企業, 機体 — 2023年4月7日 12:03 JST

DHC-8-300、水素燃料電池で初飛行 三菱HCキャピタル出資の米ベンチャーUH2

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 三菱HCキャピタル(8593)が出資する米国の水素航空機関連のベンチャー企業ユニバーサル・ハイドロジェン(Universal Hydrogen、UH2社)が、水素燃料電池を主な動力源とした航空機では世界最大の座席数となる40人乗り規模のターボプロップ(プロペラ)機による初の試験飛行に成功した。

エンジン1基を水素燃料電池パワートレインに換装し、モーゼスレイクのグラント・カウンティ空港から初飛行するUniversal HydrogenのDHC-8-300(三菱HCキャピタル提供)

 初飛行した機体は、UH2が保有するボンバルディア(現デ・ハビランド・カナダ)DHC-8-300型機(登録記号N330EN)。UH2によると、2基あるエンジンのうち、進行方向右側の第2エンジンにあたる1基を同社が手掛ける燃料電池式メガワット級パワートレイン(駆動装置)に換装した。米モーゼスレイクのグラント・カウンティ国際空港を現地時間3月2日午前8時41分に離陸し、15分間飛行して高度3500フィート(MSL)に到達したという。

 元米空軍のテストパイロットで、UH2のチーフテストパイロットのアレックス・クロール氏が初飛行の操縦を担当。「2回目の空港上空での飛行では、水素パワートレインの性能に満足できたので、化石燃料のタービンエンジンをスロットルダウンし、水素パワートレインによる巡航を実証できた」という。「燃料電池パワートレインの騒音や振動は、従来のタービンエンジンに比べて格段に小さい」と感想を述べた。

エンジン1基を水素燃料電池パワートレインに換装し、モーゼスレイクのグラント・カウンティ空港から初飛行するUniversal HydrogenのDHC-8-300(Universal Hydrogen提供)

右側の第2エンジンにあたる1基を水素燃料電池パワートレインに換装したUniversal HydrogenのDHC-8-300(同社提供)

 UH2は、水素航空機用の水素貯蔵カプセルや水素で駆動するパワートレインの開発を進めている。ICAO(国際民間航空機関)やIATA(国際航空運送協会)が世界的な脱炭素の目標を掲げる中、水素はCO2(二酸化炭素)を排出しないクリーンエネルギーとして注目されており、UH2は2025年までに水素バリューチェーンを構築し、同社の技術で既存の航空機を改修して水素で飛行する「ゼロ・エミッション機」の商用運航を目指している。

 航空機や航空機エンジンなど、航空業界のファイナンスを手掛ける三菱HCキャピタルは、2021年10月にUH2に出資。双日(2768)など日系企業とともに、日本の航空業界の脱炭素化に向けた水素バリューチェーン構築促進のほか、水素燃料電池航空機や水素貯蔵カプセルの普及に取り組んでいる。

関連リンク
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