エアライン, ボーイング, 機体, 解説・コラム — 2022年12月15日 00:10 JST

スカイマーク洞社長「ANAは重要な株主」約8年ぶり再上場で関係維持

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 スカイマーク(SKY/BC、9204)は12月14日、東京証券取引所グロース市場へ上場した。東証には7年9カ月ぶりに再上場を果たした。初値は1272円で売出価格の1170円を102円(8.7%)上回り、一時1328円まで上昇。終値は1277円を付けて取引を終えた。終値は売出価格を107円(9.1%)上回り、初値から5円(0.4%)上昇した。時価総額は約770億円。

上場を記念し東証の鐘を鳴らすスカイマークの洞駿社長=22年12月14日 PHOTO: Tadayuki YOSHIKAWA/Aviation Wire

—記事の概要—
事業収益1100億円、営業利益率10%前半
「ANAは重要な株主」
737-10を羽田幹線投入

事業収益1100億円、営業利益率10%前半

 東証で14日午後、スカイマークの洞駿(ほら・はやお)社長に上場通知書が手渡された。上場を記念し、洞社長と山本礼二郎会長、西岡成浩専務ら5人が東証の鐘を鳴らした。

東証で上場通知書を受け取るスカイマークの洞社長=22年12月14日 PHOTO: Tadayuki YOSHIKAWA/Aviation Wire

東証に再上場したスカイマークの(前列左から)山本会長、洞社長、西岡専務=22年12月14日 PHOTO: Tadayuki YOSHIKAWA/Aviation Wire

 記念式典後の会見で、洞社長は「ビリだった定時運航と顧客満足度がトップ。(破綻後の新体制移行後は)定時性が5年連続トップで欠航率も低く、顧客満足度も常にトップクラスだ」と、破綻当時から大きく変わった企業文化に触れた。

 「これからが新たなスタート。責任感と使命感を持ってまい進していく。中長期的に事業収益1100億円、営業利益率10%前半を目指す」と述べた。

 スカイマークの機材はボーイング737-800型機(1クラス177席)が29機で、国内12空港に23路線を展開している。

 洞社長は大手2社をはじめとする羽田発着のFSC(フルサービス航空会社)や、首都圏では成田空港が中心となるLCC(低コスト航空会社)とは利便性やサービス、価格で差別化し、これまでと同じく「第三極」としてレジャーやVFR(親族訪問)を中心に需要獲得を目指すという。

 「当社の存在意義は、国民生活の向上に資すること。SDGs(Sustainable Development Goals=持続可能な開発目標)にもあるように、あらゆる弱者にも交通機関として安価な値段を提供することだ」と、羽田発着便を中心とした低価格運賃の提供を従来通り重視していくという。

「ANAは重要な株主」

 上場前のスカイマークの株主は、投資ファンド「インテグラル」と関連ファンドが50.1%、日本政策投資銀行(DBJ)と三井住友銀行(SMBC)が折半で設立した投資ファンド「UDSエアライン投資事業有限責任組合」が33.4%、全日本空輸(ANA/NH)を傘下に持つANAホールディングス(ANAHD、9202)が16.5%。ANAHDはスカイマークのほか、エア・ドゥ(ADO/HD)やソラシドエア(SNJ/6J)、スターフライヤー(SFJ/7G、9206)などにも出資している。

再生計画案が可決され握手を交わす(左から)スカイマークの井出会長、インテグラルの佐山代表、ANAホールディングスの長峯取締役、DBJコーポレート・メザニン・パートナーズの本野取締役(肩書きはいずれも当時)=15年8月5日 PHOTO: Tadayuki YOSHIKAWA/Aviation Wire

 また、日本航空(JAL/JL、9201)を中核とするJALグループとは、2021年3月28日から乗り継ぎ時の手荷物連帯運送を実施。JALグループとの乗り継ぎがある場合、乗り継ぎに必要な時間を満たしている場合など条件を満たす際に、最終目的地まで乗客が手荷物を預けなおさずに運ばれる。スカイマーク便からJAL便、JAL便からスカイマーク便双方で実施している。

 洞社長は「ANAは重要な株主で、これまでも再生にあたり大変お世話になった。整備から運航、サービスのあり方など、いろいろとご指導いただいた。ご協力があったからこそスカイマークがある。ANAとは整備部品の融通や、協業の部分がある」と謝意を述べた。

 「JALとやっている貨物もその延長だが、ANAとJALとはお互い利益を得る部分があれば協力していきたい。基本的に航空運送の営業はあくまでもコンペティター(競合)だが、競争するところは競争し、一緒に出来るところは商売の根幹に響かない形で、これからも良い関係でいきたい」と語った。

737-10を羽田幹線投入

 スカイマークは2015年1月28日に経営破綻し、同年2月27日で上場廃止。民事再生手続きは2016年3月28日に終結した。破綻から5年後となる2020年の再上場を目指していたが、コロナの影響で需要が大きく冷え込んだことから上場申請を一度取り下げた。繁忙期となる夏季の需要が堅調だったことから今年8月に再び申請し、東証から11月10日に上場が承認された。

ファンボロー航空ショーで飛行展示を披露するボーイングの737-10(737 MAX 10)=22年7月18日 PHOTO: Tadayuki YOSHIKAWA/Aviation Wire

スカイマークの737-800=22年1月 PHOTO: Tadayuki YOSHIKAWA/Aviation Wire

 上場による資金調達により、機材更新を進める。「調達資金の20億円は劣後ローンの返済に充て、残り130億円は機材の前受金(頭金)に充てる」と洞社長は説明する。737-800の後継機として、ボーイング737 MAXを2025年から最大12機導入する。

 2025年4-6月期から6機の737-8を順次リース導入していく。リース契約とは別にボーイングと基本合意済みなのは、確定発注4機とオプション2機の最大6機で、737 MAXの標準型である737-8(737 MAX 8)と、超長胴型の737-10(737 MAX 10)の2機種を対象に検討を進め、正式契約の締結に向けてボーイングと協議していく。基本合意分の機体は、2026年度から順次導入する。

 スカイマークの客室仕様は確定していないが、メーカー標準の座席数は737-8が1クラス189席、737 MAXファミリーの中で胴体長がもっとも長い「最大の737 MAX」となる737-10は同230席で、737-10の導入で1便あたりの乗客を2割から3割程度増やせるようになる。これにより、羽田発着の福岡線など搭乗率が8割から9割となることで起きている幹線の乗客取りこぼしを解消する。

 737-10の型式証明(TC)取得は当初年内を予定していたが、現在の計画では2023年後半となる見通し。

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