政府は5月23日、東京メトロの本田勝会長が退任し、副会長の川澄俊文・元東京都副知事が後任に就任する人事を閣議了解した。本田氏は国土交通省の元事務次官で、羽田空港の格納庫など施設運営を手掛ける民間企業、空港施設(8864)の役員人事に介入した疑いが持たれていた。

空港施設は羽田空港の格納庫や事務所の賃貸業などを営む=PHOTO: Tadayuki YOSHIKAWA/Aviation Wire
本田氏は1976年に東京大学法学部を卒業後、運輸省(当時)入省。航空局長や運輸担当の国土交通審議官などを経て、2014年7月に事務次官に就任した。空港施設を巡っては、2022年12月に同社の乘田俊明社長と稲田健也会長に対し、国交省OBの山口勝弘氏を副社長から社長に昇格させるよう、「国交省の意向」として要求したと受け取られる動きがあった。
本田氏から東京メトロに対し「自らの言動が会社やお客様に多大な迷惑をかけたことを深く反省している」と、任期満了に伴い退任したいと申し出があった。
空港施設が設置した外部の有識者による独立検証委員会は4月28日、本田氏の行動は国家公務員法が定める「再就職に関する規制」(天下り規制)の趣旨に反する行為で、企業価値が毀損(きそん)されたと指摘した。
空港施設は格納庫や事務所、ホテルなどの不動産賃貸業と、空港内の熱供給事業、給排水運営を手掛ける。大株主の持株比率は、2022年3月末時点で日本航空(JAL/JL、9201)と全日本空輸(ANA/NH)を傘下に持つANAホールディングス(ANAHD、9202)の大手2社が21.06%ずつ、日本政策投資銀行(DBJ)が13.85%、日本マスタートラスト信託銀行が信託口で5.10%などとなっており、国は大株主として名を連ねていないが、格納庫やオフィスビルなど国有地の使用許可を国交省航空局(JCAB)から取得しており、毎年更新する契約になっている。
羽田の新整備場地区で営業している飛行機が見えるレストラン「ブルーコーナー UC店」は、同社の100%子会社が運営している。
東京メトロの株主は政府と東京都で、出資比率は政府が53.4%と過半数を占め、都は46.4%となっている。正式名は東京地下鉄で、第二次世界大戦前の1941(昭和16)年に設立された帝都高速度交通営団(営団地下鉄)が2004年4月1日に民営化されて発足した。本田氏は2019年6月27日の株主総会を経て、代表権のある会長に就任した。今回の退任も、6月の総会で正式に決定する。
人事介入問題
・空港施設「国交省現職の意向に恐怖」人事介入問題、独立検証委が報告(23年5月1日)
・空港施設、取締役選任の検証委員会 国交省OBの人事介入問題(23年4月11日)
・空港施設、山口副社長が辞任 21年に就任要求(23年4月4日)
・空港施設社長「時代は変わってきている」国交省本田元次官の人事介入問題(23年3月31日)
空港施設
・飛行機が見えるレストラン25周年 新整備場「ブルーコーナー」がリニューアル(23年4月8日)
・空港施設、生鮮センター24年度本格稼働へ 貨物コンテナやGSE共用も研究(23年3月24日)
・空港施設、22年3月期最終黒字8億円 今期純利益は10億円見込む(22年5月27日)
・空港施設、新社長に乘田副社長 稲田副社長は専任会長(21年6月2日)