エアライン, 空港, 解説・コラム — 2015年7月25日 23:00 JST

専用ラウンジは食べ過ぎ注意 特集・JAL国際線ファーストで行くパリ(2)

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 普通に人生を送っていて、果たして国際線のファーストクラスは、何回乗る機会があるだろうか。

 記者(私)の場合、本紙Aviation Wireを創刊した2012年2月まで、国内線の普通席で機内食が出ると思っていたほど、空の旅とは縁がなかった。長期休暇を取った時に、エコノミークラスに乗る程度だった。

焼きたてのライ麦ガレットをコーヒーとともにJALファーストクラスラウンジで=6月14日 PHOTO: Tadayuki YOSHIKAWA/Aviation Wire

 特典航空券で日本航空(JAL/JL、9201)のパリ行きJL45便のファーストクラスに乗り、パリ航空ショーへ向かうこの特集。初回は、私がどうやってファーストクラスの特典航空券をゲットしたのかや、特典航空券へ交換する際に必要なマイル数などを、長々と説明した。

—記事の概要—
人生初のファースト搭乗手続き
専用導線を作らないターミナル運営会社
ラウンジは食べ過ぎ注意
時の流れがゆったり

 第2回目の今回は空港編。まだまだ機内にはたどり着かない。なぜならば、快適にファーストクラスに乗るためには、ラウンジでの“誘惑”に勝たなければならないからだ。

 そして、2020年の訪日(インバウンド)需要を考えると、空港のターミナル運営会社に問題があるのだ。

人生初のファースト搭乗手続き

 私は6月14日から1週間、パリ航空ショーやフランスにあるエアバス本社を取材した。JALのファーストクラスは、往路の羽田発パリ行きJL45便で乗った。

羽田空港のJALファーストクラスカウンター。乗客が並んでいたので、私は隣のJGCカウンターへ。人生初のファーストクラスは専用カウンターがよかった=6月14日 PHOTO: Tadayuki YOSHIKAWA/Aviation Wire

機内持ち込みするカメラバッグには赤いタグが付けられた=6月14日 PHOTO: Tadayuki YOSHIKAWA/Aviation Wire

 6月14日早朝、羽田空港の国際線ターミナルに到着。ファーストクラスのカウンターに並ぶ。先客が2人ほどいたため、私は隣のJGCカウンター(JGC:JALのマイレージ会員の上位制度)に案内された。

 私の人生はこういうことが多い。私は一応JGC会員なので、普段もこのカウンターを使っている。人生初のファーストクラス、せっかくならファーストクラスのカウンターでチェックインしたかった。

 思い起こせば、新幹線や成田へ向かうスカイライナーで、パソコンで原稿を書いていると、前席の人がガッツリとリクライニングしてくることがある。しかも、そこまでリクライニングしているのは、同じ車両の中でも自分の前席だけ。とかく乗り物で“ハズレ”を引くことが多い。そして初のファーストクラスのチェックインも……。

 もちろん、JGCとファーストクラス、どちらのカウンターもサービスレベルは同じだ。せいぜい下に敷いてあるマットレスの色がJGCは黒、ファーストがワインレッドと違うくらい。だから、「ファーストクラスのカウンターでなければイヤだ」などとは言わなかった。

 機内持ち込みするカメラバッグ「ドンケ F-3X BB」には、「JAL FIRST CLASS」と書かれた赤いタグが付けられた。そして、私のチェックインは何の問題もなく、気持ちよく保安検査場へ向かった。

専用導線を作らないターミナル運営会社

 そして、保安検査場の列に並ぶ。専用レーンだが、かなり混んでいる。

羽田発ロンドン行き初便に搭乗する乗客。ファーストクラス導線がないに等しいのは、ターミナル設計時にここまで長距離便が羽田にシフトすると予想していなかったからか=14年3月30日 PHOTO: Tadayuki YOSHIKAWA/Aviation Wire

