エアライン, 解説・コラム — 2017年8月4日 11:55 JST

「ベトジェットにノウハウ提供するビジネス」JAL藤田副社長に聞く包括提携の狙い

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 航空会社にとって、海外でどのパートナーと組むかは戦略を左右する重要な要素だ。そして、長年組んできたパートナーが離れた場合、代わりを探すのが難しい。海外の場合、フルサービス航空会社(FSC)が複数存在したとしても、日系航空会社と組めるレベルの会社は、国営航空会社など限定されるケースが多い。

 こうした中、日本航空(JAL/JL、9201)はベトナムでのパートナーとして、LCCのベトジェット航空(VJC/VJ)を傘下に持つベトジェット・アビエーション・ジョイント・ストック・カンパニーと、包括的業務提携の実施に向けた覚書を7月25日に締結。2018年以降、相互にコードシェア(共同運航)を行うほか、マイルによるサービスなども提携対象として検討していく。

ベトジェットのタオCEO(後列右から3人目)らが並ぶ中、覚書を交わすベトジェットのカーン氏(前列左)と藤田副社長=17年7月25日 PHOTO: Tadayuki YOSHIKAWA/Aviation Wire

 JALはベトナムのパートナーとして、フラッグキャリアであるベトナム航空(HVN/VN)と提携し、コードシェアを実施していた。しかし、全日本空輸(ANA/NH)を傘下に持つANAホールディングス(9202)が、ベトナム航空に約8.8%出資する資本・業務提携を、2016年5月28日に締結。これに伴い、ベトナム航空はJALとの提携を同年10月29日までの夏ダイヤ限りで解消した。

 ベトジェットは2011年12月に就航したベトナム初の民間航空会社で、同国初のLCC。ベトナム航空に次ぐ同国第2位の航空会社で、2015年からはラウンジや優先搭乗などの上級サービスを提供する「スカイボス(SkyBoss)」を設け、JALのようなFSCとLCCの間のサービスを目指している。日本へは2014年12月30日に、関西空港へチャーター便が初めて乗り入れたが、定期便は就航しておらず、提携後は乗り入れ実現を目指す。

 ベトジェットと組んだ狙いはどこにあるのか。提携を発表したホーチミンへ向かう際、ベトジェットに乗ったJALの藤田直志副社長に、感想や今後の戦略を聞いた。

── ベトジェットはLCCだが、乗った感想は?

JALの藤田副社長=17年7月25日 PHOTO: Tadayuki YOSHIKAWA/Aviation Wire

藤田副社長:まだデビューしたてで、経験をこれから積んでいくという感じだ。新しい上級サービスのスカイボスも、まだ始まったばかりで、20年前にベトナム航空と組んだときのような感じだった。

 提携がいきなり利益とかプロフィットにつながるということではないが、ベトジェットと一緒に成長していきたい。成長するベトナムというマーケットで、少し長い目で見ていく。

── 訪日需要の取り込みとベトナム以遠への送客では、現時点でどちらを重視しているのか。

藤田副社長:私たちからすると、ベトナムから来るお客様にJALの国内線に乗り継いでもらい、地方を訪れてもらいたい。

 ベトナム国内でベトジェットとどうコードシェアするかは課題だが、価格とサービスをJALのお客様にどう提供するか。当然安い価格になると思うし、ベトジェットのサービスは手荷物の扱いなど価格とサービスが連動しているので、「このサービスをこの価格でどうですか」という提携の仕方になるだろう。

── 包括提携の中には、コードシェアやマイル提携、グランドハンドリングなども含まれているが、いつから何を始めていくことになりそうか。

ベトジェットのA321とA320=17年7月25日 PHOTO: Tadayuki YOSHIKAWA/Aviation Wire

藤田副社長:2018年からコードシェアを始めることになるだろう。マイルはベトジェットがプログラムを持っていないので、これからだ。

 コードシェアをやるときも、MoU(覚書)を締結したので、ベトジェットの人にJALの訓練センターを見学してもらったり、(グランドハンドリング会社の)JGSを見てもらったりするだろう。見学すると、結構驚くこともあると思う。こうしたことは覚書にサインしないとできなかったことだ。

 先程も、JALのオペレーションセンターや整備の現場を見たいという要望がベトジェットからあった。こういう現場に近いところから始まるのだと思う。

 出来上がった航空会社同士が提携するというよりも、これから機材も増やして成長していきたいのがベトジェット。規模の大きいエアラインのマネジメントについて、運航や整備のノウハウをJALが提供するビジネスもあると思う。

 中期経営計画にあった「新しい事業領域」に、こうしたことが入ってくると思う。

── エアラインに対して、JALのノウハウを提供していくビジネスということか。

藤田副社長:そうだ。東南アジアで新しい航空会社が誕生しているので、オンタイムでどうやって飛ばすかや、パイロットや客室乗務員の訓練など、(JALのノウハウが求められる場面は)どんどん増えていくのではないか。

 すぐにJALの収益に影響することはあまりないと思うが、5年先、10年先にやっててよかったなとなると思う。ベトジェットには良い会社になって欲しいので、上から目線ではなく一緒に成長していきたい。

── JALは2012年4月からLCCとFSCの中間のサービスを提供する米国のジェットブルー(JBU/B6)と提携している。FSCとLCCというビジネスモデルの違いよりも、実利を見ているように感じた。

藤田副社長:ジェットブルーは、ボストンでの乗り継ぎをどうするかだった。アメリカン航空(AAL/AA)は少し弱かった。ジェットブルーの社長と会ったところ、考え方やコンセプトが合い、JALと一緒にやりたいということでスタートした。

 ベトジェットの提携は、このジェットブルーとの関係に近い。

── ベトジェットにはいつごろ日本に就航して欲しいか。

藤田副社長:すぐ(笑)。しかし、日本に乗り入れるのは認可などが大変なので、早めに教えてもらって準備を手伝いたい。整備についても、求められるものが厳しい。

 今回の提携では、こうした部分も含まれている。(日本政府が目標に掲げる2020年の)年間4000万人の訪日客という目標を達成するには、ベトナムのような親日国から呼び込むことが必要だ。

 グランドハンドリングの人材も、ピーク時には不足しているので、こうした地道な提携も進めていきたい。

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