エアライン, 解説・コラム — 2022年3月5日 23:41 JST

JALとANAどう飛ぶロシア迂回ルート アンカレッジ寄らない北回り、イスタンブール通過の南回り

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 ロシアによるウクライナ侵攻の影響で、航空各社はロシア領空を迂回(うかい)するルートで日欧間を結ぶ路線の運航を続けている。日本の大手2社の場合、全日本空輸(ANA/NH)はロシア南側を飛ぶ「南回り」、日本航空(JAL/JL、9201)はアラスカやグリーンランドなどを通る「北回り」を選択した。JALの羽田-ロンドン線の場合、飛行時間が従来と比べて最大4時間半長い約16時間となり、日本へ向かう復路では飛行時間を短くできる南回りも検討している。

欧州路線のロシア迂回ルートはANAが南回り、JALが北回り=PHOTO: Tadayuki YOSHIKAWA/Aviation Wire

 アラスカ経由というと、1980年代から始まったソ連(当時)の空域開放前に主流だったアンカレッジ空港を経由するルートを思い浮かべる人も多いようだ。しかし、北回りの「ポーラールート」を選択したJALも、アンカレッジ空港に立ち寄ることはない。

 また、ANAは比較的早い段階で南回りを選択する意向を表明した。航空会社がルートを設定する場合、各国の領空を通過する許可を得る必要があるが、ANAの場合はある路線の開設を目指していたことなどが奏功したようだ。

 両社のルート選択の狙いを見てみよう。

—記事の概要—
ロンドン最短距離のJAL北回り
イスタンブール通過するANA南回り
貨物搭載量どう確保?

ロンドン最短距離のJAL北回り

 まずは以前アンカレッジ経由便を運航していたJALから。欧州路線は3月4日から当面、羽田-ロンドン線のみ運航を続ける。欠航となるパリ、フランクフルト、モスクワ、ヘルシンキ線の利用者は、ロンドンからブリティッシュ・エアウェイズ(BAW/BA)などの便に乗り継いでもらう。

通常時と北回り、南回りの比較(JAL提供)

 JALが主に利用するルートは、羽田を出てアラスカ西側のベーリング海に面する辺りから北米大陸、グリーンランドなどを経てロンドンへ向かう。毎日運航する羽田-ロンドン線のJL43/44便の場合、飛行時間は通常ロンドン行きJL43便が12時間40分、羽田行きJL44便が11時間55分だが、4日は北回りになることで往路のJL43便が2時間55分、復路のJL44便が4時間30分多くかかり、JL43便の飛行時間は約15時間40分、JL44便は16時間25分になる見込み。

 北回り往路初日のJL43便(777-300ER、JA735J)は、羽田を4日午後0時3分に出発。ロンドン着は現地時間同日午後6時15分で、飛行時間は15時間12分だった。復路のJL44便(777-300ER、JA735J)はロンドンを4日午後9時12分に出発し、羽田には5日午後10時7分に着陸し、15時間55分のフライトとなった。

 機材は従来と同じボーイング777-300ER型機を使用。パイロットは疲労を考慮し、普段の3人で組む「マルチクルー」編成よりも1人多い4人の「ダブル」編成で運航している。

 今回の北回りは、過去にアンカレッジ経由便が飛行していたルートで運航ノウハウがあることや、JALと同じ航空連合ワンワールド・アライアンスに加盟しているBAの拠点であるロンドン・ヒースロー空港に最短距離で運航できることなどで選定した。

 一方で、南回りはルート上にトルコなど未就航国があり、領空を飛行する許可を取得する時間などを考慮すると、北回りがもっとも早く設定できる迂回ルートだったと言える。欧州の航空会社が日本路線を南回りで再開したのも、イスタンブールなどに就航していて各国の許可を得ていることが大きい。

イスタンブール通過するANA南回り

 全日本空輸(ANA/NH)は4日、成田-ブリュッセル線を南回りで10日まで運航すると発表した。機材は従来と同じボーイング787-9型機で、南回りの「中央アジアルート」は中国やカザフスタン、アゼルバイジャン、トルコなどを経てベルギーのブリュッセルへ向かう。

通常時と南回りの比較(ANA提供)

 成田発ブリュッセル行きNH237便(9日のみNH231)の飛行時間は、ロシア領空を飛行する通常ルートが約12時間、南回りでは約15時間30分で、3時間30分程度長くなる。成田行きNH238便(同NH232)は通常が約11時間、南回りが約13時間で、2時間程度長くなる。

 南回り往路初日のNH237便(787-9、JA933A)は、成田を4日午前9時7分に出発。ブリュッセル着は現地時間同日午後5時18分で、飛行時間は16時間11分だった。復路のNH238便(787-9、JA933A)はブリュッセルを4日午後7時25分に出発し、成田には5日午後4時42分に着陸し、13時間17分のフライトとなった。

 ルートの中でポイントになるのがイスタンブールだ。元々ANAは2020年3月開始の夏ダイヤで羽田-イスタンブール線を開設予定で、今回の南回りでブリュッセル線が飛ぶルート上には2019年2月に就航したウィーンもあり、各国の領空を飛行する許可を取得済みだ。

 ANAが加盟する航空連合スターアライアンスのルフトハンザ ドイツ航空(DLH/LH)も日本路線を同じルートで運航しており、悪天候時や貨物搭載量を増やす際、給油のために立ち寄る「テクニカルランディング」もウィーンなどで行える。

貨物搭載量どう確保?

 ロシア領空を飛行できない期間が長引くと、燃料を余分に積むことで減少する貨物搭載量をどう確保するかが課題だ。国際線の旅客需要が当面見込めない中、稼ぎ頭の貨物をどう維持するかが重要になってくる。

ルフトハンザもANAと同じ南回りで日本路線の運航を続けている=PHOTO: Tadayuki YOSHIKAWA/Aviation Wire

 JALの場合、アンカレッジ経由は1990年代に旅客便の運航が終わり、貨物便も2000年代に姿を消した。ロンドン線では、1986年4月2日からロシア領空を飛ぶフライトが始まっている。JALは現在アンカレッジに拠点を持っていないため、北回りでテクニカルランディングを実施する場合、シアトルなど定期便が乗り入れている北米の空港が有力だ。一方で、経由地が増えれば到着時間がさらに遅れることもあり、利便性やコストの面で当面は直行便で可能な対策から講じていく。

 今後は南回りの検討や、欧州路線の欠航で余剰となる機材を活用した貨物専用便の運航などの準備を進めていく。

 一方、ANAは南回りのルート上にあるウィーンに就航済みであることから、ワクチン輸送を担うブリュッセルとルフトハンザの本拠地であるフランクフルトを活用する。

 両社ともエンジンが2基の双発機による運航であるため、エンジン1基が不作動になった際のETOPS(イートップス)による運航時に、777や787といった中型機以上の航空機が離着陸できる空港を確保しながら飛行する必要がある。また、自社の機材を緊急時に整備できる空港を念頭にルートや運航スケジュールを組まなければならない。日本国籍機は5日時点でロシア領空を飛行できるが、ロシアの空港に緊急着陸した際、必要な部品を手配できないリスクが日に日に高まっていることが、両社ともロシアを迂回するようになった理由の一つだ。

 旧ソ連崩壊から30年以上が過ぎ、再びロシア情勢でルート変更を迫られた航空各社。高額と言われるロシアの領空通過料を支払う必要はないものの、長い飛行時間などデメリットが多い現状はいつまで続くのだろうか。

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