日本航空(JAL/JL、9201)の鳥取三津子社長は3月2日、10年後を見据えた新たな経営計画「JALグループ経営ビジョン2035」を発表した。2030年度にEBIT(財務・法人所得税前利益)3000億円、2035年度には3500億円を目指す。このうち、貨物事業では、アジア-欧米間の長距離需要を取り込むため、大型貨物機の導入を検討していることを明らかにした。

新経営計画「JALグループ経営ビジョン2035」を発表するJALの鳥取三津子社長=26年3月2日 PHOTO: Tadayuki YOSHIKAWA/Aviation Wire
—記事の概要—
・A350F発注か
・767FとクロネコA321P2F
・ANAとNCA
A350F発注か
JALは2010年の破綻前は「ジャンボ」の愛称で親しまれたボーイング747型機の貨物機を運航していた。破綻により大型貨物機の自社運航からは撤退したが、2024年から自社の中型貨物機などによる運航を再開し、大型機は他社機をチャーターしている。

シンガポール航空ショーに展示されたA350Fの体験コーナー=26年2月 PHOTO: Tadayuki YOSHIKAWA/Aviation Wire

ファンボロー航空ショーに展示されたA350Fの模型=24年7月 PHOTO: Tadayuki YOSHIKAWA/Aviation Wire
鳥取社長は「長距離の供給を増やすため、大型貨物機を検討している」と説明する一方、導入時期などの詳細は「まだ検討段階」として、言及を控えた。
大型機による貨物事業について、鳥取社長は「過去にそれなりにやっていたが、一旦やめた経緯があり、なかなか思い切って貨物事業に踏み出してこなかった。コロナの時に貨物事業の意義が際立ち、非常に重要な役割を果たしている。本来の貨物事業の意義を考えた時に、長距離の供給を増やしていくことは必要ではないか」と述べた。
今回の新経営計画では、JAL本体を中心としたFSC(フルサービス航空会社)事業では、国際線機材をエアバスA350型機とボーイング787型機に集約していく方針を示している。
このため、JALが導入する大型貨物機は、エアバスが2027年下期の就航を目指して開発中のA350Fとなる可能性が高そうだ。A350Fのペイロード(有償搭載量)は最大111トン、航続距離は8700キロメートル(4700海里)を計画。全長70.8メートルは、標準型のA350-900の66.8メートルと、長胴型のA350-1000の73.79メートルの間の長さとなる。JALはA350-900と-1000を導入済み。いずれもボーイング777の後継機で、現在は13機導入した長距離国際線機材777-300ERのうち、9機が残るのみ。
A350Fは、これまでにシンガポール航空(SIA/SQ)やキャセイパシフィック航空(CPA/CX)など、747-400Fを運航している航空会社が発注している。
ボーイングは、777-300ERの後継となる777Xを開発中。構造上の最大搭載重量118トン、ペイロード112トンの貨物型777-8Fも開発中だが、民間機の場合、パイロットは同時に原則1機種しか運航できないほか、エアバス機とボーイング機では操縦方法が大きく異なるため、仮にJALが777-8Xを導入するとなると、777のパイロットを数機の貨物機のために維持しなければならなくなる。
767FとクロネコA321P2F
JALは自社で保有する767-300ERのうち、3機を767-300BCFに改修。2024年2月19日に就航させた。「BCF」はボーイング・コンバーテッド・フレーターの略で、最大搭載重量は客室だった「メインデッキ」の上部貨物室が32トン、改修前からある床下の下部貨物室が16トンの計48トンとなっている。

成田空港で出発を待つ767-300BCF初便=24年2月19日 PHOTO: Tadayuki YOSHIKAWA/Aviation Wire

羽田空港に到着し前方貨物室から積荷が降ろされるヤマトのA321P2F羽田初便=24年8月1日 PHOTO: Tadayuki YOSHIKAWA/Aviation Wire
また、ヤマトホールディングス(9064)とJAL、グループのLCC、スプリング・ジャパン(旧春秋航空日本、SJO/IJ)の3社で、小型貨物機のエアバスA321ceo P2Fを2024年4月11日から運航。ヤマトHDが3機リース導入した機体を、スプリング・ジャパンが運航している。中古のA321ceo(従来型A321)旅客機を貨物専用機に改修したもので、10トン車約5-6台分に相当する1機当たり28トンの貨物を搭載できる。
ANAとNCA
競合の全日本空輸(ANA/NH)を傘下に持つANAホールディングス(ANAHD、9202)は、日本貨物航空(NCA/KZ)を2025年8月に完全子会社化。これにより、ANAグループの貨物機は、ANAが大型機の777Fを2機と中型機の767Fが6機の計8機、NCAは最新ジャンボの貨物機747-8Fが8機と747-400Fが7機の計15機体制で、グループ全体の貨物機は23機となった。
また、ANAHDは1月30日に発表した2026-2028年度のANAグループ中期経営戦略で、現在はANAが運航している777F貨物機の運航をNCAと分担する方針を示している。NCAは747の後継機として、ボーイングの次世代大型機777Xの貨物型777-8Fの導入を検討しており、大型貨物機の運航はNCAに集約していく見込み。

NCAの747-8F=PHOTO: Tadayuki YOSHIKAWA/Aviation Wire
A350F
・大型貨物機A350F、27年下期就航へ後ろ倒し サプライチェーン影響(25年2月21日)
・CMA CGMエアカーゴ、A350Fを4機発注(21年11月21日)
・ALC、エアバス機111機発注へ A350F貨物機も(21年11月16日)
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ANAとNCA
・ANA、777F貨物機をNCA運航に 777-8F念頭に新体制へ(26年1月30日)
