機体, 解説・コラム — 2019年5月14日 09:12 JST

航空機の電動化、ハイブリッドが当面主流に 特集・ロールスロイス スタインCTOに聞く(後編)

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 次世代航空機の姿を考える上で、電気飛行機などエンジンの電動化は大きなテーマだ。ロールス・ロイスは今年3月に、ガスタービンエンジン「M250」を使ったハイブリッドシステムの地上実証試験に成功。2021年に実施予定の試験飛行に向け、弾みを付けた。

航空機用エンジン電動化の研究を進めるロールス・ロイス。ヘリなどのハイブリッド化から始まり中大型機はしばらく先になりそうだ=PHOTO: Tadayuki YOSHIKAWA/Aviation Wire

 M250は、固定翼軍用機や民間機、ヘリコプターなどに採用されている。今回の地上試験では、ハイブリッド版M250を機内電池システムを充電するタービン発電機として機能させる「シリーズ・ハイブリッド」、機体の推進力をエンジンと電気システム双方から得る「パラレル・ハイブリッド」、エンジンをタービン発電機として使う「ターボエレクトリック」と、3種類の運転モードでテストした。

 このシステムは、500キロワットから1メガワットの出力を持つ推進プラントとして使用することを想定。リージョナル機向けなどには、より大型のAE 2100 2.5メガワットシステムを開発中で、エアバスのE-Fan X試験機で試験が行われている。

 本特集の前編では、エアバスA380型機やA350 XWBなどが採用するロールス・ロイスのエンジンについて、同社の技術研究分野を統括しているポール・スタインCTO(最高技術責任者)に現状と今後を聞いた。後編では、電気航空機の将来像などを取り上げる。

電気飛行機の主流は当面ハイブリッド

── 民間機向けエンジンの電動化プロジェクトの進捗を教えて欲しい。

電気飛行機の将来像を語るロールス・ロイスのスタインCTO=PHOTO: Tadayuki YOSHIKAWA/Aviation Wire

スタイン氏:電気航空機は3つのサイズで考えている。

 一つ目は短距離で、ヘリコプターのエンジンをカバーする規模だ。二つ目はリージョナル機で、乗客数20人から90人程度、航続距離1000キロ程度の機体、三つ目は中大型機だ。

 一つ目については、英国のスタートアップ企業と研究を進めており、いろいろなメーカーと話をしている。2021年ごろから飛ぶこともあり得るが、パートナー企業の意向によるところがある。

 二つ目は、リージョナルジェットやエアバスのE-Fan Xのサイズで、発電機がファンと組み合わせて動くことで2メガワットの電力を発電できる。ロールス・ロイスとエアバスが、こうした動力が使えることを証明していく。実際に使われるのは、2025年から2030年の間のどこかになるのではないか。

 三つ目の中型機から大型機については、ゆっくりとした電動化になるだろう。実際に使われることは2030年まではない。

── 100席前後の旅客機が電動化されるのはいつ頃になると見ているか。

スタイン氏:プロペラ機の変化はゆっくりだろう。電動化システムを搭載すれば燃費が良くなり、短い滑走路でも離着陸できるようになるだろう。

 ロールス・ロイスとしては、リージョナルジェット市場がまだまだ成長するだろうと考えている。

── 航空機は将来、ハイブリッドからフル電動化に進むのか。

スタイン氏:ノーだ。もっとも小さい機体以外は、ハイブリッドを何年も使い続けるだろう。バッテリー技術が求められるペースに合わせて進化していくかはわからないが、ハイブリッドを中心に考えている。

 しかし、もっとも小さいサイズで飛行距離が短い航空機については、ピュアエレクトリック化はあるだろう。練習機は電気飛行機になるかもしれない。長距離を飛行する航空機は、今後少なくとも15年は純粋なガスタービンエンジンだろう。

  ◇ ◇ ◇

 今後の航空機用エンジンの進化について、スタインCTOの話を総合すると、次世代エンジンを採用した機体が飛ぶのが2025年から2030年ごろ。A350のような大型機は、2035年ごろまでは電動化されることはなさそうだ。

 一方で、ヘリコプターのようなサイズは同時期にハイブリッド化が進むとみられ、練習機のように限られた用途の機体については、電気飛行機が採用される可能性もゼロではないだろう。

 ガスタービンなどのエンジンを手掛けてきたロールス・ロイスは、今後どのように航空機を進化させていくのだろうか。

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