エアライン, 解説・コラム — 2020年9月23日 09:55 JST

中越地震被災のANAパイロット、クラファンで九州豪雨支援 山古志出身・星野さん

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 今年7月に九州を襲った令和2年7月豪雨。これまでなら被災地にボランティアとして駆けつけるという選択肢があったが、新型コロナウイルス感染症(COVID-19)の影響で、県外の人が現地入りして支援をするのは難しい。「お金を出しておしまいではなく、クラウドファンディングに良いところがあると思ったんです」。こう話すのは全日本空輸(ANA/NH)の若手パイロット、星野寿樹(としき)副操縦士だ。

クラウドファンディングによる令和2年7月豪雨の被災地支援を立ち上げたANAの星野寿樹副操縦士=20年9月17日 PHOTO: Tadayuki YOSHIKAWA/Aviation Wire

 ANAのクラウドファンディングの枠組み「WonderFLY」を活用し、星野さんは9月から令和2年7月豪雨の被災地支援「ANAのパイロットが『今』できる事を考え日本中に元気を届けるプロジェクト」を始めた。オンライン航空教室などの返礼品を用意し、目標額100万円の寄付を目指している。「自分ひとりでは1000円とか1万円の寄付ですが、もっと多くの支援が届けられる方法があるのではないかと、クラファンに興味を持ちました」と話す星野さんは、16年前の大学受験時に被災した経験があった。

 クラファンを社内で立ち上げるまでの経緯や、これからパイロットを目指す人への思いを星野さんに聞いた。

仮設住宅で受験勉強

自らも受験生の時に中越地震で被災した星野さん=PHOTO: Tadayuki YOSHIKAWA/Aviation Wire

 星野さんは2014年1月に副操縦士となり、ボーイング777型機に乗務。2017年からはA320neoやA321neoなどのエアバスA320ファミリーに乗務している。今回、星野さんが九州豪雨の被災地支援を企画したのは、高校生だった時に自ら被災した経験があったからだ。2004年10月23日に新潟県を襲った中越地震により、山古志村(現長岡市)出身の星野さんは自宅が壊れて暮らせなくなり、仮設住宅での受験勉強を余儀なくされた。

 「全国から応援メッセージや支援をいただいて元気づけられました。今回の九州豪雨の被災地は、発災時に新型コロナで県外からボランティアが参加できない状況だったので、相当大変ではないかと感じてクラファンを立ち上げました」と、被災地支援の大切さをかつて感じた星野さんは、クラファンに関心を持った。単にお金を出すだけではなく、支援がどのように役立ったかなど、被災地支援以外のクラファンについて伝える記事を読み、自ら立ち上げる。

 ANAのWonderFLYは2016年に始まったもので、製品やサービスの開発、アイデア実現といった、どちらかというと起業家支援の分野からスタートした。実際、星野さんが社外も含めてクラファンについて調べ始めた時点で、WonderFLYには九州豪雨の被災地を支援するプロジェクトはなかった。

 気象庁は今回の豪雨を7月3日から31日までの期間としており、特に4日から7日は記録的な大雨が九州を襲った。星野さんは4日のニュースで被災地の状況を知り、かつて777に乗務していた時に指導を受けた機長に相談。準備を始めた。ちょうど社内プロジェクトの提案会が開かれる時期で、ANAの平子裕志社長にも説明し、実現に向けて動き出した。

シンプルに仕事が楽しい

星野さんが企画したクラウドファンディングによる令和2年7月豪雨の被災地支援を呼びかける職場のデジタルサイネージ=PHOTO: Tadayuki YOSHIKAWA/Aviation Wire

 今回のクラファンでは、特に被害が大きかった熊本をテーマにした航空教室を、ライブ配信やビデオ会議システム「Zoom(ズーム)」による最大10人までの少人数形式で開催。パイロットのお礼の手紙なども用意し、幅広く支援を募る。ライブ配信は11月7日、Zoomは翌8日に開催する。

 星野さんは会社が開く航空教室のスタッフとして参加したことはなかったが、YouTubeで航空教室の動画を制作したパイロットなども加わり、今回は40人程度の社員が関わるという。「熊本の魅力を知ってもらい、行こうかなと思ってもらえるものを目指しています」(星野さん)と、飛行機のことだけでなく、熊本の良さを熊本出身のパイロットが伝えるというコンセプトにした。

 参加者がパイロットになりきり、羽田から熊本へ向かうフライト中に発生するイベントに、どう対処するかといった、大人もなるほどと思えて楽しめるものを考えているという。

 ライブ配信とZoom会議の2種類を用意したのは、「クイズなど大人数で楽しめるものと、少人数で話せるメリットを考えました」と、参加者が航空教室に求める内容の違いに応じたプラットフォームを選んだそうだ。

 新型コロナの感染拡大により、就職活動する学生たちが航空会社やパイロットという職種に対して、将来をネガティブに捉えがちになっている。「よく考えると(航空の)ニーズがなくなったわけではありません。ハードルがある状態だと思います。実際に飛んでいると、シンプルに仕事が楽しい。魅力的な仕事です」と星野さんは話す。

 星野さんが立ち上げたクラファンは、9月30日までに100万円の支援を集めるのが目標。リターン準備などに必要な実費分を除き、全額を日本赤十字社などに寄付する。

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全日本空輸

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