エアライン, 官公庁, 解説・コラム — 2024年3月15日 12:35 JST

羽田発着枠の25年配分、コロナ影響や人手不足考慮を 検討委が初会合

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 国土交通省航空局(JCAB)は3月14日、羽田発着枠配分基準検討小委員会(委員長:竹内健蔵東京女子大学教授)の初会合を開いた。2025年以降の国内線発着枠配分に対する考え方を検討する有識者会議で、前回配分の2020年からこれまで5年間のうち、新型コロナウイルス感染症(COVID-19)の影響期間に航空各社がどのような取り組みを行ってきたかをはじめ、「政策コンテスト枠」や「1便・3便ルール」といった地方路線維持のあり方、地方の不採算路線に対する各社の取り組みをどう扱うかなどが検討課題にのぼった。今夏の取りまとめを目指す。

緊急事態宣言から一夜明けた羽田空港=20年4月8日 PHOTO: Tadayuki YOSHIKAWA/Aviation Wire

—記事の概要—
コロナ影響や人手不足
「ちゃんとしたサービスは適正運賃に」

コロナ影響や人手不足

 羽田の発着枠は2000年の規制緩和以降、免許制から発着枠上限内の許可制になった。羽田と成田、伊丹、関西、福岡の5空港は、1日または一定時間当たりの離着陸回数を制限する必要がある「混雑空港」に指定されており、5年ごとに航空会社の使用許可期限が定められており、1日当たり465枠(465往復分)ある羽田の国内線発着枠は、2025年1月に期限を迎えることから、今夏には配分に関する考え方を整理しておく必要がある。

国交省で開かれた羽田発着枠配分基準検討小委員会の初会合=24年3月14日 PHOTO: Tadayuki YOSHIKAWA/Aviation Wire

 14日の初会合では、約3年間にわたる新型コロナの影響をどのように見るかや、円安や燃料費高騰、環境対策の強化といった航空を巡る環境変化に対する取り組みをどのように考慮するか、4月開催の第2回会合で航空各社からどのような項目をヒアリングするか、といった点について、委員による議論が行われた。

 航空局からの現状説明で、航空事業課の重田裕彦課長は、旅客需要の現状について「国内線はコロナ前の約9割、国際線は約7割まで回復した」と委員に説明。一方で「国内線は9割に回復しているが、なかなかそれ以上伸びていない。オンライン会議の定着などがみられ、ビジネス客が戻っておらず、質的な変化がみられる」と、航空各社が重視する高単価の出張需要が戻りきっていない点を指摘した。

 また、コロナ期間に膨らんだ各社の借入金が、好業績の現在も経営の大きな重しになっている点や、グランドハンドリングなどの人手不足、国による救済措置として空港使用料の低減措置などの対応を委員に説明した。

「ちゃんとしたサービスは適正運賃に」

 前回2020年3月の配分では、発着枠の増枠がなかったことから19枠を回収し、16枠が再配分され、1日当たりの発着枠は計465枠。このうち、全日本空輸(ANA/NH)と日本航空(JAL/JL、9201)の大手2社が349枠、スカイマーク(SKY/BC)、エア・ドゥ(ADO/HD)、ソラシドエア(SNJ/6J)、スターフライヤー(SFJ/7G、9206)の特定既存航空会社(旧称・新規航空会社)4社が104枠、首都圏空港(羽田・成田)からは未就航の都市へ向かう関空路線への乗り継ぎ利便性改善を目的とした「際内乗継ぎ改善枠」が4枠、地方自治体などと航空会社が共同提案する「羽田政策コンテスト枠」が5枠、新規参入する航空会社が現れた際に優先配分する「新規参入枠」が3枠となっている。

緊急事態宣言から一夜明けた羽田空港=20年4月8日 PHOTO: Tadayuki YOSHIKAWA/Aviation Wire

国交省で開かれた羽田発着枠配分基準検討小委員会の初会合で挨拶する竹内健蔵委員長=24年3月14日 PHOTO: Tadayuki YOSHIKAWA/Aviation Wire

 委員からは、コロナ期間については航空各社が従業員の出向など、どのような対応を取ってきたかを考慮すべきとの意見が相次いだ。竹内委員長は「さまざまな危機的状況は今後もあり得ると思う」として、今後同様のイベントリスクが起きることを視野に議論すべきと述べた。

 慶應義塾大学の加藤一誠教授は「5年間のうち3年が移動制限。コロナの期間は外す方が良いのではないか。エアラインの経営が回復したというものの借金があり、絶好調とはいかない。イールドが高いビジネス需要が戻っていないところは厳しく、円安や燃料高、環境コストもかかっている」と指摘。一方、グラハンの人手不足など、航空業界の待遇改善を視野に入れると「ちゃんとしたサービスは適正な運賃にすべき。下げれば良い、というものでもない。航空業界の持続的な発展を考えるべきだ」との考えを示した。

 東京工業大学の花岡伸也教授は「前回2020年3月に議論した発着枠が使えない状況になってしまった。単純に延長でよいのではないか。2020-2022年は抜きにして、2023年から5年間あるいは4年間など改めて評価していくことが平等ではないか。評価指標については、環境対応の取り組みも含めて良いのではないか」と述べた。

 東京女子大学の矢ヶ崎紀子教授は評価指標について「競争も大事だが、協業がわかる指標があったほうが良いのではないか。観光については、外国人をどれだけ地方へ運んでくれたのかなど、データがあるのかや技術的なところもあると思うが、航空会社からヒアリングしたい」と語った。

 今回初めて委員に加わった公益社団法人日本消費生活アドバイザー・コンサルタント・相談員協会の樋口容子副会長は「サービスには対価がある、安ければいいはあり得ない」と指摘し、適正な運賃での競争を求めた。

 次回の会合は4月16日に開催を予定している。

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