国土交通省の元事務次官で東京メトロ(東京地下鉄)会長の本田勝氏が、羽田空港などの施設運営を手掛ける空港施設(8864)の乘田俊明社長らに対し、同省OBの副社長を社長に昇格させるよう要求していたと、朝日新聞が3月30日に報じた。乘田社長は30日に会見し、2022年12月に本田氏と面会した際に「指名委員会を経て決める手続きになっている」と説明し、要求を断ったことを明らかにした。
—記事の概要—
・指名委員会経て選任
・源流は大日本航空
指名委員会経て選任
本田氏が空港施設を訪れたのは2022年12月13日。同社の筆頭株主は日本航空(JAL/JL、9201)と全日本空輸(ANA/NH)を傘下に持つANAホールディングス(ANAHD、9202)の大手2社で、JAL出身の乘田社長とANAHD出身の稲田健也会長が面会し、本田氏は「国交省OBの名代として来た」と趣旨を説明したという。

空港施設の乘田俊明社長(資料写真)=22年2月 PHOTO: Tadayuki YOSHIKAWA/Aviation Wire
乘田社長は、同社の社長を含む役員人事について「指名委員会などのプロセスを経るようになっている」と本田氏に説明。「時代は変わってきている」として、「コーポレート・ガバナンス・コード(企業統治指針)」に沿った役員選任に理解を求めたという。本田氏に不満げな反応はなく「ご理解を頂けたと思う」といい、本田氏が同社を訪れたのはこの時だけだったという。
空港施設の役員は、取締役会と指名委員会を経て、株主総会で選任される。指名委員会は社内外の7人で構成され、社内は乘田社長と稲田会長の2人、残り5人は社外で、委員長は同社の独立社外取締役の杉山武彦・一橋大学名誉教授が務めている。
1970年の設立後、2021年まで国交省OBが同社の社長を代々務めてきたが、甲斐正彰前社長の時代に創業以来初の赤字を計上。これらの理由により、2021年6月29日開催の株主総会を経て当時副社長だった乘田氏と稲田氏が社長と会長に就いた。
一方、空港施設は格納庫やオフィスビルなどの使用許可を国交省航空局(JCAB)から取得しており、毎年更新となっている。
源流は大日本航空
空港施設は格納庫や事務所、ホテルなどの不動産賃貸業と、空港内の熱供給事業、給排水運営を手掛ける。大株主の持株比率は、2022年3月末時点でJALとANAHDの大手2社が21.06%ずつ、日本政策投資銀行(DBJ)が13.85%、日本マスタートラスト信託銀行が信託口で5.10%などとなっており、国は大株主として名を連ねていない。

羽田空港の格納庫などを運営する空港施設=PHOTO: Yusuke KOHASE/Aviation Wire
終戦を迎えた1945年に国策会社の大日本航空が解散し、OBらが空港施設の前身となる三路興業を1947年に設立。翌1948年に国際不動産、1954年に国際航業と社名変更し、空港施設は1970年に羽田と伊丹両空港の土地や建物、営業の譲渡を受けて設立された。
1993年に株式を店頭登録し、1995年の東証2部上場を経て1997年に東証1部へ上場した。現在は2022年の東証新市場への再編により、プライム市場に上場している。
本田氏は1976年に東京大学法学部を卒業し、運輸省(現国交省)に同年入省。航空局の航空事業課長や飛行場部長、局次長、航空局長を歴任し、2014年から2015年まで事務次官を務め、2019年から東京メトロで代表権のある会長を務めている。
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空港施設
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