エアライン, ボーイング, 機体 — 2017年2月27日 20:35 JST

JAL、新訓練方式の副操縦士誕生 27日から乗務開始

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 日本航空(JAL/JL、9201)は、訓練効率を向上させ、訓練期間を短縮した新方式「MPL(マルチクルー・パイロット・ライセンス)」で合格した副操縦士5人に、2月21日付で辞令を交付した。このうちの1人が、27日から乗務を開始した。

操縦席で計器を確認する大地機長(左)と先崎副操縦士=17年2月27日 PHOTO: Yusuke KOHASE/Aviation Wire

訓練期間を半年短縮

運航本部長の進俊則専務と握手する先崎副操縦士(左から2番目)=17年2月21日 PHOTO: Yoshikazu TSUNO/Aviation Wire

 MPLは、訓練の初期段階から機長と副操縦士の2人乗務(マルチクルー)を前提に訓練することで、航空会社のパイロット養成に適したもの。従来よりも訓練期間が約半年短縮されるほか、2人のパイロットがチームで運航する能力を訓練の初期段階から身につけられる。

 27日から乗務を開始したのは、先崎辰彦(せんざき・たつひこ)副操縦士(34)。乗務初便となったのは羽田発徳島行きJL457便(ボーイング737-800型機、登録番号JA313J)で、羽田第1ターミナル12番スポットを定刻より5分遅れの午前11時45分に出発し、乗客162人(ほか幼児2人)が利用した。先崎副操縦士は、大地真吾(おおち・しんご)機長と乗務した。

 同機は徳島着後、JL458便として羽田に折り返した。JL458便は定刻午後1時40分に徳島を出発し、羽田には午後2時50分に到着。乗客89人(ほか幼児0人)が利用し、往復ともパイロット2人、客室乗務員4人が乗務した。

4工程のうち2工程を米国で

羽田発徳島行きJL457便の搭乗口に向かう大地機長(左)と先崎副操縦士=17年2月27日 PHOTO: Yusuke KOHASE/Aviation Wire

 MPLは、2006年にICAO(国際民間航空機関)で規定され、日本でも2012年に法制化された制度。海外では複数の航空会社で導入され、すでにMPLを取得した副操縦士が運航に従事している。

 JALは2014年4月から導入。これまでは約36カ月かかっていた養成期間を、約26カ月から30カ月に短縮できるようになった。MPL訓練を導入するのは、日本の航空会社ではJALが初めて。2014年夏からは全日本空輸(ANA/NH)も導入している。

 JALは、カナダの航空機シミュレーター大手CAEが100%出資する世界最大級のパイロット訓練機関、英COAA(CAEオックスフォード・アビエーション・アカデミー・フェニックス)と契約を締結。4段階ある訓練課程のうち、初期の2段階をCOAAに委託し、米アリゾナ州フェニックスで訓練を実施する。

 JALのMPL訓練では、当初より乗務する航空機を737に特定し、4つのフェーズで訓練を進める。国内での座学後、フェニックスに渡り、1段階目が小型単発プロペラ機による訓練「コア・フェーズ」、2段階目が小型双発ジェット機によるマルチクルー運航の基礎と計器飛行訓練「ベーシック・フェーズ」を進める。

 3段階目からは国内に戻り、JALのジェット機運航に関する訓練「インターメディエート・フェーズ」、4段階目は、JALが運航するジェット機の型式限定ライセンス取得訓練「アドバンスト・フェーズ」を実施。訓練生は、機長と副操縦士とともに実際の路線に乗務し、6カ月程度の訓練後、副操縦士となる。

 MPL訓練は、従来方式よりも訓練期間が短縮されるが、航空会社で求められる2人のパイロットがチームで運航する能力が、初期段階から身につくことを重視している。

 JALは2010年1月の経営破綻後、同年6月にパイロット養成訓練の延期が決定。破綻前後に入社した訓練生は、一度もパイロットとしての訓練を受けず、地上業務に就いていた。2010年4月までに入社したパイロット希望者は、全員訓練生となっている。2014年4月の再開時にはMPL訓練を適用し、すでに途中まで進んでいた訓練生は、従来方式で訓練を再開している。

MPL出身者は日本初

 先崎副操縦士は2008年4月入社。大阪空港支店総務グループに配属後、2009年5月から運航乗員訓練査察部で操縦士訓練生となった。2010年6月の養成訓練延期後の同年10月、先崎副操縦士はJALスカイに出向し、乗務企画職に職種を変更して運航管理者などの航務に携わっていた。

 その後、JALは2012年10月にパイロット訓練の再開を決定。先崎副操縦士は、2014年4月から運航訓練部で操縦士訓練生としてトレーニングを重ね、2017年2月にMPL訓練の出身者として初めての副操縦士となった。

 先崎副操縦士は、乗務初便となったJL457便搭乗前に「緊張している」と話し、徳島へ向かった。羽田帰着後は「訓練中は家族に支えてもらった。家族とお祝いしたい」と緊張が解けた様子で話した。

*写真は11枚

辞令を受けた先崎副操縦士(左)ら5人の副操縦士=17年2月21日 PHOTO: Yoshikazu TSUNO/Aviation Wire

羽田発徳島行きJL457便のブリーフィングをする大地機長(左)と先崎副操縦士=17年2月27日 PHOTO: Yusuke KOHASE/Aviation Wire

利用客に一礼して搭乗口に向かう大地機長(左)と先崎副操縦士=17年2月27日 PHOTO: Yusuke KOHASE/Aviation Wire

客室乗務員と羽田発徳島行きJL457便のブリーフィングをする先崎副操縦士(左)=17年2月27日 PHOTO: Yusuke KOHASE/Aviation Wire

羽田発徳島行きJL457便の出発準備を進める先崎副操縦士=17年2月27日 PHOTO: Yusuke KOHASE/Aviation Wire

羽田発徳島行きJL457便の操縦席から手を振る大地機長(右)と先崎副操縦士=17年2月27日 PHOTO: Yusuke KOHASE/Aviation Wire

徳島に向けて羽田を出発するJL457便=17年2月27日 PHOTO: Yusuke KOHASE/Aviation Wire

徳島に向けて羽田を出発するJL457便=17年2月27日 PHOTO: Yusuke KOHASE/Aviation Wire

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