国土交通省航空局(JCAB)は、国内線のネットワーク維持に向け、スカイマーク(SKY/BC、9204)など「特定既存航空会社(旧・新規航空会社)」と呼ばれる中堅航空会社に対する大手の出資規制を廃止する案を示した。規制が撤廃されると、20%以上出資できるようになり、経営への関与を強めやすくなる。羽田空港の発着枠回収も保有枠の1割以内に抑え、路線網への影響は最小限に抑えられる。

中堅4社への出資規制見直しが議論されている=PHOTO: Tadayuki YOSHIKAWA/Aviation Wire
羽田空港の発着枠区分として設けてきた「特定既存優遇枠」も廃止し、今後は「自由枠」や「地方枠」として扱う方向を示し、5月までに取りまとめる。
特定既存航空会社は、スカイマークのほか、スターフライヤー(SFJ/7G、9206)、エア・ドゥ(ADO/HD)、ソラシドエア(SNJ/6J)の計4社で、規制緩和により1990年代以降参入した。全日本空輸(ANA/NH)を傘下に持つANAホールディングス(ANAHD、9202)は、スカイマークとスターフライヤーには直接12-13%台の出資をしており、エア・ドゥとソラシドエアは共同持株会社「リージョナルプラスウイングス(RPW)」を通じて間接的に関与し、特定4社すべてと実質的な資本関係がある。
ANAは、スカイマーク以外の特定3社とはコードシェア(共同運航)を実施。一方で、日本航空(JAL/JL、9201)は特定4社には出資していないことから、羽田を発着する国内線の競争環境への影響も論点になりそうだ。
—記事の概要—
・ANAは特定4社出資
・共同経営の判断基準
ANAは特定4社出資
航空局は「国内航空のあり方に関する有識者会議」の第4回会合を3月6日に開き、出資規制を廃止する案などを示した。
2025年9月末の時点で、スカイマークはフジドリームエアラインズ(FDA/JH)を傘下に持つ鈴与(静岡市)系の投資ファンドが筆頭株主(持株比率13.04%)で、第2位のANAHDは12.96%出資。スターフライヤーはANAHDが筆頭株主で13.61%出資、共同持株会社RPW傘下のエア・ドゥとソラシドエアは、RPWに筆頭株主の日本政策投資銀行(DBJ)が25.86%、第2位のANAHDが15.32%出資している。
現行制度では、大手航空会社が特定既存航空会社の議決権を20%以上実質保有した場合や、大手航空会社の者が全役員の4分の1を超えた場合は、特定既存優遇枠をすべて回収する仕組みとなっている。新規参入および特定既存航空会社が運航する羽田発着便は、大手航空会社がコードシェア(共同運航)で販売できる座席数も、全提供座席数の2分の1以下に制限している。
航空局は、世界的な物価高や円安で外貨建てコストが増大し、実質的に国内専業の特定4社の営業費用が2018年度比で26%上昇したと説明。海外では合併や経営統合など、経営面での連携を深めてコスト上昇に対応する事例がある一方、日本では出資規制があるため、こうした取り組みが進めにくい状況にあると指摘した。
出資規制を廃止後は、大手航空会社による出資比率が20%を超える場合のほか、大手航空会社の者が全役員の4分の1を超える場合や、大手航空会社と特定既存航空会社が合併する場合などに、一定の発着枠を回収・再配分する案を示した。
発着枠回収は、保有枠の10%を超えない必要最小限の範囲とし、1日3便以下の路線の発着枠は対象外にする。合併などに伴い、発着枠の第三者使用が生じる場合は、その期間中は航空局が発着枠を留保する考えも示した。回収した発着枠は、出資比率拡大などに関わらない他の特定既存航空会社に再配分するとした。
航空局によると、過去の発着枠回収でネットワークへの影響が最小限の範囲が5-10%程度とされているという。

特定既存航空会社をとりまく制度(国交省の資料から)

特定既存航空会社をとりまく制度(国交省の資料から)
また、前回論点となった特定既存航空会社に関するルールを議論するため、今回の会議は「羽田発着枠配分基準検討小委員会」と合同で開催した。航空局は、特定既存優遇枠について、競争促進と新規参入航空会社の育成を目的に、1997年から2011年まで計88枠を配分してきたが、「保有機材12機未満」を基準とした優先配分は、各社がおおむね達成し、直近15年は配分していないと説明した。
このため、特定既存優遇枠は役割を終えたとして、ネットワーク維持の観点から、航空会社が自由な経営判断を行えるよう、出資規制の廃止を提案した。

特定既存航空会社に係る制度のあり方について(国交省の資料から)

出資規制を廃止する場合の今後の羽田発着枠の取扱い(国交省の資料から)
共同経営の判断基準
また、利用者利便の向上に資する航空会社の取り組みとして、前回第3回会議で示した3つの路線区分のうち、離島路線(類型1)と幹線(類型3)を除いた「住民の経済活動において重要な路線(類型2)」での共同経営の判断基準も議論した。
路線収支が将来の見通しを含めて赤字であり、航空路線があることで2地点間の同日往来が可能となる路線が対象。一方、羽田、成田、新千歳、大阪、関西、福岡、那覇の各空港を相互に結ぶ幹線は、共同経営の対象路線から除く方向を示した。
運賃のモニタリング調査も、6月1日から始める方針を示した。競争環境の変化の中で、各社の運賃設定や販売行動が利用者利便や公正な競争を損なっていないか確認し、販売運賃の推移や損益分岐点を分析する。
関連リンク
国土交通省
【マイル改定・国内線赤字】JALとANAが過去最高売上も国内線は赤字(YouTube)
有識者会議
・国内線は「赤字体質」出張減とドル建てコスト増で航空各社苦境、国交省有識者会議が初会合(25年5月31日)
IATA事務総長の見方
・日本の国内線「航空会社多すぎない」IATA事務総長、成長鈍化も「重要な市場」(25年12月10日)
系列越え
・ANAとJAL、グラハン7資格を相互承認 地方10空港でマーシャリングや牽引など(24年5月14日)
・ANA/JAL系列越えコードシェア、九州でスタート 離島路線維持で(22年10月30日)
機材小型化
・ANAはなぜエンブラエルを選んだのか 完結編・どうなるスペースジェット跡目争い(25年2月26日)
・JAL、A321neo初導入 赤坂社長「人口減少は止めようがない」特集・767国内線後継をなぜ小型化するのか(24年3月21日)

