エアライン, 空港, 解説・コラム — 2016年6月8日 11:30 JST

「日本人は高いサービス水準求める」CAPA、北東アジアLCCサミット開催

By
  • 共有する:
  • Print This Post

 北東アジアのLCCトップが一堂に会する会議「CAPA LCC イン ノースアジア サミット 2016」が6月7日、千葉県成田市内で開幕した。航空市場に特化したシンクタンクの豪CAPAが主催するもので、8日まで北東アジアにおけるLCCの現状を意見交換する。

LCC北東アジアサミットで挨拶するNAAの夏目社長=16年6月7日 PHOTO: Tadayuki YOSHIKAWA/Aviation Wire

18年度までに成田のLCC比率30%

LCC北東アジアサミットでパネルディスカッションに参加する国交省の平垣内審議官=16年6月7日 PHOTO: Tadayuki YOSHIKAWA/Aviation Wire

 2012年から国内LCCが就航する成田空港を運営するNAA(成田国際空港会社)の夏目誠社長は、「本邦4社と海外11社のLCCが就航している。旅客便の離発着回数に占めるLCCの割合は2015年度は25.1%だったが、2016年度は27%程度と予想しており、2018年度までには30%以上を目指す。成田の成長にLCCは不可欠だ」と、開催のあいさつをした。

 また、国内線の利用者数が国内LCC就航前の2011年度が192万人だったのに対し、2015年度は全国6位となる700万人にのぼった。夏目社長は、「国際線主体だった成田が確実に変わりつつある。首都圏唯一のLCCターミナルを持つ空港として、拠点化対策を進めていく」と、LCC誘致を推進すると語った。

 成田では1時間当たりの発着回数を、現在の68回から2018年度までに72回へ拡大する。

 国土交通省航空局(JCAB)からは、平垣内久隆・大臣官房審議官が招かれた。空港民営化の狙いについて「我々が説明できないものをやっていただく」と述べ、「日本政府はLCCにフレンドリーだ」と、政府としてLCC誘致を後押しする姿勢を示した。

新市場創出した国内LCC

 国内LCC 4社のトップも登壇。現状や自社の特徴をプレゼンテーションした。

 国内初のLCCであるピーチ・アビエーション(APJ/MM)の井上慎一CEO(最高経営責任者)は、「日本のLCC市場はフルサービス航空会社と競合しておらず、新しい市場を作り出した」と説明した。

 井上CEOは、ピーチの成功について「空港と自治体・地元企業・航空会社がうまく機能した。これを“関西モデル”と呼んでおり、来年は仙台でも実現したい」と、2017年に拠点化する仙台空港でも、同様の手法を展開していく考えを示した。

LCC北東アジアサミットでプレゼンテーションするピーチ・アビエーションの井上CEO=16年6月7日 PHOTO: Tadayuki YOSHIKAWA/Aviation Wire

 2016年度3月期決算で黒字転換を果たしたバニラエア(VNL/JW)の石井知祥会長は、「前年度比で2015年度はユニットレベニュー(座席キロあたり旅客収入)が14%増加し、ユニットコスト(座席キロあたり運送費用)は18%減少し、ロードファクター(座席利用率)は6.6ポイント上昇して85.5%になった」と説明。LCCナンバーワンの品質と成田でナンバーワンを目指すと語った。

 また、アジア太平洋地域のLCC 8社による航空連合「バリューアライアンス」加盟など、LCCとして新しいモデルを目指すとした。

LCC北東アジアサミットでプレゼンテーションするバニラエアの石井会長=16年6月7日 PHOTO: Tadayuki YOSHIKAWA/Aviation Wire

 2012年7月、成田へ最初に就航したジェットスター・ジャパン(JJP/GK)の片岡優会長は、「5月で累計搭乗者数が1400万人を超え、国内最大となる20機のエアバスA320型機を運航し、便数も1日100便以上で最大だ」と説明した。

 片岡会長は「コンビニエンスストアでの航空券販売や、スマートフォンのアプリを使った取り組みも進めている。成田ではLCCは難しいのではと言われたが、我々のビジネスモデルは間違っていなかった」と語った。

LCC北東アジアサミットでプレゼンテーションするジェットスター・ジャパンの片岡会長=16年6月7日 PHOTO: Tadayuki YOSHIKAWA/Aviation Wire

 国内LCCでは最後発となる春秋航空日本(SJO/IJ)の王煒(ワン・ウェイ)会長は、「中国からの訪日客はまだまだ増やせる。多くの中国人が香港を訪れているが、香港にあるものは日本にもあり、日本に対する顧客満足度が高い」と述べ、中国本土から日本への送客を強化する考えを述べた。

 今後の展開については、「中部空港がある常滑市にホテルを建設しており、バス事業や人材育成を進める」と語った。

LCC北東アジアサミットでプレゼンテーションする春秋航空日本の王会長=16年6月7日 PHOTO: Tadayuki YOSHIKAWA/Aviation Wire

高いサービス水準求める日本人

 1日目は、LCC研究を手掛ける東京工業大学大学院の花岡伸也准教授がモデレータを務めるパネルディスカッションが開かれた。

 パネルディスカッションには、ジェットスター・ジャパンの片岡会長やピーチ・アビエーションの森健明COO(最高執行責任者)、バニラエアの山室美緒子・企画部兼経営戦略グループシニアマネージャー、春秋航空日本の王会長、アマデウスのCyril Tetazヴァイスプレジデントが登壇した。

東工大の花岡准教授(右)がモデレーターを務めたパネルディスカッションに参加する(左から)バニラの山室氏、アマデウスのTetaz氏、ピーチの森氏、ジェットスターの片岡氏、春秋航空日本の王氏=16年6月7日 PHOTO: Tadayuki YOSHIKAWA/Aviation Wire

 花岡准教授が、国内の人口減少や新幹線との競合、フルサービス航空会社との競合といった国内市場の特徴を話題に挙げ、日本でLCCが成功する道筋を探った。

 森COOは、「この運賃であれば、このサービスであろうというレベルを上回ることが大切。何かをカットするものではない」と語った。

 山室シニアマネージャーは、「質が担保されないといけない。ほとんどの日本人はサービスに非常に高い水準を要求する」と、日本の特性を語った。

 王会長は「日本人の特別な性格はあるが、誰でも安くて良いものを求める。安かろう悪かろうではダメで、我々がやらなければならないものは安くて良いもの」と述べた。

 また、片岡会長は「乗客にチェックインを早くしてもらうなど、オペレーションも重要」と買った。

関連リンク
CAPA
成田国際空港
ピーチ・アビエーション
ジェットスター・ジャパン
バニラエア
春秋航空日本
国土交通省

成田LCCターミナル、開業1周年 600万人利用(16年4月8日)
ピーチ、ウナギ味ナマズの機内食 700食限定、近大が開発(16年5月18日)
ジェットスター・ジャパン、成田-マニラ就航 里帰り需要狙う(16年3月16日)
バニラエア、那覇-台北9月就航 第2拠点化推進(16年5月25日)
春秋航空日本、初の国際線就航 成田-武漢線(16年2月13日)