エアライン, 解説・コラム — 2021年5月31日 15:47 JST

エア・ドゥとソラシド、持ち株会社設立で22年10月経営統合 独立性は維持

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 日本政策投資銀行(DBJ)が筆頭株主のエア・ドゥ(ADO/HD)とソラシドエア(SNJ/6J)は5月31日、共同持ち株会社を2022年10月をめどに設立すると正式発表した。新型コロナウイルス感染症(COVID-19)の影響で旅客需要が大幅に減少し、コロナ後も収益水準の改善には時間がかかることから、持ち株会社化による経営統合により、経営効率の向上やコスト削減などにつなげる。エア・ドゥとソラシドは事業会社として持ち株会社の傘下に収まるが、経営の独立性は維持する。

持ち株会社設立で経営統合するエア・ドゥとソラシドエア=21年5月31日 PHOTO: Tadayuki YOSHIKAWA/Aviation Wire

—記事の概要—
羽田枠は影響せず独立性維持
幹線は1路線ずつ

羽田枠は影響せず独立性維持

 エア・ドゥとソラシドは、1990年代の規制緩和により誕生した「新規航空会社」と呼ばれる中堅航空会社。1996年11月設立のエア・ドゥは北海道札幌市、1997年7月設立のソラシドは宮崎県宮崎市に本社を置くが、いずれもパイロットや客室乗務員など運航に携わる社員は羽田空港を拠点にしている。持ち株会社化により、間接部門のスリム化や燃料など資材調達の共通化を進め、コスト削減を進める。両社の株主が持ち株会社の株主となり、持ち株会社の社名や所在地、資本金、役員などは今後詰める。

札幌市内で会見するエア・ドゥの草野社長=21年5月31日 PHOTO: Tadayuki YOSHIKAWA/Aviation Wire

 31日に持ち株会社設立の基本合意書を締結し、6月から準備開始。7月1日から特設サイトで共同キャンペーンを展開していく。2022年6月に開かれる各社の株主総会で株式移転を承認後、10月を目途に持ち株会社を設立する。

 両社の筆頭株主であるDBJは、エア・ドゥに32.49%、ソラシドに19.24%出資。第2位の株主はエア・ドゥが全日本空輸(ANA/NH)を傘下に持つANAホールディングス(ANAHD、9202)で13.61%、ソラシドは宮崎交通とANAHDが17.03%ずつ出資している。社長はエア・ドゥの草野晋氏、ソラシドの髙橋宏輔氏ともにDBJ出身で、両社ともANAとコードシェアを実施している。

 札幌市内で会見したエア・ドゥの草野社長によると、昨年夏ごろから経営統合の議論が始まったという。両社はコロナ前の2019年から業務提携しており、持ち株会社化により独立性を維持しながら経営基盤を強化し、両社合わせて30-50億円のコスト削減効果を目指す。経営統合による人員削減は考えていない。サービス面について、草野社長は「両社のネットワークを生かした旅行商品の開発や、マイルを共通化したい」と述べた。

 宮崎空港で会見した髙橋社長は、「業務提携をより一層深めたもので、経営基盤の強化するもの」と、持ち株会社化を説明した。

 草野社長によると、機材の一体運用は考えておらず、各社ごとに機材計画を進める。また、羽田空港の発着枠は航空会社が合併すると一定の条件を満たす際に一部が回収されるが、今回の経営統合では条件に該当しないとして、現在の発着枠を維持できる見通し。

 また、エア・ドゥとソラシドは31日に、議決権のない優先株による第三者割当を7月に実施後、資本金を1億円に減資すると発表した。経営統合を前に、新型コロナの影響で痛手を受けた財務基盤を早期に強化する。(関連記事

幹線は1路線ずつ

 ソラシドは今年3月28日に、悲願の羽田-那覇線を開設。同社初の幹線で、2016年8月に臨時便の運航を始める前から定期便化を目指して準備を進めてきた。今回は羽田-宮崎線と鹿児島線を減便することで発着枠を捻出し、開設にこぎ着けた。持ち株会社化されると、エア・ドゥの羽田-札幌線と合わせて幹線が2路線に拡大し、収益基盤が強化される。また、中部空港(セントレア)と神戸空港で両社便の乗り継ぎを改善することも可能だ。これにより、北海道から九州・沖縄までのネットワークを1社で持つことができる。

宮崎空港で会見するソラシドエアの髙橋社長=21年5月31日 PHOTO: Yusuke KOHASE/Aviation Wire

 現在の路線数は、エア・ドゥが10路線でソラシドは14路線。機材はエア・ドゥが12機で、中型機のボーイング767-300/-300ER型機(1クラス288席)が2機ずつ計4機、小型機の737-700(1クラス144席)が8機。ソラシドは14機で、737-800(1クラス174席、ANAのリース機1機が1クラス176席)に統一している。

 エア・ドゥは羽田発着が札幌と旭川、女満別、釧路、帯広、函館の6路線、札幌発着が仙台と中部、神戸の3路線、函館-中部線。ソラシドは羽田発着が宮崎と熊本、長崎、大分、鹿児島、那覇の6路線、那覇発着が石垣と鹿児島、宮崎、福岡、神戸、中部の6路線、中部発着が宮崎と鹿児島の2路線となっている。

 31日に発表した両社の2021年3月期決算は、エア・ドゥの純損益が121億8000万円の赤字(20年3月期は4億2400万円の黒字)、売上高は174億1300万円(61.8%減)、営業損益が129億9600万円の赤字(22億7500万円の黒字)、経常損益は131億9000万円の赤字(16億2900万円の黒字)だった。ソラシドは純損益が76億9400万円の赤字(20年3月期は9億9000万円の黒字)、売上高は202億5500万円(51.6%減)、営業損益が105億900万円の赤字(14億2500万円の黒字)、経常損益は96億4900万円の赤字(13億600万円の黒字)となった。

 2022年3月期の通期業績予想は、両社とも「合理的算定が困難」として発表を見送った。

関連リンク
日本政策投資銀行
エア・ドゥ
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