官公庁, 機体, 解説・コラム — 2019年1月21日 20:20 JST

防衛省、韓国と協議打ち切り P-1へ火器管制レーダー照射「真実究明至らない」

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 2018年12月20日に日本海の排他的経済水域(EEZ)内で発生した、韓国海軍駆逐艦「クァンゲト・デワン(広開土大王)」による海上自衛隊P-1哨戒機への火器管制レーダー照射問題について、防衛省は1月21日、P-1が探知した火器管制用レーダー音を公開した。同時に最終見解を日本語と英語、暫定翻訳の韓国語で公表し、「実務者協議を継続しても、真実究明に至らない」と、協議を打ち切る姿勢を示した。

—記事の概要—
過去3回は問題提起なし
韓国の主張「一貫せず信頼性欠ける」

過去3回は問題提起なし

 火器管制レーダーはミサイルなどを命中させるため、目標へレーダー波を継続的に照射し、位置や速度などを正確に把握するためのもの。同レーダーの照射は武器の使用前に実施するもので、合理的な理由なしに他国機へ向けることは「不測の事態を招きかねない極めて危険な行為」(防衛省)とした。

海上自衛隊のP-1哨戒機=17年6月22日 PHOTO: Tadayuki YOSHIKAWA/Aviation Wire

レーダーの種類と特徴(防衛省の補足説明資料から)

 また、日本や韓国を含む21カ国の海軍などで、2014年に採択したCUES(洋上で不慮の遭遇をした場合の行動基準)では、火器管制レーダー照射は「攻撃の模擬とされ、指揮官が回避すべき動作の一つとして規定されている」と、国際的な規定に触れた。

 韓国側は日本側が火器管制レーダーの照射を指摘した際、「捜索用レーダーだ」と反論した。防衛省は今回、捜索用レーダー波を音に変換したものも合わせて公開。P-1が探知したものが韓国駆逐艦の火器管制用レーダー「STIR-180」からのレーダー波であるとの客観的な事実を提示した。

 韓国側は、「人道主義的救助作戦」に従事していた韓国駆逐艦に、P-1が低空で脅威を感じさせる飛行をしたと主張。これに対して防衛省は、「国際民間航空条約に則った我が国航空法に従って飛行しており、韓国駆逐艦に脅威を与えるような飛行は一切行っていない。韓国駆逐艦にもっとも接近した際でも、十分な高度(約150m)と距離(約500m)を確保しており、韓国駆逐艦の活動を妨害するような飛行も行っていない」と反論した。

 また、「クァンゲト・デワン」に対しては2018年4月以降、4月27日と4月28日、8月23日の3回、今回と同様の撮影を行ったが、「韓国側から問題提起を受けたことはない」と説明した。いずれももっとも近づいた距離は約500mから550m、高度は約150mと、今回と同様だった。

クァンゲト・デワンに対する飛行実績(防衛省の補足説明資料から)

韓国の主張「一貫せず信頼性欠ける」

 P-1は火器管制用レーダー照射を受けた後、国際VHF(156.8MHz)と緊急周波数(121.5MHzおよび243MHz)の3周波数を使い韓国駆逐艦へ呼びかけたが、「同艦からは一切応答がなかった」と、改めて無線応答がなかったことに触れた。

P-1飛行概要のイメージ(防衛省の補足説明資料から)

 韓国側は「現場の通信環境が悪かった」と主張しているが、防衛省は「晴天で雲も少なく、通信環境は極めて良好」とし、韓国駆逐艦に呼びかけた同じ通信機器で埼玉県の陸上局と通信を行っていたことや、現場から約240km離れた場所を飛行していた航空自衛隊の練習機が、この呼びかけを受信していたことを明らかにした。

 防衛省は韓国側の主張に対し、「通信が明瞭に受信できなかったとは通常では考えられない」「韓国側が公表した動画では、韓国駆逐艦内でP-1の乗組員の呼びかけ内容を明確に聞き取れる」と論破した。

 また、「主張が一貫しておらず信頼性に欠ける」「客観的根拠に基づいていない説得力を欠いたもの」「重要な論点を希薄化させるためのもの」と、二転三転してきた韓国側の主張を一蹴。「これ以上実務者協議を継続しても、真実の究明に至らない」「協議を韓国側と続けていくことはもはや困難」と、協議打ち切りの背景を説明した。

関連リンク
韓国海軍艦艇による火器管制レーダー照射事案(防衛省)
韓国海軍艦艇による火器管制レーダー照射事案について(防衛省)
Regarding the incident of an ROK naval vessel directing its fire-control radar at an MSDF patrol aircraft(Ministry of Defense)
한국해군 함정에 의한 화기관제 레이더 조사 사안 관련 (잠정적 번역)(방위성)
韓国海軍艦艇による火器管制レーダー照射事案について(YouTube、13:07)

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