エアライン, 企業, 解説・コラム — 2016年12月12日 12:20 JST

「行き先は本当にランダムです」特集・JALとNRI「どこかにマイル」担当者に聞いてみた

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 航空会社のマイルを貯めた際、人気が高いサービスが特典航空券だ。出張で貯めたマイルを使い、休暇ではハワイや沖縄といったリゾート地への特典航空券をゲットする人も多いだろう。

 特典航空券と言えば、まず行き先ありき。ところが日本航空(JAL/JL、9201)が12月12日から始めたサービス「どこかにマイル」の行き先は、システムにおまかせ。羽田発着路線が対象で、ウェブサイトで利用日と時間帯、人数を入力すると、4つの候補地が表示される。最終的な行き先は、申し込みから3日以内に通知される仕組みだ。

 必要マイルは往復6000マイルで、特典航空券の引き替えで必要となる通常のマイルと比べて半分以下。目的地を決めるシステムは、野村総合研究所(NRI、4307)が開発した。

「どこかにマイル」の開発に携わったJALの馬場さん(左)とNRIの新井さん=16年12月9日 PHOTO: Tadayuki YOSHIKAWA/Aviation Wire

 なぜJALは、行き先はおまかせの特典航空券を作ったのだろうか。開発に携わった路線統括本部マイレージ事業部アシスタントマネジャーの馬場宗吾さんと、NRIのサービス・産業ソリューション事業本部産業システムデザイン部上級システムコンサルタントの新井朗さんに聞いた。

—記事の概要—
8000マイルだと魅力ない
4つなら全部見てもらえる

8000マイルだと魅力ない

 JALの国内線特典航空券は、距離によりAからCまでの区間に分類。羽田発着の場合、通常時の必要往復マイル数は、大阪や名古屋、山形などA区間は1万2000マイル、札幌や那覇、南紀白浜などB区間は1万5000マイル、久米島と宮古、石垣のC区間は2万マイルとなっている。どこかにマイルは、羽田-伊丹間の特典航空券と比べて、半分のマイルで交換できると言える。

日時や人数を入力すると行き先候補地が表示されるJALの「どこかにマイル」(JALのサイトから)

 馬場さんは「通常の半分以下としたほうが、わかりやすいと考えました。8000マイルだと魅力がないんじゃないかな? とも思いましたね」と、往復で6000マイルになったいきさつを話す。キャンペーンで利用できる「ディスカウントマイル」の場合、往復1万2000マイルの場合は1万マイルになるのも、8000マイルでは魅力がないと考えた理由のひとつだという。

JALの国内線新仕様「スカイネクスト」への最終改修機となった737-800の機内=16年11月 PHOTO: Tadayuki YOSHIKAWA/Aviation Wire

 どこへ行けるかがわからないため、ウェブサイトから申込時に利用日だけではなく、羽田の出発時間と到着時間を設定するようになっている。

 時間帯は、午前5時から8時59分、午前9時から11時59分、午後0時から3時59分、午後4時から6時59分、午後7時から11時59分と、5つから選べるようにした。4つの候補地も、名所だけではなくグルメ情報も確認できるようにし、旅をイメージしやすいものを目指した。

 サービスが生まれたきっかけは、馬場さんが特典航空券で新しい取り組みを考えていたところ、NRIから2014年夏に提案があったことだった。JALとNRIはこれまで、Apple Watchをはじめとする機器の実証実験などで関係を構築してきた。馬場さんは「特典航空券は行き先を決めてマイルを貯めるので、『どこかにマイル』は新規需要と捉えています」と話す。

 こうした行き先を航空会社に委ねる仕組みだと、本当にランダムに決まるのかを不審がる人もいるだろう。「空席が多い路線が当たるのではないか、あらかじめ航空会社が路線を裏で決めているのではないか、と思われるかもしれませんが、本当にランダムです」と、馬場さんは断言する。

JALスカイネクストの普通席=14年5月 PHOTO: Tadayuki YOSHIKAWA/Aviation Wire

 仕組みを手掛けたNRIの新井さんは、セレンディピティー(偶然発見する幸運)を重視したという。「旅の面白さは、そこ(セレンディピティー)にあると思うんです。行って良ければまた行こうと思い、本当の意味でリピーターになります」と、思いがけないことが起こる楽しさのために、行き先がランダムに出る、フェアなシステムであることが重要だと話す。

