エアライン, ボーイング, 機体, 空港, 解説・コラム — 2021年7月26日 14:30 JST

片道3時間でフルフラットシート満喫 搭乗記・JAL羽田-石垣777-200ERクラスJ

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 日本航空(JAL/JL、9201)が羽田-石垣線にフルフラットシートを備えたボーイング777-200ER型機を8月31日まで投入している。今年3月まで中距離国際線に投入していた機材で、ビジネスクラスのフルフラットシートは国内線の中間クラス「クラスJ」として運用している。JALが同路線に大型機の777を投入するのは初めてで、片道約3時間は同型機が飛ぶ国内線でもっとも長いフライトになった。

JALの777-200ERのクラスJのテーブルにMacBook Proを置いた状態=21年7月16日 PHOTO: Tadayuki YOSHIKAWA/Aviation Wire

 JALは5機の777-200ERを国内線に転用しているが、2023年3月末までに全機退役させる計画で、2年間限定の運用となる。座席数はW63/W64配列の場合2クラス312席で、クラスJが26席、普通席が286席。クラスJの座席数は国内線仕様の777-200が82席、777の後継機エアバスA350-900型機が94席、787-8が58席、767-300ERが42席、737-800が20席なので、小型機の737と同程度の席数になる。

 ビジネスクラスだったクラスJのシートは、2016年6月に登場した「スカイスイートIII」。フルフラットシートを斜めに配置するヘリンボーン配列をJALでは初採用し、全席から通路へアクセスできるのが特徴で、横1列4席の1-2-1席配列となっている。普通席に通常はプラス1000円で乗れるクラスJとして販売されていることから、国内線でフルフラットシートを体験できるようになったので、私も7月16日の初便に乗ってみた。

ビジネスクラスシート「スカイスイートIII」がクラスJに=PHOTO: Tadayuki YOSHIKAWA/Aviation Wire

—記事の概要—
個室感のあるシート
保冷コンテナで生鮮品輸送

個室感のあるシート

 片道約3時間というと、東京-台北間と大差のない距離だ。JALが羽田-石垣線に777-200ERを投入するという記事を7月5日に掲載後、16日の初便の航空券を購入した。往路の羽田発石垣行きJL973便はクラスJで3万2190円、復路のJL974便は普通席で3万1190円だった。しかしこのままだと取材費が膨らんでしまうので、マイルから交換したeJALポイントを2万円分ずつ充当することにした。コロナ前と比べて売上が減少しているので仕方ない。

羽田空港で出発を待つ石垣行きJL973便の777-200ER=21年7月16日 PHOTO: Tadayuki YOSHIKAWA/Aviation Wire

ベッドポジションにしたJALの777-200ERのクラスJ=21年7月16日 PHOTO: Tadayuki YOSHIKAWA/Aviation Wire

JALの777-200ERのクラスJのテーブルにMacBook Proを置いた状態=21年7月16日 PHOTO: Tadayuki YOSHIKAWA/Aviation Wire

 初便の機材はJA710J。5機の777-200ERの中ではもっとも機齢が若い機体だ。羽田空港での搭乗順は9日からスタートしたグループ番号順だった。機内では先任客室乗務員が2列目中央席の乗客に頭上の手荷物収納棚がないため、窓側の棚を案内していた。また、この機体のクラスJでは離着陸時に足もとには荷物を置けないため、かばんは手荷物収納棚にしまった。

 席に座ると、国際線のビジネスクラスはこんな感じだったな、と少し懐かしい気持ちになった。私が最後に国際線を取材したのは2020年2月28日のJALの成田-ウラジオストク線就航で、この時に乗ったのはエコノミークラスだったので、ビジネスクラスのシートも久々だった。

 今回は窓側の4A席を取ったので、窓に向かった個室感のあるシートだった。ベッド長は最大約198センチ、ベッド幅は同74センチとゆとりがあり、同じ料金でクラスJに乗るならやはりこのシートだろう。水平飛行に入って周囲を見渡すと、ベッドポジションにしてくつろいでいる人もいた。私はこの日も原稿を仕上げる作業が残っていたので、背もたれを半分ほど倒した状態で過ごす時間が長かった。

 国際線のビジネスクラスシートのメリットは、ベッドになるだけではなく、物を置くスペースが広い点だ。窓側にサイドテーブルがあるので、ヘッドホンアンプを置いて音楽を聴きながら原稿をまとめた。機内Wi-Fiは国内線で使えるように改修してあったが、客室乗務員がつながりにくい場合があると案内していたので、重要な連絡は出発前に済ませておいた方が安全だろう。