 羽田の国際線ターミナルは、設計当初は今のように成田から長距離路線が大移動してくることを想定していなかったのか、とにかく上級クラスに関する導線が貧弱というか、お粗末だ。警察の警護を必要とするレベルのVIP導線を除くと、一般のファーストクラス客向け専用導線は、ないに等しい。

 成田空港であれば、ファーストクラス専用の保安検査場など、導線が整備されている。欧米の航空会社では、これは最低限のレベルだ。例えば欧州の場合、ルフトハンザ ドイツ航空(DLH/LH)やエールフランス航空(AFR/AF)は、本拠地の空港で飛行機の機側まで高級車で送迎している。

 世界のライバルは、とにかくファーストクラスの乗客を列に並ばせない、待たせないことを徹底しているのだ。

 羽田はどうか。保安検査場を見ると、各社共通のビジネスクラス客向け優先レーンしかない。当然ながら行列が出来ている。海外のファーストクラスの、いわゆる「VIP導線」の水準で考えると、あり得ないレベルだ。この問題は航空会社のみでは改善できず、ターミナル運営会社にやる気があるかが焦点になる。

 この国際線ターミナルを運営する東京国際空港ターミナル(TIAT)は、東京五輪が開催される2020年までに、日本の航空会社が海外から富裕層を呼び込む際、果たして自発的に施設を改善し、協力する気はあるのだろうか。

 私は現状のままでは、まったく期待できないと断言する。羽田という好立地にあぐらをかいた、TIATの殿様商売と言うべき数々の問題点は、機会を改めて追求したい。彼らは自分たちのターミナルをはじめ、成田や関西空港、海外の主要空港を、本当に利用したことがあるのかと思うほど感覚がズレている。

 場所がないと言うなら、単なる言い訳だ。ないものをひねり出すのが、巷の民間企業で求められる仕事のレベル。利用者視点が欠落している会社に、日本の空の玄関口を運営する資格はない。

ラウンジは食べ過ぎ注意

 ファーストクラスに乗る割に、海外では考えられない混み具合の専用レーンに並び、保安検査を通過。出国審査を終えてラウンジへ向かう。もっとも、真の富裕層は列に並んでも文句を言わないのかもしれない。そして、取材以外では足を踏み入れたことがない、ファーストクラスのラウンジへ。

ファーストクラスラウンジのお酒。サクララウンジより高価なお酒が並ぶ=6月14日 PHOTO: Tadayuki YOSHIKAWA/Aviation Wire

羽田のJALファーストクラスラウンジ。欧州便出発前とあって混んでいた=6月14日 PHOTO: Tadayuki YOSHIKAWA/Aviation Wire

 私が持つファーストクラスラウンジのイメージは、空間にゆとりがあって人数も少ない、そんなラウンジだった。昨年8月、オープン前に取材でここを訪れた際は、おおむねイメージ通りだった。

 しかし、今朝は欧州路線の出発前とあって、かなり混雑している。ファーストクラスの乗客以外に、多頻度利用者も条件を満たせば利用できるので、混雑するのは仕方ないだろう。

 だが一般ラウンジで混雑時に見かける、ショッピングセンターのフードコートのような、我先にと食べ物に群がり、酔っ払いの大声が響く、落ち着かない雰囲気に比べれば、ゆったりと待ち時間を過ごせそうだ。

おいしいと評判のカレー。この量が機内で命取りになる=6月14日 PHOTO: Tadayuki YOSHIKAWA/Aviation Wire

 JALのファーストクラスラウンジでは、朝はライ麦ガレット、夜はハンバーグを、鉄板でシェフが調理し、焼きたてが食べられる。

 パリ便は早朝にチェックインするため、私も朝食としてライ麦ガレットを食べたが、軽い腹ごしらえにはよいメニューだった。できれば取材以来食べていないハンバーグを食べたかったが、こればかりは仕方ない。私が食べた後も、焼きたてのガレットを求める人の姿が目立った。

