エアライン, 企業 — 2024年5月7日 15:25 JST

JALと三菱重工、高精度の被雷予測 アスキーアートで新技術

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 日本航空(JAL/JL、9201)と三菱重工業(7011)は5月7日、航空機の被雷を高精度で予測できる被雷回避判断支援サービス「Lilac(ライラック)」の使用契約を4月2日に締結したと発表した。両社の共同研究で開発した技術を活用したもので、パイロットは操縦席から見える雷雲と機上レーダーを、地上から受信したプレーンテキストで表現する「アスキーアート」と重ね合わせ、経路を選定できるようになった。

JALが導入する被雷回避判断支援サービス「Lilac」のイメージ(三菱重工提供)

被雷回避判断支援サービス「Lilac」を導入したJAL=PHOTO: Tadayuki YOSHIKAWA/Aviation Wire

 LilacはAI(人工知能)を活用した被雷回避を判断する支援サービスで、4月から国内空港で運用を開始した。被雷予測リポートを地上運航従事者からパイロットへ情報を提供する。離着陸時はパイロットの操縦操作が煩雑で、インターネットを使用したWeb用の雷雲イメージの確認が困難なことから、情報はプレーンテキストの「アスキーアート」で提供。操縦室と地上との空地通信システム「ACARS(Aircraft Communication Addressing and Reporting System)」で送信する。両社によると、アスキーアートの導入により機上のインターネット環境に依存せず、パイロットが一目で把握できる被雷予測を提供できるようになったという。

 両社は2019年から、機体を雷から守る共同研究を開始し、安全・運航効率の向上を目指してきた。共同研究では、帯電した雲に機体が近づくことで雷が引き起こされ、被雷することが分かった。三菱重工は、気象庁が配信する観測データを基にAI予測モデルを独自開発。飛行中に被雷の可能性が高い位置を高精度に予測できるようになった。予測には、JAXA(宇宙航空研究開発機構)が研究を進める被雷危険性予測技術を活用した。

 航空機の被雷は、多くが離発着時に発生する。特に冬の日本海沿岸で発生する「冬季雷」は夏の雷よりも放電エネルギーが大きいものの、気象レーダーに映りにくく、雷雲の発生場所の特定が困難だという。また、航空機への被雷は国内で年間数百件単位で発生。複合材を使用するボーイング787型機やエアバスA350型機が被雷した場合は、修理過程が複雑なことから修復に時間がかかり、遅延などの経済的損失を含め、国内では年間数億円規模の損失が計上されるという。

JALが導入する被雷回避判断支援サービス「Lilac」の概要図(三菱重工提供)

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