愛知県は、県営名古屋空港(愛知県小牧市)に隣接する県の「あいち航空ミュージアム」に、三菱重工業(7011)が開発を中止した「三菱スペースジェット(旧MRJ)」の飛行試験機の10号機(登録記号JA26MJ、製造番号10010)を展示する。開館10年目を迎える2026年度の公開を目指し、準備を進める。

県営名古屋空港を離陸し初飛行する三菱スペースジェットの飛行試験10号機JA26MJ=20年3月18日 PHOTO: Tatsuyuki TAYAMA/Aviation Wire
三菱重工は、MSJの開発中止を2年前の2023年2月7日に正式発表。製造された飛行試験機のうち、米国で試験を行っていた4機は初号機を含む全機が現地で解体済み。10号機は設計変更を反映した機体で、2020年1月6日に完成し、機体を製造する三菱重工から子会社で開発を担当していた三菱航空機(当時)へ引き渡された。
初飛行は2020年3月18日に、県営名古屋空港で実施。午後2時53分に離陸し、太平洋側の飛行試験空域で飛行状態での基本性能などを確認後、約2時間の飛行試験を終えて午後4時40分に同空港へ戻った。国が機体の安全性を証明する「型式証明(TC)」取得のために製造された試験機で、開発中止までの飛行時間は計48時間、飛行試験では主に機内空調関係(風向風速温度)、Passenger Door(乗降用ドア)周辺の性能確認などが行われた。
機体諸元は、型式がMRJ-200、座席数が88席で、大きさはL:35.8m×W:29.2m×H:10.4m(117.4ft×95.9ft×34.2ft)。最大離陸重量は4万2800kg、航続距離は満席状態で3770km、最大運用速度はマッハ0.78だった。
県によると、10号機の展示に向けて2025年度は詳細検討調査を実施し、2026年度に上期に設置工事、下期に公開を予定。工事中は半年程度休館するという。

あいち航空ミュージアム開館時から展示している元航空自衛隊の要人輸送用YS-11 52-1152=17年11月 PHOTO: Tadayuki YOSHIKAWA/Aviation Wire
あいち航空ミュージアムは、名古屋空港の旧国際線ターミナルを改修した商業施設「エアポートウォーク名古屋」の近くに2017年11月30日に開館。館内には実機も展示しており、戦後初の国産旅客機である日本航空機製造YS-11型機は開館当初から公開している。同館に展示しているYS-11は、航空自衛隊美保基地の第3輸送航空隊に所属していた要人用人員輸送機(機体番号52-1152)で、1965年に空自へ引き渡され、2017年5月29日に鳥取県の美保基地から小牧基地までラストフライトした。
県では、「スペースジェットが展示に加わることで、国産旅客機開発ヘの挑戦の歴史を一度に見ることができる大変貴重な展示となる」と説明している。
2020年1月に特別企画展「日本の翼 YS-11展 ~半世紀以上飛び続ける、国産プロペラ機~」が開催された際は、当社が保管しているYS-11のフライトマニュアルやセールスカタログ、当時の写真、グッズ、構想のみに終わった3発ジェット旅客機「YS-33」の完成予想模型や、ジェットエンジンに換装した発展型「YS-11J」のカタログ、YS-11の設計に使用された手回し式計算機などが展示された。
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あいち航空ミュージアム
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