 午後2時23分に出発したJL973便は、午後5時24分に石垣へ到着した。大気が不安定だったため、時折断続的な揺れがあったものの、飛行機に乗っていてよく遭遇するレベルの揺れだった。石垣は南国らしく天気は良いものの雨が降っていた。

JALの777-200ERのクラスJ=21年7月16日 PHOTO: Tadayuki YOSHIKAWA/Aviation Wire

羽田空港をD滑走路に進入する石垣行きJL973便の777-200ER=21年7月16日 PHOTO: Tadayuki YOSHIKAWA/Aviation Wire

JALの777-200ERのクラスJ=21年7月16日 PHOTO: Tadayuki YOSHIKAWA/Aviation Wire

保冷コンテナで生鮮品輸送

 展望デッキで復路のJL974便に積むコンテナを見ていると、ヤマト運輸のロゴが入った保冷コンテナが複数見られた。JALによると、16日のJL974便の貨物重量は8トンで、積荷は宅配や果物、野菜などだったという。大型化前の機材である737-800は貨物コンテナを搭載できず、積荷は最大2-3トンにとどまる。777-200ERの投入で要冷貨物を保冷コンテナで運べるようになり、沖縄離島の生鮮品を石垣から首都圏へ直接空輸できるようになった。

石垣空港に到着した羽田発JL973便の777-200ER=21年7月16日 PHOTO: Tadayuki YOSHIKAWA/Aviation Wire

石垣空港で羽田行きJL974便に積み込まれる保冷コンテナや貨物コンテナ=21年7月16日 PHOTO: Tadayuki YOSHIKAWA/Aviation Wire

 JL974便は普通席に乗った。47Aに座ったが、視界にギャレー(厨房設備)の壁が入り海外取材から帰国するような気分になった。クラスJではなかったものの、隣2席が空席だったため、トイレなどに行こうと思えばいつでも行ける気分的な安心感があった。

 普通席は横9席の3-4-2配列。夫婦や恋人同士、家族連れなど、さまざまな乗客のニーズに合わせ、各席から通路へ出入りしやすい配列を取り入れた。シートピッチは33から34インチ(約83.8から86.4センチ)で、国内線機材の31インチよりは余裕がある。最近は国内線機材にも増えてきたが、電源コンセントと充電用USB端子を備えている。

 JL974便は午後7時6分に出発し、午後10時に到着した。石垣を出発時はエプロンが雨にぬれて鏡のように駐機中の機体を映し出していた。羽田到着時は駐機場に飛行機がいたため、空くまで待っての到着となった。到着後は着席場所ごとの降機となったが、私の周辺のエリアでは降機の順番になるまで立ち上がる人はいなかった。

羽田行きJL974便の777-200ERの普通席=21年7月16日 PHOTO: Tadayuki YOSHIKAWA/Aviation Wire

羽田行きJL974便の777-200ERの普通席=21年7月16日 PHOTO: Tadayuki YOSHIKAWA/Aviation Wire

雨でエプロンが鏡のようになった石垣空港=21年7月16日 PHOTO: Tadayuki YOSHIKAWA/Aviation Wire

 翌17日は北海道エアシステム(HAC、NTH/JL)の札幌(丘珠)-奥尻線就航を取材するため、羽田から札幌までA350のクラスJに乗った。フルフラットシートのクラスJと比較するためだ。背もたれが体をしっかり支えるといった良さはあるが、やはり1人当たりのスペースの広さや、リビングでくつろぐような姿勢で移動できる点で、フルフラットシートのクラスJは好印象だった。

 全日本空輸(ANA/NH)も、787-8の中距離国際線仕様機(2クラス240席:ビジネス42席、エコノミー198席)の一部を羽田-札幌、福岡、那覇線などに投入。ビジネスクラスのエリアを国内線の上位クラス「プレミアムクラス」として販売しており、シートはほぼ水平になるライフラットシート「ANAビジネス・クレードル」で、国際線気分を味わえる。

 2023年3月末までの期間限定ではあるものの、普通席にプラス1000円でビジネスクラスのシートに乗れるJALの777-200ER。羽田-石垣線のほか、札幌、福岡、那覇の各線にも投入しているが、フルフラットシートを満喫するのが目的であれば飛行時間が長い路線が良さそうだ。

羽田空港に到着した石垣発JL974便の777-200ERから降ろされる保冷コンテナ=21年7月16日 PHOTO: Tadayuki YOSHIKAWA/Aviation Wire

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