 「国内旅行のイノベーションを目指しましたが、最初は本当にシステムが成り立つのか、そして、そもそも需要があるのかといったところから調査しました。平等性を担保して、往復でうまく組成できるかなど、2年半くらいかけて開発しました」(新井さん)と振り返る。

 行き先をランダムに決めるだけではなく、人数も大人の場合1人から4人まで、小児は3人まで、幼児は2人までそれぞれ設定でき、家族や友人などグループでも旅に出られる。一方、条件が複雑になることもあり、1日の申込数には制限を設けた。このため、候補地は必ず4つ表示されるという。

4つなら全部見てもらえる

日時や人数を入力すると行き先候補地がランダムで4つ表示されるJALの「どこかにマイル」(JALのサイトから)

 JALのサイトで「どこかにマイル」のページを開くと、候補となる行き先がヨコ2つ、タテ2つの計4つが表示される。4つの候補地は、ページをリロード(再読み込み)すると変化する。

 4つにした理由を馬場さんは「ページを行ったり来たりするのは、イケてないなと思いました。数を増やすと写真が小さくなってしまいますし」と、ページを開いた時のインパクトや、利便性を考えた結果だという。

 新井さんは「地域を知ってもらえるよう、各地の名所や旧跡、温泉などを取り上げているのですが、4つなら全部見て想いを巡らせてもらえるのではと考えました」と説明する。多すぎず少なすぎずといったバランスが、4つだったようだ。

 しかしせっかく貯めたマイルを使うとなれば、出来る限り行きたいところへ向かえる特典航空券を欲しがる人が多いだろう。通常の国内線特典航空券では、「間違いなく多いのは、沖縄と福岡、札幌、伊丹ですね」と馬場さんは話す。

 一方、マイルが多く貯まっている人は、出張などでこうした幹線に乗っていることが多い。馬場さんは「使い慣れている方にとっては、幹線が当たっても面白みがないでしょうね。反面、貯まったマイルが少ない方は、幹線が当たって欲しいと思うのでは」と、利用者の胸中を察する。

候補地が青森の例。八甲田山や弘前城といった定番のほか尻屋崎にいる「寒立馬」なども紹介している(JALのサイトから)

 どこに行けるかがわからない分、「どこかにマイル」は実際に行ってもらわないと完結しないサービスだ。その分、JALとしては自社の機材の良さを体験してもらうのも狙いのひとつだ。

 「機内Wi-Fiサービスを利用したり、(新仕様機の)スカイネクストに乗ってみて、『これで行けるんだったら』と思っていただきたいですね」(馬場さん)と、このサービスをきっかけに、JALのリピーターになってもらえるようにしたいという。

 馬場さんによると、「どこかにマイル」のように行き先がおまかせのマイルによる特典航空券は、日本初だという。これまでとは違った発見のある旅の積み重ねが、地域創生にもつながっていくものだ。

 このところ、あちこちへ出掛けたり、新しいものに挑戦するアクティブシニア層に対して、若年層は旅に出なくなったと言われて久しい。馬場さんは、こうした若者たちが旅をするきっかけにもなって欲しいという。

 4つの行き先のうち、どこかへ行ける「どこかにマイル」。思いも寄らない旅が、新たな発見につながりそうだ。

関連リンク
どこかにマイル(日本航空)
野村総合研究所

JALと野村総研
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JALと野村総研、ウェアラブル端末の実証実験 羽田空港で(14年7月16日)
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特集・JALファーストクラスで行くロンドン(全4回)
(1)特典航空券でファースト往復(16年8月16日)
(2)専用ラウンジは腹八分目(16年8月17日)
(3)雲上の1A席で楽しむ“幻のシャンパン”(16年9月12日)
(4)幻のシャンパン「サロン」を飲み比べてみた(16年10月23日)

写真特集・JALスカイネクスト最終改修機JA345J
前編 黒と赤でまとめた国内線新仕様機(16年11月27日)
後編 機内Wi-Fiも全機対応(16年11月28日)

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