エアライン, 官公庁, 解説・コラム — 2023年8月14日 08:55 JST

国交省、グラハン・保安検査の契約適正化提言 人手不足解消へ中間とりまとめ

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 国土交通省航空局(JCAB)は、人手不足が課題となっているグランドハンドリング(地上支援)や保安検査などの空港業務について、各空港関係者が持続的発展に向けて実施した取り組みを事例集としてまとめた。国交省の有識者会議「持続的な発展に向けた空港業務のあり方検討会」(座長:加藤一誠・慶應義塾大学教授)の中間とりまとめの一環で、時間軸や空港の規模なども意識し、契約の適正化なども含めた対策を講じるべきと提言している。

グラハンや保安検査など空港業務の持続的な発展が不可欠な航空業界=20年4月8日 PHOTO: Tadayuki YOSHIKAWA/Aviation Wire

 現状改善に向けた取り組みの視点として「働き方」「需要変動への対応」「多様な人材受入」「イノベーション」を挙げた。さらに、これら4点を踏まえた「空港ごとの対応」と「官民の関係者の連携」を合わせた6つの視点から、空港業務の持続的発展につなげるビジョンとして整理した。

 各空港での取り組み事例として、羽田空港では外国人の登用促進、関西空港ではGSE(航空機地上支援車両)に関する先進技術の導入といった事例が紹介された。

—記事の概要—
時間軸で取り組み分類
契約適正化も

時間軸で取り組み分類

 今後の具体的な取り組みを、今年秋ごろまでの「短期」、今年度末までの「中期」、2024年度以降の「長期」に時間軸で分類。短期では、地方空港を中心に直近の課題となっている、国際線再開の本格化に向けて、待遇改善などの取り組みを実施する。

 中期では、年度内にコロナ前の水準に近い体制を実現するため、各社や新たに設立される業界団体を中心に、人材確保や育成、業務効率化を進める。

 長期と位置づける2024年度以降は、コロナ前の需要に対応できる体制を整えるだけでなく、需要変動リスクへの対応として航空便が就航するメリットを享受する自治体などとのリスク分担の実現なども、業界の生産性向上や技術革新と並行して進めていく。

契約適正化も

 また、都市部と地方の空港では、航空需要の回復速度や生産年齢人口の減少幅などに違いがあることを考慮する必要があると指摘。共通する課題としては、賃上げを含む処遇改善に不可欠なグラハン会社などの受託料の引き上げ、人材確保でマイナスに働く受託契約の内容適正化、長期間働けるキャリアパスの整備、人件費圧縮競争を防止する観点での多重委託構造や雇用慣行・契約慣行の見直しなどに取り組むべきだとした。

 JCABによると、日本の国際線旅客数は2018年度に1億人を突破したものの、新型コロナウイルス感染症(COVID-19)の影響で2020年2月以降は激減。コロナ前の国際線旅客は、首都圏や関西圏、中部圏の「都市部」にある空港が全体の約8割、その他の「地方部」が約2割となっている。現在は回復傾向にあるものの、グラハンや保安検査の人手不足により、復便や増便などが難しい空港もある。

 グラハンや保安検査は、航空機を運航する上で不可欠な業務であるものの、厳しい労働環境などを背景に、コロナ前から人手不足が懸念されていた。検討会は今年2月に初会合が開かれ、事業者へのヒアリングなどを実施した上で議論を続けている。

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空港業務の持続的発展に向けたビジョン(国交省)

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