10月中旬に時速180キロ前後で走行する中速走行試験、離陸直前の220キロ前後の高速走行試験などを行い、国土交通省航空局(JCAB)の承認を経て初飛行する。

小牧空港内の三菱航空機本社で会見する森本社長=9月2日 PHOTO: Tadayuki YOSHIKAWA/Aviation Wire

 その後は毎日飛行試験を繰り返し、試験結果を基に機体の改良を進めていく。初号機が米ワシントン州モーゼスレイクで飛行試験を始める時期について、岸副社長は「2016年夏から秋に米国へ持っていきたい。できれば夏に始めたい」と、これまで通りのスケジュールで進める意向を示した。

 飛行試験機は5機製造。このうち4機は完成後、日本で一定期間の試験後は、米国で飛行試験を行う。岸副社長によると、飛行試験の進捗状況によっては、一時的に5機全機を使って米国で試験する可能性もあるという。

 初飛行後は、ローンチカスタマーであるANAへの量産初号機の引き渡しスケジュールを守れるかが、課題の一つとなる。JCABによる型式証明取得は2017年前半、ANAへの初号機引き渡しは2017年4-6月期を予定している。

 小牧空港の敷地内では現在、飛行試験機による地上試験が行われている。三菱航空機では、初飛行を予定通り実施することで、受注の上積みを目指す。

 MRJの合計受注数は、確定受注223機、オプション160機、購入権24機の計407機。国内ではANAが25機(確定15機、オプション10機)発注したほか、日本航空(JAL/JL、9201)が32機を確定発注済み。

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