 その後、しばらく日本を離れるので、名物のカレーも食べた。期待通りのうまさだったが、この選択が機内食を食べる時に“命取り”となる。貧乏性の私はラウンジであれこれ食べてしまった。

 機内食を“本丸”と考えるなら、いかにラウンジで自制するかがポイントであり、機内でファーストクラスをエンジョイできるかの分岐点だ。

時の流れがゆったり

 JALのファーストクラスラウンジは、奥に行くと靴磨きコーナーやシャンパンと日本酒が飲めるバーがある。私が訪れた時は、ちょうど靴磨きが終わったところだった。こうした空間があることで、ラウンジ全体の時の流れにゆとりを持たせる効果があるように感じ、良い演出だと思う。

ファーストクラスラウンジ奥にある靴磨きサービスやバーコーナー=6月14日 PHOTO: Tadayuki YOSHIKAWA/Aviation Wire

ローラン・ペリエのシャンパン=6月14日 PHOTO: Tadayuki YOSHIKAWA/Aviation Wire

 バーコーナーでは、リーデル社のシャンパン用と日本酒用の専用グラスが置いてある。私は機内で飲む一杯目はシャンパンと決めていたので、日本酒好きながらも悪酔い防止のため、ローラン・ペリエ社のシャンパンを選んだ。

 このほかに、マッサージ施術者による15分程度のマッサージコーナーもある。ファーストになると、マッサージもイスではなく、人がやってくれる。全身が常に凝っている私は、マッサージが始まったら飛行機に乗れなくなると思い、立ち寄るのは断念した。

 少々お腹が重たくなった状態で、搭乗開始10分前を迎えた。もっと満喫したいところを、後ろ髪を引かれる思いで搭乗口へ向かう。しかしファーストクラスなら、そもそも早く移動する必要がなかった。

リーデル社のシャンパン用グラス=6月14日 PHOTO: Tadayuki YOSHIKAWA/Aviation Wire

 私は常に取材道具を持ち歩いているため、飛行機で移動する際は、頭上の手荷物収納棚を確実に確保するため、極力早めに搭乗口に並ぶ癖がある。しかし、定員が少ないファーストクラスなら、手荷物収納棚も余裕があり、何も搭乗開始時刻に並ぶ必要はない。搭乗口の混雑が一段落したころに、ラウンジから向かえばよかったわけだ。

 ちなみに搭乗の順番は、ファーストクラスとビジネスクラス、上級会員はすべて一緒。私のように早々に並ぶファーストクラス客はほとんどいないようで、こうした順序で問題ないようだ。

 しかし、ファーストクラス客を最初に案内する方が、特別感は演出できるのではないかと感じた。ラウンジについても、ファーストクラス客だけが入れるエリアを設けるなど、もう少し差別化した方が満足度が高まるのではというのが、率直な感想だ。同じ便でも、大半のファーストクラス客は、私と違い大金を払っているのだから。

 そして待望の機内へ。友人から必ず飲めと言われた、「幻のシャンパン」こと仏サロン社の「シャンパーニュ サロン 2002」も目前だ。次回、ついにJALのファーストクラスに乗り、パリへ旅立つ。(つづきはこちら

特集・JAL国際線ファーストで行くパリ(全3回)
(3)12時間半乗っても疲れない(15年7月27日)
(1)特典航空券でファーストクラスに乗ってみた(15年7月24日)

スカイスイート 777
写真特集・JALスカイスイート777ができるまで
最終回 格納庫離れる最終改修機(14年8月3日)
第2回 新シート244席を手作業で(14年7月30日)
第1回 シート外した機内は広大な空間(14年7月28日)

初号機の機内写真
日航、新国際線機「スカイスイート 777」の機内公開 1月9日ロンドン線就航(12年12月21日)

JALファーストクラスラウンジ
世界へ旅立つ飛行機眺めて鉄板焼き 写真特集・JAL羽田国際線ファースト新ラウンジ(14年9月15日)
JAL、鉄板焼きをファーストクラス客に 羽田新ラウンジ(14年8月29日)