エアライン — 2022年6月20日 22:08 JST

IATA、各国政府に国境閉鎖なき感染対策要望

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 IATA(国際航空運送協会)は現地時間6月20日、カタールのドーハで開催中の第78回AGM(年次総会)で、新型コロナウイルス感染症(COVID-19)対策の教訓として、国境閉鎖が感染拡大を防ぐ有効な手段ではないことが当初から指摘されていたことを受け、世界的な健康への脅威が将来発生した際、国境を閉鎖することなく効果的な管理ができるよう各国政府に呼びかけた。

カタールのドーハで渡航制限の影響を報道関係者に説明するIATAのクリフォード事務次長=22年6月19日 PHOTO: Tadayuki YOSHIKAWA/Aviation Wire

 IATAのコンラッド・クリフォード事務次長は、「WHO(世界保健機関)の助言は、国境を閉鎖しないことだったが、各国政府はWHOの勧告に耳を傾けず、世界人口の約93%が制限の影響を受けた」と述べ、「助言と有力な証拠に反し、政府によって国境が閉鎖されるような事態を二度と起こしてはならない。教訓から学ばなければならない」と語った。

 クリフォード氏は今回学んだ3つの教訓として、(1)国境閉鎖はCOVID-19に対する効果的な世界戦略ではない、(2)社会的・経済的影響とのバランスを考慮した対策を取るべき、(3)国民の信頼は論理的なルールと明確なコミュニケーションが必要だとの見解を示した。

 国境閉鎖については、「変異株が発見され、直ちに国境規制が実施された場合、感染のピークを4日遅らせただけだった。1週間後に国境規制が行われた場合はピークを2日遅れるだけで、場合によってはまったく変わらないこともある」と指摘した。「この時点で国境規制を続ける正当な理由はほとんどない。ウイルスは風土病であり、最も弱い人々を保護し、ケアするための国内対策に焦点を当てるべきである」と語った。

 社会的・経済的影響とのバランスを考慮した対策については、国境再開や検疫などが撤廃された後も、各国政府が依然として渡航者に対して複雑な書類作成やPCR検査、マスク着用などの制限を科している事を受け、政治家は健康関連の渡航制限の必要性に対し、経済的・社会的利益のバランスをとる必要があると指摘した。

 国民の信頼については、IATAの旅客調査の結果から、各国政府が渡航規則について一貫したアプローチを採ることが重要であるとした。約59%の人がいまだに「渡航規則を理解するのは本当に大変だった」、57%が「書類の手配が大変だった」、56%が「旅行する際に以前より不便だった」と回答しているという。

 クリフォード氏は、「すでに71%の旅行者がパンデミック前と同じように旅行するべきだと考えている。正常な状態への復帰が加速すれば、私たちの最大の関心事は、航空分野の持続的な成長に焦点を当てた世界に戻ってくるだろう。しかし、だからといって、政府や産業界がこのパンデミックの教訓を忘れてはならない。世界的な健康の脅威は今後も続くだろう。COVID-19のパンデミックの教訓を将来の健康危機に生かすることが、何百万人もの人々が払った犠牲を無駄にしない最善の方法だ」と語った。

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