MRJ, 機体, 解説・コラム — 2013年5月9日 21:17 JST

三菱航空機、MRJのシートを米ゾディアックに 国産採用ならず

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 三菱航空機は5月9日、開発中のリージョナルジェット機「MRJ」のエコノミークラスに、米ゾディアック・シート・カリフォルニアのシートを採用することを明らかにした。自動車用シートを手がけるデルタ工業(広島県)が開発した薄型シートは不採用となった。

デルタ製を採用予定だったエコノミークラスのシート=12年10月 PHOTO: Tadayuki YOSHIKAWA/Aviation Wire

 ゾディアックはすでにプレミアムクラス(ビジネスクラス)のシートも採用が決定していた。三菱航空機によると、今年2月にエコノミークラスのシートもゾディアックが供給することに決まったという。これにより、客席のシートはすべてゾディアックが供給する。

 デルタと三菱航空機ではシートの型式証明取得について、手順や分担に考えの相違があり、合意に至らなかった。デルタは自動車用シートの技術を生かして航空機分野への参入を目指していた。

 MRJではデルタの独自技術「3Dネット」により糸を立体的に編み込んだ薄型シートを採用予定だった。デルタが受注した2010年当時は薄型シートは珍しかったが、近年は海外のシートメーカーがエコノミークラス向けシートを薄型化していることも選定に影響したとみられる。

 日本国内企業による航空機シートの製造は、これまでKIホールディングス(旧小糸工業、6747)が国内外の航空会社に対し、ファーストクラスからエコノミークラスまで多様なシートを供給してきた。しかし、2010年2月に国交省航空局(JCAB)から耐火性試験の未実施について業務改善勧告を受け、その後11年6月には米国連邦航空局(FAA)と欧州航空安全局(EASA)から耐空性改善命令(AD)が出され、シート事業を大幅に縮小。こうした中で、デルタの新規参入による国産航空機シートの将来的な市場拡大が期待されていた。

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三菱航空機
デルタ工業
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