エア・カンボジア(KHV/K6)は、冬ダイヤ初日の10月26日にプノンペン-成田線を中国の福州経由で開設し、日本市場に初参入する。前身は国営航空会社だったが、現在はカンボジア政府、中国の国営企業、ベトナム航空(HVN/VN)と3カ国の合弁会社となった。成田線の旅客構成はビジネス・観光・VFR(親族訪問)が3分の1ずつ、直行便化はボーイング737 MAXを導入後の2029年以降を見込む。

エア・カンボジアのケビン・リー東京支店長=25年10月15日 PHOTO: Tadayuki YOSHIKAWA/Aviation Wire
—記事の概要—
・コロナで中国資本参画
・プノンペン新空港へ
コロナで中国資本参画
エア・カンボジアは、カンボジア王室と首相の専用便の運航する国営航空会社ロイヤル・エア・カンボッジが前身。カンボジア政府が1956年に設立したが、2001年9月11日に米国で起きた同時多発テロの影響で翌10月に運航を停止した。その後、2009年7月にカンボジア政府とベトナム航空が新たな国営航空会社「カンボジア・アンコール航空」を設立したが、新型コロナの影響で2020年4月にベトナム航空が保有していた49%の同社株を売却し、新たに中国国営の河南航空投資グループが参画して3カ国が出資する形になり、今年1月に現社名へ変更した。

成田へ就航するエア・カンボジア(写真はA320、同社Facebookから)
同社の東京支店長に今年就任したケビン・リー氏(50)は、中国国際航空(エアチャイナ、CCA/CA)グループの深セン航空(CSZ/ZH)の大阪支店総経理などを歴任。リー支社長によると、エア・カンボジアは、IATA(国際航空運送協会)が策定した国際的な航空安全監査プログラム「IOSA(IATA Operational Safety Audit:国際運航安全監査)」の取得や、日本語を話せる客室乗務員の採用などを進めてきたという。
プノンペン-成田線は週3往復で、水曜と金曜、日曜に運航。機材はエアバスA320型機(2クラス170席:ビジネス8席、エコノミー162席)を投入する。福州からは以遠権を行使すると共に、A320の航続距離では直行便を運航できないため経由便としている。エア・カンボジアは航続距離が長いボーイング737 MAXの導入を計画しており、リー支社長は「2029年に737 MAXを導入予定で、直行便が可能になる」と説明し、市場動向も見て直行便化も検討する考えを示した。
プノンペン新空港へ
成田-プノンペン路線は、全日本空輸(ANA/NH)が日本とカンボジアを結ぶ初の定期直行便として、2016年9月1日に開設したが現在は運休中。このため、エア・カンボジアの成田線は現時点で唯一の両国間を結ぶ定期便となる。当初は今年4月に関西線を初の日本路線として開設予定だったが成田へ先に就航することになり、関西線は2026年3月に開設する見通しで、成田線と同じくプノンペンから福州経由で乗り入れる。

エア・カンボジアのA320(同社提供)
成田線の旅客構成について、リー支社長は「ビジネス、観光、VFRがそれぞれ約3分の1ずつになるだろう」と予測。日本とカンボジアは、投資・貿易・観光のいずれもカンボジア側から見た「上位5カ国」に位置し、政治・経済・人的交流のいずれでも重要性が高いという。「以前はANAが毎日運航しており参入余地がなかったが、今は状況が変わった。中国側の株主が入ったことで戦略転換が可能になった」と語った。成田、関西に続く就航地としては福岡を挙げた。
また、今年9月9日に開港したプノンペンの新空港「テチョ国際空港」は、市内から約30-40分の距離にあり、旧空港から全便が移転。ターミナル内には高さ9メートル、重さ9トンと、東南アジア最大の屋内仏像が幸運の象徴として設けられた。エア・カンボジアは、自社ラウンジを近くオープンする見通し。
リー支社長は、成田線の平均搭乗率は85%を目指すという。
運航スケジュール
K6 592 ブノンベン(09:40)→福州(14:00/14:50)→成田(19:00)運航日:水金日
K6 593 成田(20:00)→福州(23:30/翌日00:30)→ブノンベン(02:55)運航日:水金日
関連リンク
Air Cambodia
当初は関空から就航計画
・エア・カンボジア、関空-プノンペン4/30就航 福州経由で週4往復(25年4月15日)
ANAのプノンペン線
・ANA、成田-プノンペン就航 初のカンボジア直行便(16年9月1日)
・ANA、ベトナム航空に8.8%出資 コードシェアやマイル提携も(16年5月28日)
